第34話 師弟の決意
シイナ視点
時間停止では逃げられないし、「影舞」も結局はただの突進に過ぎん
この斬撃の檻から逃げるにはどうしたらいい...?
いや、方法があったな
出来れば使いたくなかったが.....場所をこんなに制限されては負けたも同然だ
負ければ元も子もない
シイナ「幻影投影 魔術師
レベルΩ 完全なる結界」
無理やり外に出れば体が引き裂かれて死ぬ......だがこの結界を纏った状態なら大丈夫なはず
命脈王「ほう......そなたは魔法も使えるのか
それもかなり高度のようだが」
シイナ「いい加減二人称を統一したらどうだ?」
命脈王「別にそれはどうだっていいだろう
我は様々な言葉を使い分けるからな」
シイナ「....そうか」
命脈王「さて......
貴様の体力は限界で、貴様の味方達もあてにならない。
この状況、どう切り抜ける?」
正直に言ってしまえば俺はこいつに勝てない気がする
こいつは正真正銘の化け物だ
俺の秘技を食らって軽傷で済んでやがる
だが.....みすみす見逃してもくれないと思う
何よりヒスイが気絶している今、逃げ切るのは難しい
かと言ってなにか策がある訳でもないし、このまま戦えば魔力がそこを尽きるのも時間の問題
どうする......
......やはり、俺も使うしかないか
通常視点
シイナ「神器 レーヴァテイン、ヴァフンケニング」
するとシイナの両手から先程の炎を纏った剣と水を纏った剣が現れた
シイナ「神技 水流乱舞」
その直後剣に纏っている水の勢いを増し、シイナがまるで彗星のように敵を翻弄しながら攻撃する
ヒナタ「....綺麗....」
命脈王「それが貴様の切り札か?
ならそのまま死にゆくが......」
シイナ「出てよ 炎の壁」
直後、剣に纏っている炎の勢いを増し、シイナが剣を振り抜くと炎の壁を作り出し命脈王の視界と身動きを妨害した
命脈王「チッ....小癪な炎が」
シイナ「桜花剣術「虚空」」
その後、腰に納めていた桜の剣を桜花剣術「刹那」よりも素早い速度で剣を振り抜いた
さすがに堪えたか命脈王はふらつき、シイナは追撃を叩き込もうとするが.....
シイナ「っがぁっ....!?」
シイナの口から大量に出血していた
命脈王「それだけの力を得るためには代償が必要....あのままそれらの剣で追撃できていれば貴様に大きく形勢が傾いたものを........」
シイナ視点
くっそ.....こんな大事な場面で「これ」が来るのかよ.....
いや....このふたつの剣の併用でこうなった、というのが正しいか
これ以上は流石に命が危ういが......使わなかったら結局振出に戻る
継続使用するしかないか.......
それに今はあいつらの命も背負ってる
死んでも奴を倒さなければ......
通常視点
ヒスイ「師匠!!」
いつの間に起きていたヒスイが戦況を見て叫ぶ
ヒスイ「撤退しましょう!今の貴方では勝てない!
死んだら元も子もないんですよ!?」
シイナ「チッ......
(起きていやがったか....
少し面倒なことになりそうだな.....)」
命脈王「もしそなたらが勝てないと判断したら撤退しても良い
ただし.....撤退するような臆病者は二度と我と相まみえないと思え」
シイナ「それを聞いて安心した
絶対に撤退なんかするか」
ヒスイ「.....私、師匠を止めてきます」
そう言いヒスイは立ち上がろうとするが.....
黒ヒスイ「やめておいた方がいい
今の君じゃ囮にすらならない」
ヒスイ「じゃあ師匠が死ぬ様子を黙って見ていろと!?」
黒ヒスイ「......死ぬか生きるかは彼自身の決断だ
それは戦いにおいて決死の行動をするか否かも同じだ
君は彼の決断を、意思を踏みにじる気かい?」
ヒスイ「........」
黒ヒスイ「大丈夫
私たちの知るシイナという男は誰にも負けない最強の剣士だ
きっと今回も勝ってくれるって......
私は....いや、私たちは信じている」
ヒスイ「師匠......」
命脈王「逃げないという行動は賞賛に値するが、同時に嘲笑もできる行動だ
とある見方では相手に臆さず立ち向かう勇敢な姿にも見えるし、無駄だと分かりきっているのに撤退を選ばない蛮勇な者とも見える
勇敢と蛮勇は紙一重だが......
果たして貴様はどちらなのだろうな?」
シイナ「....正直に言えば、俺の行動は少なくとも勇敢では無い
だが、蛮勇でもない
俺のこれは「意地」だ
絶対に負けられない理由がある
絶対に勝たねばならない理由がある
絶対に達成しなければならないものがある
そうして俺はここに立っている」
命脈王「意地だろうがなんだろうが弱者にこの雫は似合わない
我の強さを身を以て知るがいい」
シイナ「神器 レーヴァテイン、ヴァフンケニング
(そもそも2回も使って一度も命の危機に晒されていないことが奇跡だが........これで3度目だ
もう命の保証などどこにもない
だったら最後まで戦ってやるよ)
神技 炎熱乱舞」
今度は炎を纏った剣が燃え上がり、剣を振り回すと同時に大量の炎が現れ敵を圧倒していく
シイナ「レベルZ 豪風竜巻」
そこに風魔法を使い風は炎を纏う風となり敵の動ける範囲がほとんど無くなっていた
シイナ「必殺神器 爆炎一閃」
同時にとんでもない爆音と炎に敵が包まれた
ヒスイ「おわ.....った...?」
シイナ「っっ!」
寸前のところで時間停止を発動させ、大きく後方へと飛翔する
命脈王「今のでやったと思ったんだが......やはりその手品が分からぬなだがお前の表情を見るに能動的に起こすモノらしいな?」
シイナ「さぁな.....
