神喰らう歌が貴方を殺すまで

第３章 人工歌姫

詠唱集 禁戒法遏編

『超広域殲滅法遏　デ・ペントレゴラ』

統《す》べての理《ことわり》を妨《さまた》げる根幹《こんがん》に問《と》う

天象《てんしょう》の静寂《せいじゃく》たる嘆《なげ》き

冥府《めいふ》に淀《よど》む憤怒《ふんど》の雫《しずく》

我《われ》を拒絶《きょぜつ》せし混濁《こんだく》の情状《じょうしょう》

開《ひら》け天啓《てんかい》の階段《きせき》

開《ひら》け獄門《ごくもん》の扉《ろうへき》

その輝《ひかり》で全《すべ》てを元《ぜろ》に帰《かえ》せ

デ・ペントレゴラ

──────────────────────────────

『空間消滅法遏　トルティマーニャ』

漂《ただよ》う不浄《ふじょう》の感情《かんじょう》

苦《くる》しみ

悲《かな》しみ

妬《ねた》み

恨《うら》み

その身《み》を滅《ほろ》ぼす遺憾《いかん》の叢雲《むらくも》

次空《じくう》の守神《まもりがみ》ヒルデモーム

異空《あくう》の守神《まもりがみ》シャバーン

世《よ》を繋《つな》ぐ神《かみ》よ

我《われ》の命《いのち》を共鳴《きょうめい》せし

戦《おのの》きに荒《あれ》れ狂《くる》う万物《ばんぶつ》の創空《そうくう》を閉《と》ざせ

トルティマーニャ

──────────────────────────────

『消失法遏　誘い歌』

くるりくるりと消《き》えていく

誘《いざな》い歌《うた》に消《き》えていく

くるりくるりと消《き》えていく

儚《はかな》き夢《ゆめ》に消《き》えていく

くるりくるりと消《き》えていく

記憶《きおく》の底《そこ》から消《き》えていく

オジギソウの花《はな》が咲《さ》き

アンモビウムに包《つつ》まれて

安堵《あんど》に転《ころ》ばせ消《き》えていけ

寸土《すんど》の果《は》てに消《き》えていけ

誘《いざな》い歌《うた》に消《き》えていけ

誘い歌

──────────────────────────────

『知滅法遏　虚無の言霊』

司《つかさど》りし言霊《ことだま》よ

授《さず》かりし痕跡《こんへき》は永年《えいねん》の力《ちから》

苦勉《くべん》に暮《く》れる歳月《さいげつ》の波《なみ》

楽勉《らっかん》に奪《うば》われる歳月《さいげつ》の大波《おおなみ》

先知《さきし》れず終《お》わらぬ回廊《かいろう》

終結《しゅうけつ》の光見《ひかりみ》えぬ絶望《ぜつぼう》の洞穴《ほらあな》

永年《えいねん》の力携《ちからたずさ》えし時《とき》

己《おのれ》の知《ち》を全知《ぜんち》に変《か》えん

されど言霊《ことだま》によりて苦行滅裂《くぎょうめつれつ》

永年《えいねん》の知《ち》を忘却《ぼうきゃく》に閉《と》ざす未墾《みこん》の蔑《さげす》み

無邪気《むじゃき》な道楽《どうらく》が天地《てんち》を変《か》える

虚無の言霊

──────────────────────────────