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【重要】課長が目覚めたら異世界SF艦隊の提督になってた件です  作者: Edu
【2期目】おっさんが新規事業を始める件
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【完了】海賊星ランバリヨンの終焉

 破壊された船艇を残したヤドヴィガの船団は退却した。

 涼井の指示で、偵察艦が一隻、追従していって確かめた。再度体制を整えてやってくることはなさそうだった。


 海賊船はそのまま惑星軌道上に残ったが、顔役のメスデンによると海賊星ランバリヨン自体は一旦放棄するとのことだった。


「今日のところは撃退できたが、俺たちゃ戦争の専門家じゃねぇんだ。それに銀河商事がもっと数を揃えてこられたらどうにもならねぇ。他にもこういう拠点はいくつもある。ランバリヨンは放棄してまたほとぼりが冷めたら戻ってくるさ」

 麦酒を銀色に輝く金属のジョッキで一気に飲み干し、泡だらけの口元を緩めてメスデンは言った。


 涼井はロブ中佐とロッテーシャ、護衛の兵を連れて海賊たちと会合した。

 メスデンの船は海賊船マルティニークといい、旧式の帝国軍艦艇を改造した高速船だった。豪奢な装飾がほどこされ、船長室も立派だったため会合にぴったりだった。


 海賊流の会合とは、思い思いの酒を並べ、海賊によっては片方の鼻に電子タバコのようなものを差し込んでいるか、あるいは噛みタバコらしきものをガムよろしく噛みながら豪快に話す、というものだった。


 ジャパニーズサラリーマンである涼井は空気を読んで、勧められた鼻タバコを自身の鼻の穴に差し込み、麦酒をあおった。鼻タバコはすがすがしい成分が効いており案外、悪くはないものだった。念のため違法な成分がなさそうなことはロブ中佐に確認した。


「なかなかイケる口じゃねぇか!」

 メスデンはすっかり上機嫌で涼井の背中を叩いた。


「ヤドヴィガの船団をとにかくぶっ倒したんだから凄いよ」アイラも何やら琥珀色の液体をグラスに注いでどんどん飲みながら言う。


「とりあえずオレらぁは明日には出るけど、何か頼みがあるんだって?」

 海賊のオガサも麦酒を飲みながら言う。

「あぁ、そうだ……」

 アイラが説明する。

 涼井たちの艦艇は偽装船殻を持っており、その船殻を付けなおす作業がいるのだと。

「それくらいなら任せてくれよ、オレらのメカニックのほうでやっとくよ」とオガサが請け合った。

 

 しばらくすると湯気を立てた肉料理がどんどん運ばれてきた。

 海賊の顔役たちはいっせいに手を伸ばし、豪快に食らった。


 涼井も酔いつぶれないように慎重に飲み食いしながら海賊たちの話を聞いた。


 どうやら海賊たちはやはりある一定の不文律に基づいて行動しているらしかった。基本的には奪えるものから奪う。開拓民には基本的には手を出さない。

 銀河商事や、銀河商事のために働く企業などは標的にする。


 そもそもローン漬けの開拓民を襲っても美味しくはないというのもあるようだったが、その銀河商事のために働く企業も海賊船を水先案内人として雇い入れれば、海賊たちは手を出さない。

 そうした独自のルールが出来上がっているのだった。


「それにいても銀河商事はめちゃくちゃでさぁね!」オガサが興奮してテーブルを叩く。


 どうやら銀河商事が開拓宙域に入り込んできたのはここ10年の話とのことだった。

 開拓自体は30年以上も前から行われているが、銀河商事は恒星間開拓事業公社のある中立星ミードに本社を移し、民間軍事企業ヤドヴィガを子会社にし、本格的に開拓宙域の支配に乗り出しているのだという。


 銀河商事は物流を抑え、その安全確保の名目で傭兵艦隊ヤドヴィガを使って実質的に法執行を行っているような状態らしかった。企業であるが、複数個の惑星を事実上支配下におさめたかなり有力な勢力ともいえる。


 そして銀河商事はいくつかの小国と積極的に商流し、開拓宙域の物資などを販売していた。そして仮に帝国や共和国の質量弾のような軍用品でも、一度開拓宙域を経由すればもう出所のわからない品になる。

 この状態は共和国にとってもかなり好ましくない状態だ。


 気が付いたら以前、辺境に侵攻してきたロストフ連邦のように案外力をつけている国が結構あるのかもしれない。


 商業ギルド同盟、リマリ辺境伯領、クヴェヴリ騎士団領、フォアールベルク侯国など主要国家だけではなく、アルファ帝国の独立した貴族たちや旧選帝公などもあなどれない。


 涼井はメスデンのマルティニークを辞した。

 オガサが工作船を送ってきたので、念のため武装した短艇で警備しながら船殻を取り付ける作業を実施してもらった。


 涼井は艦橋にロブ中佐、副官のリリヤ、護衛のロッテ―シャを集めて今後の方針を語った。


「銀河商事の対抗企業を作って開拓宙域を事実上管理できる立場になろうと思う」

 涼井は堂々と宣言した。ロブ中佐は目を見開き、リリヤは感嘆の表情を浮かべ、いつも冷静なロッテーシャですら僅かに驚いたように見えたのだった。



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