scene6-7 恐るべき情報網
「1日だけ時間もらってもいい?」
「わかった、また明日ここで待ってるから」
「うん」
「・・・そ、それじゃ」
本日もまた清々しい自転車通学をしてきた俺。
自分のクラスである1-Dの教室のドアを開ける。
教室のドアが手動なのは周知の事実、同じ過ちは繰り返さない。
「新聞部です!」
「うひぇっ!?」
教室のドアを開けた瞬間、待ち伏せしていたように人が飛び出してきた。
マジでこういうのやめてください、変な声とか出るんで、汗。
「新聞部です!」
そう言うクラスメイトはメモ帳とペンを持って詰め寄ってくる。
「いや、浅倉さんが新聞部なのは知ってるけど」
浅倉千鶴、同じクラスの新聞部の女子だ。
まだあんまり話したことがないんだよなぁ。
とりあえず自分の席に着くと、浅倉さんはじゅんごの席からイスを引っ張ってきて座った。
「聞いたよ!演劇部の脚本が何者かによって盗まれたんだってね?」
は!?昨日の今日だぞ、どこからそんなこと聞いたんだよ。
「何で知ってるの?ってか盗まれたと決まったわけじゃないから」
「私の情報網をなめないでよね、小鳥くんの秘密だって知ってるんだから」
浅倉さんはニヤリと笑った。
「・・・オレノヒミツッテナニヨ?」
ほら、言ってごらん?
周りをきょろきょろと見回してから耳打ちをした。
「小鳥くんさぁー、C組の月城さんと同じ家に住んでるよね」
ギクッ。
「どうしてそれを・・・」
「私の情報網をなめないでって言ったじゃない、まぁそれはいいとして」
いや、全然よくないんですけど。
「この事件について何か知ってることないの?」
あんたが俺と加奈琉が同じところに住んでいるのを知ってることのほうが事件だよ。
「ないよ、情報通の浅倉さんでさえ知らないことを俺が知ってるわけないかと」
「本当に?何か隠してたらさっきのことクラスのみんなにばらすよ、特に男子に」
たいして話したこともないクラスメイトに弱みを握られてるやつがあるかよ!
「べ、別にそんなのばれても全然問題ないんだからっ」
「ふーん」
立場は対当じゃないと良い友好関係は築けないからね、うん。
すると浅倉さんは立ち上がりスーッと息を吸い込んだ、これから大声でも出すかのよう・・・な!?
「小鳥くんってー!!実はー!!Cぐぅっ・・・」
俺は慌てて浅倉さんの口を後ろから押さえる。
何してるのかなこの子は!?まったくもう、まったく!
俺が加奈琉と一緒に住んでるのは禁句でしょ!
そんなことここで言ったら俺どうなんのよ!無事に生きて帰れるのかな?かな?
「そ、そーゆーのはやめようよ!小学生じゃないんだから!」
「ん・・・・・んー」
「ぁ、ごめん」
あまりに突拍子もないことをするもんだから慌てて浅倉さんの口を押さえていた手を離す。
「もぅ・・・小鳥ってば、だ い た ん?」
教室中の生徒が俺たちに注目していた、七瀬さんも・・・。
「ハートマークつけるのやめぃ」
俺はさっさと座って窓の外へと顔をそらした。
今日もいい天気だ。