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【重要】課長が目覚めたら異世界SF艦隊の提督になってた件です  作者: Edu
【2期目】おっさんが新規事業を始める件
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Re:Re:【再稟議】銀河商事

 惑星ヴァイツェン2はやや山がちな惑星で、ほぼ惑星ゼウス……地球よりも少しだけ小さいサイズだった。まだ人造海も出来上がっておらずちょっとした湖があるだけだった。そのため気候の循環システムも出来上がっていないため、人間が居住できる緯度経度はかなり限られているとのことだった。


 涼井達の乗る交易船「ドーントレーダー」はゆっくりと重力子制御を行いながら管制の支持に従って降下した。大気の流れは荒くドーントレーダーも細かく揺動した。宇宙空間ではあまりこうした揺動はないのと、地上勤務が中心で宇宙艦艇に乗り慣れていないロブ中佐の顔色がどんどん青ざめていく。


 宇宙港自体は露天に広く高強度炭素タイルが敷き詰められており数十隻の宇宙船が見えた。中には駆逐艦くらいのサイズのフネも停泊しているようだった。


 接地。ちょっとした振動が艦橋にいる涼井達にも伝わってきた。地上に降り立つのは久しぶりだ。 

 

 居住域は人工的に発生させた気流と空中の障壁で住める環境になっているとのことだが、宇宙港の中は気密服装着が推奨された。いわゆるテラフォーミングが進んでいない惑星ではありがちだ。

 

 宇宙港は障壁を張るわけにはいかないので、露天になった港では砂塵が吹き荒れ気密服に砂つぶがぶつかってきた。涼井はロブとロッテーシャ、リリヤと護衛の陸戦隊員数名を連れてまるで鉱石を運ぶ炭坑用のトラムのような乗り物に乗って地下道へと向かう。


 地下道からはどこかの惑星から持ってきたのだろう、中古の軌道車が定期的に通っているようだったので、それに乗り居住域に向かった。

 1時間程度で居住域につく。気密服を脱いで地上に出た。


 宇宙港とは一転して穏やかな気候で、一体成型の簡易な建物が並んでいたが、それでも久々の本物の重力と広い空間に一同は息を大きく吸い込んだ。


「こじんまりしていますが、なかなかの街ですな」

 ロブ中佐はあたりを用心深くきょろきょろと観察していた。

 街の中心街には人出もあり、若い家族連れが出歩いていることから治安は比較的よさそうだったが、ところどころに灰色の制服を着た銀河商事の私設警備隊が小銃を背負って立っている。


 警察と軍隊を兼ねているのだろう。

 空を見上げるとやや暗くなってきていたが、まばらな星空の一画を横切るようにして渦巻き状銀河の巨大な腕が煌めいていた。

 これはこれで想像を絶する光景だった。


「カチョウ、本日はあちらに宿をとっています」

 と微妙におかしな"課長"の発音をしながらロッテーシャが言う。

 彼女は注意深くあたりを見回しながら一同を先導する。陸戦隊員はさりげなく涼井を囲んでくれた。


 南国風の色とりどりのタイルで舗装された道をしばらくいくと裏通りを横切る形になった。裏通りは人相の悪い男たちがたむろし、あまり雰囲気は良くなかった。その様子にロッテーシャの目が鋭くなる。


 中心街も含めて背の低い建物が多かったが、その50階建てのホテルは堂々と星空に向かってそびえたっていた。インペリアルホテル・ヴァイツェン。その名前にふさわしく、優美な装飾が施されたアルファ帝国の民間企業のホテルチェーンが所有しているとのことだった。4つの棟が絡み合うように伸びており、日本の建築基準では絶対に建てられない形状をしていた。


「このホテルが一番護衛に良さそうでした。ただもう一つ理由がありまして……」

 ロッテーシャが言うには銀河商事のヴァイツェン支社がこのホテルのオフィス棟に入っているとのことだった。


「いずれにしても我々も商社を偽装しているわけですから、当然、銀河商事を訪問するでしょうね。商社なら」とロブ中佐。

「だな……」

「カチョウ、民間人の振りってできるんですかぁ? しかも相手は歴史の長い老舗ですよ」とリリヤ。

 涼井はにやりと笑って眼鏡の位置を直した。

「当然だ。任せたまえ。実はすでに重力子通信でアポイントを入れてある。明日は朝一番で訪問してみよう」

「さすがカチョウ!」

「……その発音、いやリリヤだけじゃないのだが、みんな何とかならないのか?」

「えー、特におかしくないですって、あはは」リリヤが笑う。


 そうこうしている内にインペリアルホテル・ヴァイツェンの正面玄関についた。

 正面玄関には折り目正しくスーツを着込んだ青年が立っていてこちらに頭を下げる。思わず涼井も目礼するほど完璧な日本風のお辞儀だった。


(ホテルマンか?)と涼井は一瞬思った。しかしホテルマンならこの世界でも胸につけているネームプレートのようなものがない。そのかわりにスーツに社章らしきものが煌めいている。


「お待ちしておりました」

 お辞儀をしていた青年がにっこりと笑う。背は高く金髪を短く刈り込んでいる。

「私は銀河商事ヴァイツェン支社の支社長、トムソンと申します。サカモト様ですね、お待ちしておりました」


 涼井は彼の笑顔は見た目通りではないということを感じ取っていた。よく見ると目が笑っていない。涼井は容易ならざる相手と見て、気を引き締め直すのだった。


 

 


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