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神喰らう歌が貴方を殺すまで  作者: ゆーたろー
第2章 世界第七戦争
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第22話 戦慄の歌声

 突然介入してきたレイズに、カイトは驚きを隠せなかった。


(こいつはレオを連れ去った……何でここに? いや、いつの間にここにやって来た? 気配を全く感じなかった)


 エンドとの戦いで既にボロボロの所に現れたレイズ。

 奴が何故このタイミングで現れたのか分からないが、キルネの核となる人物が二人同時に目の前に立っている。

 まさに絶体絶命であった。


「エンド。貴方がこんなに無様な姿を晒していては、キルネももうお終いですね」


 エンドとカイトの間に立つと、レイズは呆れたようにエンドを指差した。


「レイズ、貴様には別の場所を任せたはずだ。何故ここに来た」


 レイズが首を傾げながら質問に答える。


「私は十分に楽しんで来ました。レオは奪い返されてしまいましたが、代わりにエレリオの命は消えましたよ」


 エレリオの死亡に、カイト達は驚愕した。


「そんな……エレリオさんが死んだ……?」


 口が開いたままカイトは固まってしまった。

 ロラン達と共に行動していたエレリオの死。

 自分の知る最高の実力者がいるチームですら死人がでる。

 心のどこかで、弐王がいれば大丈夫と甘い考えがあったのである。


「そんなことより……エンド、あなたは期待外れです。自らの力で王喰を身につけ、我が主も少し気にかけていましたが……結局は負け犬の遺志ですか」

「黙れ。貴様が始創の使いだということは初めから気づいていた。ただ闇雲に世界の混乱を楽しむ外道共が、でしゃばるならお前から殺すぞ」


 エンドが剣をレイズに向ける。


「いきるなエンド=リスタード。ランパードに敗れし戦神(せんじん)ハイネン=イグラニア=リスタードが残した遺志の子よ」


 レイズがエンドに向かい法遏を唱えた。

 光の鎖がエンドに巻きつくと、重厚な(おもり)となってその場に叩きつける。


「ぐぅ……」


 強靭な鎖はエンドの力でも振り払うことができず、身動きが取れなくなってしまった。


「さて、カイト=ランパード。自らの力で繋心を会得するとは、なかなか面白い。流石は闘神メル=ブレイン=ランパードが残した遺志の子だ」


 レイズの言葉の意味が分からず、カイト達は返す言葉が見つからなかった。


「お前は……さっきから何の話をしているんだ……」


 レイズはおもむろに両手を広げ、自分の頭上に球体を作り出す。

 その球体には二人の男が激闘する姿が映っていた。


「お前は自分のことを何も知らない。三千年前に起きた神々の争い、女神ステラの奪い合い。ここに映し出したのが闘神メルと戦神ハイネンです」


 映し出された二人の男は、どことなくカイトとエンドに姿が似ていた。


「戦いに破れたハイネンはこの時代に自らの遺志をこめた人間の子を作り出した。そして、戦いに勝利したメルもまた、自らの遺志をこめた人間の子をこの時代に作り出した」

「それが俺とエンド……」


 カイトは意外にもレイズの言葉をすぐに理解する。

 しかし、隣で聞いていたナナは納得ができずにいた。


「カイトが神に作られた子供? 私は小さい時からカイトと過ごしてきた!! そんなの嘘よ!」


 レイズがナナに目をむける。


「いい反応だ。確かに、カイト=ランパードは人間の子供。メルはランパード一族という形で自分の遺志を人に残し、人間となっていままで生きてきた。ハイネンも同じだ。神が本来の姿や力を発揮できるのは三千年の内、十年だけ。一度神に戻り十年の時が経つと、再び三千年の間その力は人間の中に遺志として滞在する。そして自らの力を発揮する器が必要になった時、他よりも強い遺志の持った子を作り出すのだ」


 ナナが震えながら小さな声で必死に反論する。


「嘘よ……カイトは普通の人間……それになんでこの時代に……」

「ここまで言って分からないか? 今この時代こそ、女神ステラが再臨しようとしているからに決まっていよう」


 レイズが不思議そうに首を傾げると、カイトは意味もなくぼそぼそと呟いた。


「女神……ステラ……」


 レイズが両手を下ろすと、同時に映像を作り出していた球体も消えてなくる。


「さて、そろそろ話もお終いです。私はこの第七戦争に大変満足しました、最後は私の手で終わらせましょう」


 満足そうに話を終えると、レイズは羽織っていたローブを脱ぎ捨て、仮面を外した。


「久しぶりに仮面を外しますね」


 仮面をつけていた時は霞んだ老人のような声であった。

 しかし仮面を外した途端、若々しい女性の声に変化する。

 仮面を取ったレイズの姿は意外にも美しい女性であった。

 金髪の髪を靡かせ、大きく深呼吸をする。


「ふぅ、仮面を外して吸い込む空気はとても清々しい……」


 カイトとナナはレイズの姿をどこかで見たことがあるような気がした。


「あれがレイズ……どこかで見たことが……」


 カイトが自分の記憶を辿っていると、一人ティナだけがレイズの姿を見て激しく動揺していた。


 明らかにパニック状態になっているティナが、必死に球体を叩き声を荒げている。

 しかし、エンドの創遏によって作られた球体により声は外に届くことはなかった。


「どうしたんですかティナさん! 落ち着いてください!!」


 カイトが声をかけるも、ティナは球体から出ようと必死に抗っていた。


「ふふ、ティナ=ファミリア。あなたの言いたいことはよく分かる。今から外に出してあげるから大人しくしていなさい」


 レイズが爆発的に創遏を高め、瞼を瞑る。

 その仕草に、今から何が起きるのかをナナは直感的に感じとっていた。


「まさか、歌を……」


 レイズが叫び声のような狂気に満ちた歌を歌い始めると、周囲がその歌声によって震える。


「ぐぅうぅぅ……」


 途轍もない圧力に、カイトとナナは吹き飛ばされそうになった。

 突然、レイズの体から眩い光が発生し、カイト達は思わず目を閉じる。

 何が起きているのか全く分からなかった。


 次第に光が弱まり、レイズが歌い終わる。


 カイトがゆっくりと目を開けると、周囲は一変していた。

 キルネ本部は跡形もなく消えており、ティナを閉じ込めていた球体も無くなり、辺りには人間しか残っていなかった。


「な……何が起きたんだよ……」


 カイトとナナは唖然としていた。


「これが私の力、破滅の歌ですよ」


 レイズが空に向かい手をかざし、何かを始めようとする。

 その時、球体から出ることができたティナが桃色の王創を纏い、レイズに剣を振りかざす。

 ティナの攻撃を軽く躱すと、二人は至近距離で向き合った。


「どうして……あなたは死んだはず。ヒースさん……」


 ティナの言葉にカイトとナナは驚愕する。

 レイズの姿は、ヒース=バルハルト。

 レオの死んだ母親であった。


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