scene6-12 意外とあっさり
「ごめんなさい、待たせちゃって」
「ううん、それより大丈夫?俺のせいだよね」
「違うの!別にそんな・・・」
今日も相変わらず教室は騒がしい。
クラスのアイドル(俺認定)七瀬さんが登校してくるのを待ちながらじゅんごと話をしていると、クラスメイトの男子が近づいてきた。
「田之上、用があるって先輩が来てるよ」
そう言って彼はドアの方を指差した。
そこには演劇部の部長である野宮先輩が立っていた。
「どうしたんですか?」
「あったのよ」
「何がです?」
「これよ!」
ジャジャーン♪と言わんばかりに背中に隠していたものをじゅんごに見せた。
「なくしてた脚本!え、どうして・・・」
「わからないんだけど、今朝部室に行ったらテーブルの上に置いてあったの、ところで残りの脚本は?」
「えっと、部室のロッカーに」
「それじゃ、合わせて昼休みにでも人数分コピーしておいて、よくわからないけど見つかってよかったわ」
見つかった脚本をじゅんごに手渡すと、肩をポンとたたいて去っていった。
渡された紙の束を持ってじゅんごが戻ってくる。
「それって」
「あぁ、脚本が見つかった」
えーっ!?そんなあっさりと!てか、どうしてこいつはこんなに落ち着いているんだ。
「それで全部そろったの?」
そう聞くとじゅんごは慌てて枚数を数えた。
「なくなっていた分これで全部だ」
なんだ、それなら良かったじゃないか、でもどうして急に出てきたんだろ?
「・・・どこか書き換えられてたり」
ぺらぺらとめくりながら確認していく。
「大丈夫・・・みたいだ」
それならなんなんだ、どうして一度持ち出してから今になって返す必要がある?
それとも親切な誰かが拾って届けてくれたのかな?
「ちょっと見せてもらっていい?」
じゅんごから脚本を受け取り眺めてみる。
ん!?
「どうした?」
「おはよー小鳥くん、と田之上くん♪」
そこへ七瀬さんが少し遅めの登校をしてきた。
彼女が来ただけで教室の雰囲気が一段と明るくなる。
俺の心にも穏やかなお花畑が広がり、今考えていたことなどあっという間に消し飛んでしまっていた。