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ロンド

作者: 尾張夏乃

「はい、それじゃ隣の席の人とペアになって、一回演奏したら上のパートと下のパートを入れ替えてまた演奏してー!」先生の呼びかけに応じて、縦笛を持ったまま左隣のR君のほうへ向き直る。「Wさんよろしく〜」「よろしくね、R君」かるく話す間もR君は縦笛をふらふらと揺らし、机の縁にぶつけたりしている。落ち着きのない人なんだろうか……そんな心象が一瞬よぎったものの、すぐに忘れて演奏に取り掛かった。


「はい注目ー、好きな人とペアになってパートを分けて演奏してみましょう。」音楽の見せるマーブル模様の風景を薄目で眺めていた視界が、先生の呼びかけによって黒板のほうへと引き戻される。「あ、WさんはNさんとペアになってもらいましょうか。」Nさんは……軽く周囲を見渡すと、縦笛を持って小さく手を振っている落ち着いた雰囲気の女の子がいた。「よろしくね、Nさん」「よろしくお願いします」挨拶やパート分けの相談もそこそこに演奏を始める。Nさんは物静かだけれど演奏はキビキビとしていて、一緒に吹いていて気持ちの良い人だった。


「では、アンサンブルしてみましょう。近くの人とペアになって。」そうやってペアを作らされると私は“余りもの”になりやすいのだから少しは気にしてほしい、そんなことを思いつつあたふたしていると、同じく申し訳なさそうに右往左往しているD君と目が合った。「よ、よろしく…」「よろしくね」余りものどうし気は合いそうだった。アンサンブルにはこの“気が合う”というのが大切なのかもしれない、なんだか一緒に吹いていて楽しいな、そんなことを感じていると「どうしたの?」とD君に尋ねられる。「ああ、合奏するのって楽しいなってちょっと思ってさ、そういえばNさ、ん、?と合奏したのもけっこう楽しかったのかなって今になって思えてきて…」「Nさん?Nさんって、N先輩のこと?っていうか大丈夫?さっきから涙がでてるけど……」「えっ?」あれ?うまく思い出せない。私はいろいろなことをすぐに忘れてしまう。

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