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【重要】課長が目覚めたら異世界SF艦隊の提督になってた件です  作者: Edu
【2期目】おっさんが新規事業を始める件
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Re:Re:Re:【商談】開拓宙域の海賊姉妹

 涼井たちの5隻のうち4隻の共和国艦艇は隊形を整えて海賊船団の監視に入った。

 1隻の哨戒艇は解除した偽装船隔の回収に走り回っていた。

 涼井の依頼でヴァイツェンマイニング社の武装商船や小回りの利く船もそれを手伝った。


「いやはや……共和国の兵隊さんたちでしたか」

 ヴァイツェンマイニング社のジャクソン社長は自らお礼を兼ねてドーントレーダーに短艇で乗り込んでいた。

 彼は汗をふきふき感嘆しているような観察しているような目つきでドーントレーダーの応接室……といっても提督用に用意された私室に通されていた。

 涼井の背後にはロッテ―シャが無言で控えている。


「はい、とはいえ開拓地を侵略しようとかそういう意図ではありませんよ」

 涼井は彼にコーヒーをすすめ微笑を浮かべた。


 涼井の奥の手とは、ドーントレーダーの武装そのものではなく、念のために開拓宙域近縁で待機させていた偽装商船の増派だった。

 大きな動きにならないように4隻をばらばらにヴァイツェン宙域に越させ、ヴァイツェンマイニング社の護送船団(コンボイ)の護衛に紛れ込ませたのだった。


 相手の海賊船団は高速の民間船を改造したもので、かなり統制はとれてはいたが火力と装甲、そしてダメージコントロールには差があった。海賊船は経済的でなければならない。ゆえに反物質構造体を湯水のように消費する正規軍艦艇の戦闘機動についてこられるような出力と装甲は持っていなかったのだった。


 涼井としてはせっかく海賊船団も捕らえたところで、ジャクソンには正体をある程度話すことにした。あくまで開拓宙域に共和国として手を出す意向はないこと、実態を把握することが目的であること、開拓宙域の自由に干渉する気がないこと。それらを懇々と話した。


「私個人の意向というより……共和国の宇宙艦隊の上層の統一見解と思っていただいてもよいと思います」

 涼井はにこりと笑った。

「なるほど、理解した……しやした」 

 ジャクソンは満面の笑みを浮かべた。


「あんたもかなりお偉い人らしいですな、大尉か……ひょっとすると少佐くらいなんでしょ? こんなところに自ら出てくるくらいですから」

 ジャクソンは続けた。実際は宇宙艦隊司令長官で元帥であることは涼井は黙っていることにした。協力してくれるのであれば不必要に情報を渡しすぎなくても良い。


「ひとまず船隔を回収したら目的地に向かいましょう。我々も探査を続けたいと思いますし……海賊船団の尋問も残っていますので」

「わかりやした。それについては我々も全面的に協力しますんで」

 ジャクソンは感謝しながら戻っていった。


「さて……」

 涼井は捕らえたという海賊船団のリーダーに会ってみることにした。


「ふっざけんなよ!」

 女性の声が響き渡る。

 襲撃してきた海賊船団のリーダーと思われる二人と幹部らしき連中は、共和国の哨戒艇の倉庫の一画に確保していた。


 ロブ中佐と憲兵が尋問にあたり、陸戦隊の分隊が小銃を手に警戒している。

 見るからに強面の体格の良い男たちは案外大人しく椅子に座って憲兵と話をしているが、その中でひときわ目立つのが青緑色の髪を、地球でいうところのパンク風のボブにした女性が1人。天然素材と思われる革のジャケット、右目は赤いガラス様の素材に交換され、ほんのりと光を放っていた。


 もう1人女性がいて、その人物はまるで帝国貴族の子女のように金がかった髪をストレート気味に整え、帝国貴族の私兵の軍服のようなものを着込んでいる。20代くらいに見えるが、やや年齢不詳だった。そして大声をあげているのはこちらのほうだったのだ。


「ふっざけんな! さっさと解放しろ!」

「姉ちゃん……落ち着こうよ」

 一見ぴしっとしているほうが騒ぎ、いかにもパンク風の女性のほうがたしなめている。


 ロブ中佐がこちらに気付いて話しかけてきた。

「海賊船団のリーダーのようで、大声をあげているほうが姉の……アイラで、あちらが妹のローランですね」

「これが先日の船団を襲った連中なのかな?」

「……まだ分かりませんがかなり統制がとれた集団のようです。全容の解明にはもう少しかかるかもしれません」


 金髪のアイラのほうがこちらに気付いて睨みつけてきた。

 特に拘束されたりはしていないのだが、暴れそうだったのでこちらには憲兵がついている。


「お前がリーダーか? 解放しろ! 軍人みたいな恰好しやがって。銀河商事の連中か?」

 涼井はどきりとした。

 地球の銀河商事(・・・・・・・)に勤めていた過去はある。そしてこの世界の銀河商事。企業ロゴまで酷似したその社名は涼井の心中をざわつかせた。


 しかし気になるのはそこだけではなかった。

「……なぜ銀河商事と? 我々は違うよ。まぁ傭兵会社みたいなもので開拓宙域には来たばかりだ」

 アイラの目は疑惑に満ちていたが、ほんの少し表情が和らいだ。

「銀河商事じゃないのか……そうか、そうだな、あの鼻持ちならない感じとは違うみたいだな」

「……どういうことかな?」

 アイラは涼井にぽつりぽつりと事情を話し始めたのだった。


 

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