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scene3-2 てっきりカフェかと思ったよ

予想していなかった店内の風景にあっけにとられていると、


「小鳥くん、こっちこっち」


と、奥のほうから七瀬さんに呼ばれた。



店の奥にあった扉を抜けるとそこにはまるで・・・じゃなかった、まさに自転車屋といったように何十台もの自転車がずらりと並べられていた。


「びっくりしちゃったよ、自転車屋っていうよりカフェみたいでさ」


率直な感想を述べる。


「ふふっ、そうだよね、次郎さん副業だっていって趣味でカフェみたいなことやってるから」


むしろそちらが本業なのでは?


と思うほど全面に展開されていたけど。


「小鳥くん、どんな自転車がいいのかな?」


「いや、まぁ普通のでいいんだ、変な機能の付いてない普通ので。安いとなお良いけど」


「タイヤは大きいほうがいいよね、だったら・・・」


自転車を見定めながら歩く七瀬さんのあとをついていく。


「これなんて良いと思うけどどうかな?」


立ち止まり指さした自転車を見る。


ふむふむ。


ぱっと見た限りではダメな理由も見つからないし、正直どれでも良いというのが本音だったり。


それが七瀬さんの選んでくれたものとなれば、それはもうケチのつけようなんてない。


「いいんじゃないかな」


と口にしつつ値札を見て、諭吉でお釣りがくるという良心的な数字の並びに胸をなでおろした。


「色は何色がいい?」


あー、


「そうだな・・・七瀬さん選んでよ」


「え、いいの?」


七瀬さんの好きな色の傾向を知りたいの5割、色なんて何色だってかまわないの5割。


「じゃ、じゃぁ・・・私はこのピンクのが可愛くて好きなんだけど・・・」


メモメモ。


ピンクかぁ、女の子らしくてなにより。


「小鳥くんにはね、こっちの水色のが似合いそうだからこっちで」


「うん、じゃぁこれに決めた」



そこへベストなタイミングで自転車屋兼カフェの店長がやってきた。


「おぅ、決まったかい?」


背でかっ!もう一度、背でかっ!


『高い』というよりどうしても『でかい』と言ったほうがしっくりくる。


この威圧感に慣れるには時間がかかるだろうなぁ。


「これなんですけど」


と、七瀬さんが言うと値札を外して軽々と片手で持ち上げてしまった。


これだよ、これでこそ次郎さんだ。


重そうなものを担いでいる姿がこれほど似合う人を俺は他に知らない。



なんちゃってカフェのほうへ自転車を持っていくとカウンターの前で自転車を下ろした。


カウンターの奥にはコーヒー豆や茶葉やら、それはもうカフェとかバーとかそういう雰囲気を存分にかもし出す食材や備品が揃えられていた。


「じゃぁお代なんだが・・・」


カウンターの下から電卓をとりだす。


「税込みの8900円」


俺は財布からおもむろに1万円札を取り出す。


「のところを、『ひかりちゃんのお友達割引』で2割引」


「いいんですか?」


「ああ、しかも今回は特別に『入学祝い割引』も含めて3割引」


なんて気前が良いんだ次郎さん!


七瀬さんとは今日知り合ったばっかりだぞぃ!


「さすが次郎さん!」


と、七瀬さんもおだてる。



負けに負けてくれたお代を払うと、自転車を外まで運び出し空気を入れ不備がないか点検をしてくれた。


「また、なにか修理が必要なときはおいで、友達割引でやってやるから」


「ありがとうございます」


なんとも気さくな人だ。


「あと、暇なときにはコーヒーも飲みにきてくれよ、そっちも割り引くからさ」


「はい、また今度寄らせてもらいますね」


「次郎さんありがとね♪」


七瀬さんもそう言って微笑む。


「そうだ、君ちょっと」


ん?なんだろう・・・。


ちょいちょいと手招きして俺を呼び寄せる次郎さん。


「『ひかりちゃんの彼氏割引』ってのもあるからな」


そう耳打ちすると笑いながら背中をバシバシ叩かれた。


なんか勘違いされてるような・・・。


まぁ別にいいけどね、別に。


その時の俺の表情は目と口がすべて横線になっていただろう。


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