(一瞬とてつもない殺気を感じて時間を停止させ距離を取ったが正解だったな....
あのままだと心臓を抉られて死んでいたぞ.....
それにしても奴の表情.....もしやまだ余裕があるのか?
嘘だろ?あれほどの攻撃を受けてまだ余裕を浮かべるほどダメージを受けていないのか?)」
命脈王「それにしても今のは効いたぞ.....
一面炎の海にしてから風の魔法でさらに動ける範囲を制限、そこにあの威力の技とは恐れ入ったよ
あれだけの大技を使えるとは、もしやまだまだ余裕があるな?」
シイナ「どうだかな......
(余裕なんてある訳ない
こっちはもう瀕死な上に魔力だってあまり多くは残されちゃいない
もうほぼ負けが確定したようなものだ
それにしてもなんだが足元が暖かいような......)」
ヒスイ「師匠!」
涙ぐんだような声でヒスイは叫ぶ
シイナ「はは......まぁ...そりゃそうだよな.....」
足元にはシイナを囲むように炎が渦巻いており、その炎は段々大きくなっていく
シイナ「いままで片鱗すら現さなかったのがおかしかったんだ
こんだけ使ったら...そりゃそうそうなるよな.....」
カズキ「暴れ馬とは聞いていたけどよ.......まさか...そんなわけ...ない...よな...?」
ヒナタ「ま....まさかそんな訳ないよね?だってあのシイナだよ?あのシイナが死ぬなんて...そんなこと.....」
カナデ「........」
黒ヒスイ「力を得るためには代償を受ける
今まで歯が立たなかったような相手に拮抗するどころか優勢になるほどの力を得ちゃったら.....
君が君じゃ無くなっちゃうからね.....」
ヒスイ「そんな....嘘でしょ......
っ!」
直後、ヒスイはシイナに向かって走った
ヒナタ「ヒスイ!」
そしてヒスイはシイナに抱きつく
シイナ「....離れろ
お前まで死ぬぞ」
ヒスイ「嫌です......あなたが死にゆく様を見ながら1人で生きるよりは一緒に死んだ方がマシです......」
シイナ「.....お前にひとつ聞こう
俺はお前を武人として育てたが、お前はその力はなんのためにある?」
ヒスイ「分かりませんよそんなの......」
シイナ「.....好きな人について行くためか?」
ヒスイ「っ!?」
シイナ「前から気づいてたさ....ただお前の気持ちには気づかないフリを自分に対してしていただけだ
自意識過剰がすぎる....ってな」
ヒスイ「気づいていてあんな言動の数々は酷くないですか?」
シイナの服に顔をうずめる
シイナ「ははは、すまんすまん
......結局、俺は誰一人救えずじまいか」
ヒスイ「それは違います
少なくとも、私や黒い方の私は救われています
あの3人だって、きっと何かしらで救われているはずです
だから...!」
シイナ「そういう自分を貶めるような思考はやめろ、ってか?
.......結局のところ、俺は偽善を行っているに違いないんだよ
お前を励まして弟子としたのも全て自己満足だし、黒い方のお前を救ったのも結局ただの自分の欲求を満たしたかっただけなんだよ
あの3人も結局は命脈の雫のために利用したに過ぎない
だから...」
ヒスイ「救ったことにはならない
ですか....」
シイナ「...ああ」
ヒスイ「確かに、結果論で言えばそうかもしれません
でも本人たちや部分的に見ればあなたは紛れもなく私たちを救ってくれた救世主....いわばヒーローなんですよ
だから.....胸を張っていいんですよ」
シイナ「でも俺は1番大事なやつのことを救ってやれなかった...!
何よりも大切なあいつのことを....」
ヒスイ「それでも...!!」
シイナ「っ....」
ヒスイ「あなたは生前彼女を幸せにすることが出来ていた
そうでしょ...?」
シイナ「....すまん
死の間際に自己嫌悪になっていた」
ヒスイ「いいんですよ...わかってくれれば」
シイナ「....さて
そろそろ時間だ
お前も離れないと巻き込まれるぞ」
ヒスイ「.....断ります」
シイナ「頼む
お前にはせめて生きておいて欲しいんだ.....」
ヒスイ「....師匠にしては珍しく懇願してきますね.....」
シイナ「お前はまだまだ生きることが出来る
まだまだ人生を楽しむことが出来るんだよ....
だから、戦いと修行ばっかりだったお前にはせめて「生きる」という楽しさをまだまだ味わって欲しいんだ
頼む.....」
ヒスイ「....いいえ、断ります」
シイナ「なっ....何故だ」
ヒスイ「....私はあの日、弟子となった日、貴方にこう誓いました
「生きる時も、死ぬ時も、貴方と分ちあいます」と」
シイナ「たしかに言ってたが.......
だが俺からしたら....」
ヒスイ「これは私の人生です
私の人生をどうするかは私が決めることです
それに、武人として、弟子として貴方と死ぬ場所を共にします」
シイナ「......本当にいいんだな」
ヒスイ「はい
....思い残すこともありませんし、大好きな人と死ねるなら本望です」
シイナ「そうか.....
....そうだ命脈王」
命脈王「なんだ?」
シイナ「俺が死んだらこいつらを入口に返してやってくれ
お前ならできるだろ?」
命脈王「.....人使いが荒いな......
だが承知した。
お前が死んだあとは責任を持ってこの我が送り届けよう」
シイナ「....ありがとう
これで....思い残すことなく死んでいけるな」
それから数秒も経たないうちに炎がシイナとヒスイを飲み込んだ
補足
虚空は0.00000000000000000001秒(10^20秒)




