プロローグ
プロローグ
仕事に追われるというのはこういうことなんだろう。
少年は小さくため息をついた。
ここしばらく忙しい日々が続いている。
「人が多いところは嫌い」
少年はフードを被ったまま顔を上げ城を見る。
大陸一とも言われるウィニアの首都はとても栄えていて、人通りも多い。
希望のウィニア。この国はそう呼ばれている。それには色々と理由が存在する。
この世界には竜王と呼ばれる、神と等しい生物が存在している。
竜王は人族と距離を置いて暮らし、人族からしては人知を遥かに超えた存在が静かに暮らしているというだけでありがたい。
非干渉。これが竜王と人族の間だった。
しかし、十年前、この大陸で前代未聞のことが起こった。
それは、一体の竜王が唐突に国を襲い始めたのだ。
竜王の歩みは遅かった。だが、僅か五年間のうちに数多の国々を蹂躙していった。
五年前、一人の男がその竜王を殺すことに成功した。たった一人で。
大陸中の人はその男を英雄として崇め、竜殺しとして称えたのだ。
その竜殺しがいる国がここ、ウィニア。今現在騎士団長としてここにいるとのこと。
人族の希望。そこから、この国は希望のウィニアと呼ばれているらしい。
他にも由来が存在しているが、これが一般的にそう呼ばれる理由だそうだ。
「竜殺し……」
少年は呟いた。無感情にも感じられるその呟き。
しかし、双黒の眼差しは嫌悪感を顕にしている。下唇を軽く噛み、少年は目の前にそびえ立つ城を目指そうとする。