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陰謀の影には美女がいる  作者: 篠貴 美輔(ささき みほ)
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第4話 三本の槍

株式会社ランディア社長室


鹿島『急に呼び出してすまない。集まってくれたようだな。』

1週間前に召集をかけた三名が社長室に集まった。


高中、滝沢、藤木の三名である。


高中は神奈川の支部にいる30代後半の営業マンだ。

持ち前の明るさと奔放な営業活動で神奈川支部の業績を伸ばし、支部の課長に就いていた。

幼いころはスポーツに励み、団体競技をやっていたこともあり人付き合いが得意。

その奔放なスタイルは部下から親しみやすいと専らの評判だ。

鹿島は高中の柔軟な考えと枠にはまらない仕事ぶりを認め、今回本社に呼び寄せることにした。


滝沢は今回招集された唯一の女性社員である。年齢は20代後半。

滝沢の武器は分析力である。物事を俯瞰して見回し、的確に判断する能力に長けている。

普段は九州の支部で業務に従事し、持ち前の発言力の高さから20代にして課長代理のポストに就いている。鹿島も俯瞰して物事を見ていくタイプだが、今回の件に関してはどうしても冷静になれず、滝沢のような存在が必要だったのだ。


最後に藤木。彼は30代前半の優秀な営業マンである。

持ち前の行動力を生かし、軽いフットワークで素早く仕事をこなす。

そのフットワークの軽さと仕事の速さに、顧客からの信頼も厚かった。

現在は中国支部の平社員であるが、九州支部に顔を出すことも多く、出世の日も近いと噂されている逸材だ。



鹿島『今回の契約をなんとしても成功させるため、君たちの力を貸してほしい。

滝沢、高中には次世代タイヤに関する原案の補強を、藤木には今回の件で空いた穴を埋めるため、本社で通常業務の手伝いをして欲しい。』



鹿島は3人に指示を出した後、栗林繊維へと向かった。










都内にある、昼間からアルコールを注文できるカフェに美女が二人。


夏木『社長が動いた。』


鹿島の秘書である夏木は、20代半ばの美人秘書である。

信頼も厚く、時折鹿島から相談や戦略についての意見も求められるほどだ。


夏木はこのカフェで、女性と話をしている。

夏木に負けず劣らず美しい女性だ。

二人は洒落たカフェでも一際目立ち、周囲の目を引いた。


狩野『わかった。内山さんに伝える。』


夏木『指示は三人へ。二人には原案の補強を、もう一人は通常業務の補填よ。』


狩野『原案の補強程度でうちの会社に太刀打ちできるとは思えないわね。』

狩野という女性は表情を変えず淡々と話す。

うちの会社という発言からランディアの人間ではないことがわかる。


夏木『3人の身元も洗いざらい調べておくわ。念の為にね。』


狩野『よろしくね。くれぐれも勘づかれないように。』

夏木は鹿島の動きを逐一この狩野という女性に伝えているのだ。


裏切者は、夏木。

ランディア包囲網が、できあがろうとしていた。







栗林繊維に激震が走っていた。

匿名の文書がシノシノラバーの次世代タイヤ構想の内容が栗林繊維に送られ、全社員に契約の全容が知れ渡ってしまったのである。


佐川『これで役員会議は免れませんよ…社長ォ…。』


社員たちは喜んでいた。二億の契約が目の前にある。活気に湧く社内。

対照的に栗林は肩を落とした。


栗林『常に先手を打たれる…ランディアの名前を後から出しても信憑性が得られない。しかし……』

栗林は常に後手に回る自分に怒りを覚え、拳を握り締めた。



栗林は、社員全員を集めて通達を発した。


栗林『皆、聞いてほしい。この度我々栗林繊維は、大きな契約を依頼された。

皆も知っている通り、大手タイヤメーカーであるシノシノラバーが、当社が開発した次世代ナノテクノロジーカーボンファイバーをタイヤに組み込みたいとのことだ。しかし、この提案は同時に同じくタイヤメーカーの株式会社ランディアからも同様の話が来ていた。この二つの提案は同時に当社に伝えられた。シノシノラバーからは副社長の佐川が二億で、ランディアからの話は二千万で私が受けた。この契約に関する内容は同時に発生したこともあり精査をし、慎重に決定する必要がある。』


栗林は不安な心情を押し殺しながら、社員たちに自分の声で通達を発した。


ランディアとシノシノラバー。

全く同じ提案。

契約金は二千万と二億。


これから栗林繊維が成そうとしている契約の全てが、全社員の知るところとなった。




こんなもの、二億を選ぶに決まっている。

役員会議の余地はない。

社内からは当然の声が上がった。


佐川『2億を選ぶのがビジネスマンとして最良の選択なのは当然ですが、どちらが先に発した提案かわからない以上、見極める必要がありますね。どうでしょう、二つの会社の代表を呼びプレゼンをしていただいては。』



栗林にとっては千載一遇のチャンスであった。圧倒的有利に立つ佐川がなぜこのような提案をしたのかはわからないが、このプレゼンバトルにかけるしか道はなかった。



栗林は早急にプレゼンを行う運びとなったことを鹿島に伝えるのだった。


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