ゆうきのたね
冬の童話祭2022応募作品
ほうきぼしのおっぽの裏側になります。
その町は一年中、さむいさむい冬の町でした。
ふたつきにいちどはほうきぼしがながれてくる。
ほうきぼしがながれてくると、ほうきぼしのおっぽから、たくさんのながれぼしがおちて、ながれぼしのかけらが雪のようにキラキラとまいおりる。
そんなふしぎな町でした。
ほうきぼしにはせいれいさまがやどっていました。
せいれいさまはいつもとおりがかる町を見ては好い人、悪い人、さまざまな人のおこないを見ては人間とはふしぎないきものだと思っていたのです。
そんなせいれいさまはあるとき冬の町の上をながれていて、ひとりの男の子に目をとめました。
男の子は雪をまあるく玉にしてからかさねて、石をつかって、目をつくり木のえだをさして、そのさきにてぶくろをはめていました。
「あー、あれは雪だるまというものだね」
せいれいさまは人間たちがつくる雪だるまをしっていました。男の子はひとりで雪だるまをつくるとはなしかけています。
「雪だるまさん、おともだちになりましょう」
にっこりわらう男の子を見て、せいれいさまがほっこりしていると、男の子とおなじくらいの子どもたちがあつまってきました。いっしょにあそぶのだろうかとおもっていると、子どもたちはくちぐちに男の子をバカにしはじめました。
「弱虫ポチャム、おともだちは雪だるま」
「おくびょうポチャム、雪だるまがおにあいさ」
ほうきぼしのせいれいさまはかなしい気持ちになってながれていきました。
ふたつきがたって、またせいれいさまは冬の町にながれてきます。冬の町ではポチャムとよばれた男の子がみんなにバカにされ、いじめられていましたが、ポチャムはいつもまっすぐで、明るく笑っておりました。
せいれいさまはそんなポチャムを見るたび、かなしい気持ちになりました。
そんなようすを見ていたのが、せいれいさまのむすめの雪ん子のしまいでした。
しまいのうち、いもうとのミーヤはせいれいさまの目をぬすんで、冬の町におりてしまいます。
ミーヤはこっそりと町におりました。
みんなに見つからないようにおりたのです。
はじめての町にワクワクしていたミーヤでしたが、ハサムおばさんのいぬがさんぽのとちゅうでにげていて、あわれミーヤはまいごのいぬにほえられて、しりもちをついて泣きはじめてしまいました。
ミーヤの泣きこえにきづいたせいれいさまは冬の町の上にもどっていきます。
たいへんだ、ミーヤがケガをしてしまう、そんなふうにあせってもどったせいれいさまでしたが、ミーヤはぶじでした。なんと、あのポチャムが、雪だるまにさしていたえだをもって、いぬをおいはらっているではありませんか。
そのあと、ハサムおばさんにいぬをぶとうとしたとおこられてもポチャムはミーヤのせいにはしませんでした。
「ごめんなさい、ハサムおばさん、ぼくはいぬとあそびたかっただけなんだ。こわがらせてごめんなさい」
そんなふうにあやまるポチャムにハサムおばさんはぷりぷりといぬをつれてかえっていきます。
ミーヤはおれいを言うのがはずかしくて、そのまませいれいさまのもとにかえってしまいました。
せいれいさまはミーヤをしかりましたが、ポチャムを見るとほこらしそうな顔でまんぞくそうです。ひきぬいたえだを雪だるまに戻しながら、えがおではなしかけています。
「雪だるまさん、雪だるまさんのおかげで女の子がケガをしなかったし、いぬもケガをしなかったよ、ありがとう雪だるまさん」
せいれいさまはそんなポチャムを見てとてもうれしいきもちになりました。
ポチャムにはゆうきのたねがある。せいれいさまはポチャムのゆうきのたねがきれいなお花になることをねがいました。
それからふたつきたって、せいれいさまはポチャムの雪だるまとそっくりな雪だるまをほうきぼしのおっぽからつくって、雪ん子のしまいといっしょに冬の町へとふらせました。
「こんどはちゃんとおれいを言ってくるんだよ」
ミーヤにいいきかせます。
「ミーヤをおねがいね、おねいちゃん」
おねいちゃんのサーヤにもいいきかせます。
「雪だるまさんたち、どうか雪ん子たちをおねがいね」
雪だるまのきょうだいにはおねがいします。
そうして、ポチャムのもとに雪だるまのきょうだいと雪ん子のしまいはおりていきました。
「あのときはありがとね、あと、なにも言わずにかえってごめんなさい」
「ん、あー、あのときの、ケガさえなければそれでいいんだよ、ね、雪タロウ」
ダイジョブ、ポチャムはまっすぐ花ひらく。
せいれいさまがほほえんでいました。
おしまい