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彼方より雫を求めて  作者: 春星
最終章 掴んだ「希望」と手放した「絶望」
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第44話 代償の涙と「夫婦」

それからシイナとヒスイは以前3人で暮らしていた屋敷で暮らしていた

その屋敷は2人では屋敷の部屋を持て余す程に大きく、元々2人で住んでいたというのが信じられない程だ

そんなある夜、シイナは散歩に出ていた......


シイナ「.........やはり夜は涼しいな

周囲の葉が風で擦れ合う音、夜に煌々と輝く蛍、

そしてなにより.....この澄んでいる空

暗けれど、空は漆黒の黒に覆われていて、不気味な赤黒い空とはかけ離れたこの澄んだ色.....

.....平和とはいいものだな

勿論、これからもいくつか争いが起きるだろう

だが......最後にはお互いを分かち合い、また平和が続く世になる......と

俺はそう信じてる」

ヒスイ「じゃあ、私に黙って散歩してるのもその平和の証ってこと?」

シイナ「......ヒスイ

別にそう言う訳じゃない

ただ、少し夜風に当たってみたかった

.....それだけだ」

ヒスイ「じゃあなんでわざわざこの森に来たの?

.....私が眠っていた......いや、死んでいた場所に」

シイナ「........そういう気分だったからだ」

ヒスイ「気分......ねぇ.....」

シイナ「.......」

ヒスイ「.......」

二人の間に静寂が漂う

ヒスイ「ねぇ.....」

シイナ「...なんだ?」

ヒスイ「1つ聞きたかったんだけど、どうして貴方はそんなに私に執着してるの...?」

シイナ「執着......

そんな風には考えてなかったな

ただ、自分の中で罪悪感を晴らしたかった」

ヒスイ「そう......」

シイナ「......」

ヒスイ「......」

また2人の間に静寂が漂う

シイナ「.........そろそろ散歩に飽きたから戻ろうかな」

ヒスイ「じゃあ私も」

シイナ「...お前はまだまだ散歩し足りないだろ?

もう少し散歩しててもいいんだぞ?」

ヒスイ「そもそも私貴方を追いかけに来ただけだから、別に散歩したかったわけじゃないよ」

シイナ「そうかよ.....」

ヒスイ「それに......」

シイナ「.....?」

ヒスイ「貴方と離れていると、どこかに行っちゃう気がして....」

シイナ「馬鹿か

だったらなぜわざわざお前を生き返らせたんだよ

結局俺が死ぬなら意味は.....」

ヒスイ「でも貴方はさっきこう言った「罪悪感を晴らしたかっただけだ」って」

シイナ「.....」

ヒスイ「それに、私が知ってる貴方は自己犠牲精神が強い

.....きっと、私か貴方だったら絶対貴方は自分を犠牲にする事を選ぶ

.....私の意思がどうであれ....ね」

シイナ「だとしても、わざわざお前の元から離れる意味が無い」

ヒスイ「そう、だからこれは杞憂に終わるかもしれない

でもこんな時間に、しかも黙って一人で出ていくなんて......

......夜逃げでもするのかと思っちゃうじゃん......」

シイナ「...まさか

さぁ、さっさと家に戻るぞ」

ヒスイ「......さっき、貴方はこの森に来たのは気分だって言ってたよね....」

シイナ「....それがどうした」

ヒスイ「自分でもわかってるんじゃない?寿命が近いって

ラディウスはあえて何も言わなかったけど.....

何百年も自分の時を止めてるのに、微塵も身体にガタが来てないのはいくらなんでもおかしい

それに、私と食事をする時、貴方は美味しいって言うけど、顔はそんな表情はしてない

私たち妖怪は確かに食事を必要としない

でも、味覚はある

だからこそ、私達は食事を摂っている それが一種の「娯楽」だから

でも貴方は表面上は笑ってもその笑顔には全く幸せな感情がない

この際だからはっきり言う

もうそろそろ死ぬからこそ、最期にこうして散歩をして、私から離れようとして、誰も知らない所でこっそり死のうとしてるんじゃないの....?」

シイナ「........どうせ俺が何を言ってもお前は嘘の一言しか言わないんだろうな」

ヒスイ「そりゃそうでしょ......」

シイナ「だったら、ついて来い」


そうして、二人は家に戻り、よく月明かりが見える中庭まで来た

シイナ「懐かしいな.....よくここで二人で修行して、共に腕を研鑽したんだっけな.....」

ヒスイ「中庭まで来たのはいいんだけど.....それで結局、何をするつもりなの?」

シイナ「.....話は簡単だ」

そう言いつつ桜剣ネフリティスをヒスイに投げ、シイナはいつも常用している絶対に欠けたりしない銀の刃がついた剣を抜いて構えた

ヒスイ「.....どういうつもり?」

シイナ「言葉で伝わらぬのなら、剣で意思を交わすのみ.......

親父さんの言葉だ」

ヒスイ「でも.....いきなり戦えなんて言われても.....そんなの困.....」

そう言いかけると同時にシイナはヒスイに接近し、ヒスイは咄嗟に剣を抜きシイナの剣を防いだ

シイナ「意思でぶつかりあう闘い....以前までの俺なら手加減してたが、俺はもう本気で闘うぞ

.....もし少しでも加減しようものなら.......誤って殺してしまうかもしれない

だからこそ、本気でやれよ....っ!」

そう言ってお互いがお互いの剣を弾いた

ヒスイ「.....っ!

どうしてわざわざこんな事を!?

殺し合う必要なんてどこにも.....!」

シイナ「......」

ヒスイ「....チッ!

(こちらも本気で行かなきゃやられる!

現に彼はあの炎と水の国の王女に会いに行った時に力を取り戻してる.....!

......でも私じゃ彼には勝てない.....

