scene6-10 帰宅部の活動
キーンコーン・・・♪
本日の授業終了を告げるチャイムがなる。
と同時に後ろから断末魔が聞こえてきた。
「だぁーっ!!」
そして頭を思い切り机にうちつけたような鈍い音が響いた。
「どうした、うるさいぞ」
さて、さっさと教科書をしまって帰る準備帰る準備っと。
「・・・だめだ、終わらなかった」
「田之上くん」
その聞き覚えのある声に振り向くと、授業が終わったばかりだというのに隣のクラスにいるはずの加奈琉がそこに立っていた。
「田之上くん、元気出して!公演は今回だけじゃないんでしょ?次回までじっくり練り直してもっといいもの作ればいいじゃない!」
そう言って加奈琉はじゅんごの両肩を後ろからポンとたたく。
じゅんご、加奈琉になぐさめてもらえるなんて羨ましいことだぞ!
見てみろ、このクラス中の男子(天ノ宮中出身)の羨望の眼差しを。
いつまでも加奈琉になぐさめてもらいっぱなしじゃ後が怖いぞ?
羨望の眼差しが妬みの眼差しに変わるのなんて時間の問題・・・
「そうだよな、チャンスは今回だけじゃないからな」
じゅんごはのっそりと上半身を起こした。
「立ち直り早いな」
これも美少女補正だろうか?
「そうだよ、その意気だよ!さぁ部活へ行こう!」
そして、加奈琉がもう一度両肩をバンと叩くと、じゅんごは立ち上がった。
「よし、練習が始まれば今度は俺も役者だからな、いつまでも落ち込んではいられん」
加奈琉が何度も頷く。
「それでさ、田之上くん」
「なんだ?」
そう言ってじゅんごは加奈琉の方を振り返る。
「今日から次回公演の練習なんだよね、見学しに行ってもいい?」
手を合わせながら上目遣いでお願いする美少女。
こんなの断れるやつがいたら尊敬する。
「それは全然かまわないぞ、部長も喜ぶと思うしな」
「やったぁ」
よかったな加奈琉。
「コウちゃん!なんでこっそり帰ろうとしてるの」
「へ?」
授業オワッタラ大人シク帰宅スル、コレ帰宅部ノ鉄則ネ。
そして俺は今演劇部の部室の前まできている。
あれ、なんか最近帰宅部の活動が何者かの手によって阻害されてる気がするぞ?
コンコン。
「どうぞー」
「失礼します」
ドアを開けてじゅんごは部屋の中へと消えていった。
部室には残りの部員全員がすでにそろっていた。
皆、じゅんごの顔をみると一瞬不安そうな顔になる。
脚本をなくしてショックを受けているであろうじゅんごのことが心配なのだ。
その間、俺と加奈琉は部室の外で壁にもたれて並んで立っていた。
「あいつちょっと無理してたね」
「やっぱり」
「でも、ありがとう加奈琉」