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オズの世界の歩き方  作者: 藍沢
【第一章】 ようこそ 大魔法使いの国へ
20/51

1章終了後SS ─1「七つのチョコレート」

 ──あの後。魔法が使えず、一歩も歩けない状態で地べたを這うオズを、俺は何とか抱え上げた。家の中へ運ぶまでの間に、何やら指をちょいちょいとやっていたオズは、地面に落ちたチョコレートを()()()()()()。ちゃっかりしてんなぁ……。

 ついでに綺麗に土を払うのも自分で出来たようで、玄関は特に汚れなかった。


 今日はもう、このまま家でのんびりしよう。

 オズを部屋に運ぶや否や、彼は吸い寄せられるようにぐったりとベッドへ寝転がった。


「じゃ、しばらく寝とけ。俺は飯を食う」

「ふぁい……」

 気の抜けた返事を聞いて、扉を閉める。

 台所に向かい、棚の中から包丁を一本取り出して……。


 用意できた今日の昼飯。剥いた桃。さっき拾った赤い包み紙のチョコレート一個。飲料水。

 ふぅ……まだ耐えられるか。

 果物の皮を片している時、先程オズが破り裂いたチョコレートの包装紙等もそのままになっていたのを思い出し、それも一纏めにする事にした。その最中、一枚の紙切れを見つける。先程落としたチョコレートの付録だ。

 

 俺がオズに献上したチョコレートには、一粒一粒に込められた意味がある。この紙切れにそれがびっしりと書かれていた。


 当たり前だが、それは名も知らないお菓子メーカーが、趣向を凝らして作り上げた単なるブランドだ。このオズの世界の、マジな魔法ではない。ファンタジー世界観をおまじないのように表現しているのだ。

 

 暇なので、少し読んでみよう。


***


『虹の夢の休息』


〜赤色のチョコレート〜 カカワトル

 只の甘いチョコレートとうって変わって、アナタの心を躍らせる辛味のスパイスがたっぷり。燃え上がる魂に身を窶すアナタが、いつか静かな安らぎの尊さと出会えますように。


〜橙色のチョコレート〜 センセーションピール

 橙の五味の強さは、アナタの好みに合わせて変化する。つまり、この七つの中で最も美味なのだ。様々な違いを知り尽くす事で、アナタの心は寛容に幾千の変化を遂げるだろう。


〜黄色のチョコレート〜 レモンドロップ

 アナタはとびきりの甘さで煌びやかな夢に浮かされる。其処には何にも変えられない幸せが、幾つも転がっていて全てアナタのものとなる。まだ見ぬ誰かに、この喜びを分かち合える日が来るでしょう。


〜緑色のチョコレート〜 アップルミント

 弾ける林檎の酸味と、透き通る清涼感のあるミントが豊かに調和する。今はアナタだけがこの甘美を享受して。爽やかな香りがアナタの心を満たす。そうすれば心が互いに溶け合う事ができる。


〜青色のチョコレート〜 ハイ・スイート

 アナタはひたすらに極上の甘さを求める。ただ甘ければ良い。色も形も風味も意味さえも関係ない。この世の甘美を支配する。──危ない。これが一粒限りで無ければ、アナタは永遠にワタシの虜だった。


〜紺色のチョコレート〜 ドーズビター

 目を閉じて、この一粒と共に、一度ずっと深い微睡みに落ちてみて。暗闇もただ怖いだけじゃ無い。アナタに安寧をもたらす事もできるから。目覚めた時アナタはきっと、目の前の蒼穹の元へ一歩踏みだせる。


〜紫色のチョコレート〜 ソルトクラージュ・メランジェ

 生者である意味はこの一粒に込められている。アナタはソルトの苦さと辛さに圧倒されるでしょう。でも最後には奥底に秘めた甘さと完全に蕩け合うの。


何処からともなくやってくる無限の愛が、いつかアナタを優しく包み込むでしょう。その時まで、少しばかりの休息を、この虹の夢と共に。


***


 ……つまり、それぞれを一言で表すと。


・赤 辛い

・橙 オレンジ味

・黄 レモン味

・緑 ミント味 りんご風味

・青 めちゃくちゃ甘い

・紺 ビター

・紫 塩チョコ


 ──という訳だ。


 俺はチョコレートがあまり好きではない。三個も食べれば胸焼けがしたり、最悪鼻血を出したという経験もある。

 この中で言うと紺色がまだマシだと思うが、手元にあるのは赤色だ。

 辛いチョコって……。ロシアンルーレットのハズレ枠にまんまと引いたようだ。

 しかし考えようだ。俺にとって、より甘さを感じない方が都合が良い分、むしろこれで良かったのかもしれない。

 

 俺はチョコの包み紙を剥がして、口に入れた。


 うん。

 うわ。

 確かに辛い。

 いや、痛い。痛い! 痛え‼︎

 

 即ペットボトルを掴み、水を一気に飲み干した。

 ……! しまった! 逆に辛さが際立ってきた!  辛い物を食べる時には、水を飲むのはタブーだいうのを今更思い出す。

 無理矢理桃を口いっぱいに頬張り咀嚼する。そしてロクに味わう事も無く、全てを胃に押し込んだ。


 ……前言撤回。チョコレートはもう食わない。胃の中で炎がメラメラと燃えている感覚がして、俺は後々腹痛に苦しむ事を覚悟した。

次回更新は 2/22(土)12:00 予定となります。

面白いと感じて頂けましたら、ブックマーク、高評価をよろしくお願い致します。とても励みになります!


***

X(旧Twitter) @ppp_123OZ

日常ツイ・進捗、更新報告等行っております。

***

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