どうすれば....

....いや、私の神器ならやれる

例え実力差があろうと、この剣なら.....彼を越えられる!)」

シイナ「......」

そうしてシイナはヒスイに接近する

ヒスイ「....っ!!」

そうしてシイナの刃を防御し、お互いに切りつけては防御されての攻防戦が始まった

だがシイナの剣はいくら付随効果(エンチャント)で強化されてようが、攻防戦が始まった以上、神器に勝てるはずもなく、不意を突かれて大きく体勢を崩した

シイナ「しまっ....!」

ヒスイ「貰った....!」

そうヒスイは言い、身を乗り出して剣を()()を外して剣を突いた

.....つもりだったが、シイナが身を捻って剣の切っ先はシイナの心臓部分に向かっていった

ヒスイ「....っっっ!?」

ヒスイは一瞬驚いたが、直後に剣を地面へと向け、そのまま自分ごと倒れ込んだ

ヒスイ「ぐっ......」

シイナ「チッ....」

その後ヒスイが擦り傷を負いながら、ゆっくりと立ち上がって、

ヒスイ「どういうつもりなの....?

身を捻って自分から急所部分に剣の切っ先を誘導した.....

まさかさとは思うけど、貴方死ぬつもりだったの..........?」

シイナ「.......そのまま攻撃してれば良かったものを」

ヒスイ「どうして.....?

どうしてこんなことするのっ!?

貴方が示した行動は弁解でもなく、謝罪でもなく、ただ......

ただ....私に殺させようとしただけ

どうしてそんな......自殺するような真似をするの.....?」

シイナ「.......」

ヒスイ「なんとか言ってよ.....っ!!」

シイナ「.............」

ヒスイ「...っ.....!」

瞬間、ヒスイの目尻から涙が零れる

ヒスイ「昔、貴方から告白された時は一緒に足並みを揃えて歩むことが出来た.....っ!

こうして貴方が私を生き返らせてくれたのも、どこかに行ってしまいそうだった貴方と足並みを揃えることが出来たって思ってた.....っ!!!

でもどうして......っ

どうしてまた貴方は遠くに行ってしまうのっ.......!?」

ヒスイは持っていた剣を落とし、本来絶対に欠けることの無い神器の刃が、ピシッ....と、亀裂が入った

シイナ「.................もうこれ以上演技を続けても無駄......か」

ヒスイ「えっ........?」

シイナ「全部嘘だよ

ただ散歩したかっただけっていうのも、お前の作った手料理が美味しいと感じるのも、

...........お前とずっと平和に暮らせるっていうのも」

ヒスイ「.....だったら.....

だったらどうして私に正直に言わないの.....?

貴方に何か訳があろうと....!味覚がなかろうと......!!もう私とは過ごせない理由があろうと!!!

私に相談してくれたら、いくらでも解決策を考えてあげるよ.....!!

だからっ.....!」

シイナ「もう無理なんだよ!!!」

ヒスイ「っ.....」

シイナの大きな声は周囲に響いた

シイナ「段々と、身体が動かなくなっていってるんだよ.....

最初はゆっくりだった

でも、どんどん身体が動かなくなって言って......

もう俺は......

.....こうして喋る事しか.....」

その瞬間、ヒスイは先程から微動だにシイナが動いていないことに気がついた

ヒスイ「なんで.....どうしてそんなことに.......」

シイナ「......どうしてあの霊薬が「禁忌」と呼ばれてるか知ってるか」

ヒスイ「......死んだ人がまた生き返り、2度目の生を受けるのは天理に反するから.....?」

シイナ「.....大きな代償が伴うからだ」

ヒスイ「大きな代償.....?」

シイナ「....ああ、言ったと思うが、命脈の雫を手に入れた時、俺は2つの試練を受けた

一つは命脈王と対峙する試練....

だがもう一つは心を試す試練

偽物に惑わされることなく、大いなる力を持つ者のみこそ、命脈の力を手に入れられる

....だが、俺は偽物に惑わされ、あろうことかその試練を他人に任せた

これはつまり、俺は命脈の力を手に入れるに相応しくない心ということだ

俺の心は、大いなる命脈の力に耐えきれず、俺の身体を蝕む様になった

その結果、命脈の力は俺に代償を求めた

その代償が......」

ヒスイ「...身体が動かなくなる......」

シイナ「..........そうだ

初めは腕が鈍る程度だった

でもそこから徐々に動かなくなってゆき、足も動かしにくくなった

.....そして、呼吸も」

ヒスイ「待って.......

まさかだけど代償って.....」

シイナ「ああ......「徐々に身体が動かなくなり、最終的に全身の身体の器官が停止する」.....

そして、物言わぬ物体となり、やがて風化し、塵となって跡形も残さず消えゆく......

だから、そんな残酷な過程を見せたくなかったし、伝えたくなかった

もう.....お前の哀しむ顔を見たくなかったからな

でも、お前は俺を追いかけて、ここまで来てしまった

だからせめて何も知らずにお前の手で殺して欲しかった......

だがそれも失敗してしまった

....もう、こうなった以上せめてお前の手で終わらせてくれ.......」

ヒスイ「っ............

(私が彼を殺す?そんな事死んでもやりたくない

例えそれが介錯だとしても.......

でも彼は苦しんでいる

ならこの手で終わらした方が彼の為......

....だとしても.....

私は......)

私は.....貴方を殺したくなんてない

それは無謀で愚かだと思われるかもしれない......

でも私は、まだ助かる可能性を信じたい

だって、それが夫婦だから.....でしょ?」

そう言い、目尻から涙を零しながら笑みを浮かべた

それを見たシイナは

シイナ「........誰に似たんだがな.....ハハ....」

そう言って、シイナは寝室に運ばれた

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