序
序
閃光。金属のぶつかる音。飛び散る火花。赤い雫。
静夜を切り裂く轟音、爆音、何度も交差する影、二つ。
立ち止まる事を知らないそれは、いくつものアトを残しながら争い続けた。
「お前さんには本当にたまげるよ、ボクに汗をかかせるなんてな。」
「まだ強がりが言えるか!このバケモノめ!!」
「真の強者は底を見せないものさ、覚えておきたまえよ」
切先が掠める、皮膚が灼ける、地面が割れる。
ーーー剣も魔法も届かない!俺の武が!俺の魔がっ!!!
二つの破壊現象はそれでもどこか楽しそうで・・・
決して拮抗などはしていなかった。
「グ・・・アァ・・・クソ・・・」
ーーー痛い、どうして勝てないんだ。
「いやぁ、強い。お世辞でなく。」
「お前を殺せば、俺が最強になるんだ・・・!」
「ボクを抜けばもう充分最強だろうに、何が気に食わないんだか。」
足と脇腹を抉られ、赤黒い溜池を作るそれにもう一つの影は息を整え語りかける。
「ボクもこんなに高揚したのは初めてさ、誇っていいぞ、青年」
「だ・・・まれ・・・!」
「瀕死のくせになんて眼をするのまったく・・・」
ーーー悔しい、勝てないことがこんなに悔しい!!
「最強なんて称号、持っててもつまんないよ?もう20年以上誰も挑みに来てくれないからね」
「だからさ、最強なんて退屈なのさっ」
「がぁぁああ!!!!」
敵の足へと喰らいつく塊を爪先で蹴り上げる。
勝負は決していた。
「久しぶりに楽しかったよ、お前さんみたいに勇敢な若人が増えてくれると残りの人生も楽しいんだけどねぇ」
ヒューヒューと細い呼吸が小さくなってゆく。
その眼のちから強さは消えず、自分を蹴飛ばした足の持ち主を見上げ続ける。
「俺・・・がっ・・勝・・っ」
「挑んできた相手は殺す、それがボクの礼儀なんだがね」
「気が変わった。もう一度チャンスをやろう」
倒れた襤褸の前に腰を降ろし、周りを陣で囲い始めた。
「な・・・にをっ」
「お前さんは楽しかったからね、腕を磨いてきてほしいんだ」
ーーー情けない、自分が情けない
「でもさすがにこの状態を癒やすのはボクでも無理だ」
ーーー?
「だから一回死んでもらうよ」
陣が輝きを放ち、魔法の光が身体を包み込んでゆく。
「スタートからやりなおすんだ、そして鍛え直してくるといい」
「端的に言うと生まれ変わってもう一度挑戦しに来なよ、青年」
ーーーいいのか、次は絶対俺が勝つぞ
「今度はもっといい勝負ができるといいね」
ーーーいいだろう、今度こそ、お前を
「あ、そうそう」
「強くてニューゲームなんてアンフェアだからさ」
「肉体はちゃんとゼロからにしておくね」
「何事も積み重ねが大事ってことを忘れるなよ」
ーーー殺してやるッ!!!!!!!!
読了感謝します。