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Re:Re:【出張】戴冠式前夜

 アルテミス宙域で現地の将官・将校と会合を繰り返した涼井と国務大臣アレックスの一行は引き続き海軍第1宇宙艦隊に乗り込んだ。途中までロアルド艦隊の一部が護衛した。

 リオハ条約締結後に設定された共同警備区域ではササキ少将が暫定的に指揮している第5艦隊、スワンソン・ヴァイン伯爵という人物が指揮する1万隻強ほどの帝国艦隊が待機していた。


 共同警備区域はやや複雑な地形のためそれぞれかなり近接して隊形を組み単分子ワイヤーを飛ばして通信を確立した。

 戦艦ポセイドンのメインスクリーンにササキ少将とスワンソン・ヴァイン伯爵が出現する。

 こちら側の艦橋のメインスクリーン前には涼井、リリヤ、海軍軍人のファーガス中将が待機していた。


 ササキ少将は黒髪短髪の30歳ほどの快活そうな青年将官で、スワンソン・ヴァイン伯爵の容貌は銀髪で線が細く、どこか儚い印象を受ける人物だった。


「こちらササキ艦隊。いやぁ良いですねぇ一個艦隊をまるまる指揮できるというのは」とササキ少将。

「……ふっ この間からそればかりですな。はしゃぐのも結構ですが停戦監視という名目ながら旧敵国の艦隊がこうして固まっているのです。貴殿は火薬庫に座らせられる役目を押し付けられただけとも言えますぞ」

「火薬庫? 上等、上等、むしろ吹っ飛んでくれたほうが対応しやすいさ」

「随分と呑気なことですな」

 スワンソン伯爵は皮肉な微笑を浮かべる。儚げな印象と異なり意外に皮肉屋のようだった。


 ササキ艦隊とスワンソン艦隊は会合の後、それぞれ1000隻ほどの分艦隊を出して涼井一行を護衛してくれた。

 回廊宙域を出るあたりでササキ艦隊は回航し、スワンソンの分艦隊がリオハ星系まで護衛についた。


 帝国領内はまだ掃討戦は続いているものの首都惑星アンダルシアから国境線までは治安が回復しているようで、時折商船隊などともすれ違った。

 涼井はたまに艦橋に顔を出しては商船隊についてオペレーターに調べさせていた。


「やれやれスズハル提督……自室で休んでおられれば良いものを」

 国務大臣のアレックスだった。

 彼はきっちりと外交用のためのスーツを着込み革靴もピカピカだ。

 涼井は微笑を浮かべた。


「先日の情報で商船隊が開拓宙域に向かっているという話、あれが気になっていましてね」

「ワーカホリックというやつですな」

 アレックスも笑顔を浮かべた。


 国務大臣は戦争中は目立たないが帝国との終戦処理では彼は事務方を引き連れ奔走し、かなり短い期間で条約をまとめたのを涼井は見ていた。


「まぁ私も人のことは言えませんがな。ところで何か分かりましたかな?」

 アレックスは世間話の延長のつもりだったのだろう。

 しかし涼井はふとこれまでにまとめた商船隊の動向について彼に話す気になった。


「……実はこれまでの商船隊の動向を全てまとめて統計風にしてみたのです」

「ほう」


 涼井は一瞬地球に帰ることになった際に持ってくることができたノートパソコンを取り出した。どうもこの世界の端末は性に合わず慣れたofficeソフトを使いたかったのだ。


「……珍しいスタイルの端末ですな」

「オペレーターにも協力してもらい、商船隊のゆく方向をおおまかに算出してもらいました。それをまとめてもらったのですが」


 涼井はofficeソフトで作成したグラフを見せた。

「む……」

 アレックスの顔色が変わる。


「そうです。どの星域でも、方向がある程度限定される回廊を除き、開拓宙域に向かう商船隊が6割、帝国や共和国に向かうものが3割、残りが1割です」

「停戦で少し気を抜いていたが……」

「ということは開拓宙域に向かったまま帰ってこない商船隊が多い、事故届や行方不明になったという情報はほぼ平常通り。ということはほとんどが開拓宙域で滞留しているということになります」

「これまでは行って物資を売買したらすぐ帰ってくる商船隊が多かったはずだな」

「えぇ、少なくとも大量の物資を必要としていて、そして商船隊そのものが現地でさらなる物流に関わるチャンスがあるのではないか、と思っています」

「何かあるな」

「私もそう思います」

 

 アレックスは何かぶつぶつ言いながら自室に戻っていった。

 涼井も統計をとってみて気づいたが、こういう時は何かあるものだ。

 帝国と共和国が停戦したのでまたぞろ何かが動いていると見るべきなのだろう。

 涼井は艦橋のシートに腰掛け、落ち着いた姿勢で思索を巡らし始めた。


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