scene2-2 部室
俺たちが校門をくぐる頃にはすでに多くの人でにぎわっていた。
加奈琉に教えてもらった駐輪場に自転車を停め、ダンボール箱を下ろす。
「ねぇこれどこ持ってくの?」
「うん、部室があるからそこに」
ダンボール箱を重ねて持ち上げる。
「行こ、場所教えて」
「ぇ!?いいよ、自分で運ぶし」
加奈琉は慌てて近づいてきて代わりにダンボール箱を持とうとする。
俺だって男だ、これくらいひとりでも持てるさ。
「大丈夫だよ、俺が・・・」
次の瞬間、抱えている箱の下で俺の手が加奈琉の手とふれ合った。
20センチほどしか離れない距離で加奈琉と目が合う。
どれくらいの時間だっただろうか。
とても長いようにも思えたし、ほんの一瞬だったかもしれない。
「ご、ごめんね!」
加奈琉が急いで飛びのいたのをきっかけに俺は我にかえった。
「いや、別に・・・それより早く運んじゃおう」
「う、うん」
うつむいたままそう答えた加奈琉は部室に着くまでほとんど話さなかった。
右だったり左だったりの最小限の道案内だけで、ずっと下を向きながら隣を歩いていた。
もしかしたら怒らせてしまったのだろうか。
自分が思っているよりも長い間加奈琉の瞳を凝視してしまっていたのかもしれない。
部室だというところにつくと加奈琉はバッグから鍵をとりだしてドアを開けた。
いくつも同じようなドアの部屋が連なっている、部室棟みたいなものかな?
部屋の中を見れば何の部なのか見当がつくと思っていたのだが、普通の休憩室のような感じで何の雰囲気もない。
言われるがままに部屋の隅に箱を置いて部室をあとにする。
「ありがとね♪」
いつの間にか機嫌を取り戻していた加奈琉にねぎらいの言葉をいただいた。
その笑顔と声を聞けるならいくらだって苦労を買う所存であります!
そんなことを思ったり思わなかったり。
「ところで、あそこって何部なの?」
自分のクラスを知るためにまずは掲示板を確認しに行かなければならない。
学校の敷地内に詳しい加奈琉について歩きながら尋ねる。
「えっとね、ミステリー研究部・・・かな」
ミステリ研とな、いかにも加奈琉らしいというか。
「といっても、部室でのんびりお話したりするのが主な活動内容かな」
えへへっとちょっぴり舌をだしておどけた加奈琉が人だかりを指差す。
「あそこだよ」
掲示板の前には俺たちと同じ新入生と思われる生徒たちが必死に自分の名前とクラスを探していた。
加奈琉と同じクラスになれるかな・・・。
実家から遠いこともあってうちの中学からここ天ノ宮高校へと進学してきたのは俺一人なのだ。
なれたらいいな。
なんて思ってる自分、恥ずかし過ぎてとても口にはだせない。
「コウちゃんと一緒のクラスだったらいいなぁ」
なのにこういう恥ずかしいことをさらっと言っちゃうのは反則だと思う。