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Re:Re:【会計監査】革命的反戦軍の策謀

「提督! 大変なことになりましたぞ!」

 ドスドスと足音を立てて涼井の臨時執務室にやってきた者がいた。

 転びこまんばかりの勢いで執務室に入ったのは憲兵隊のロブ少佐だった。


「ロブ少佐か」

「大変なことに……ん? 提督、それは何ですか?」

 ロブ少佐が不審そうな目付きで涼井の手元にある金属製の四角い機械を見た。

 何やら古式の画面がついたデバイスのようだ。

 

 もちろんそのデバイスは涼井が地球から持ち込んだノートPCだ。

 だが彼はロブ少佐の問いに答えず冷徹な目でちらりと彼を見やった。


「大変なこととは? ロブ少佐」

「……はっ、すみません。実は……」


 ロブ少佐が言うにはアテナ宙域の州政府庁舎に数千人のデモ隊が押し寄せているとのことだった。

 狙いは騒擾とスズハル提督だったのだろう。


 しかし。

 ここは都心部から少しだけ離れたシティホテルだった。

 四つ星だが会議室を備えている。執務に丁度良いジュニアスイートも空いていた。


 涼井は前回のヴァッレ・ダオスタ公尋問と自身の暗殺未遂事件から危険を察し、少数の者だけが知る場所に執務室を移していたのだった。


 都心から離れ公園に面したこのホテルは居心地がよかった。

 さらにロブ少佐の提案で、涼井の泊まる部屋は最上階とし、左右の部屋、および直下の部屋は宇宙軍の経費で借り上げて会った。借りた部屋には数名の憲兵が泊まり込み、ホテルに面した公園には目立たない場所にロッテ―シャ大尉の陸戦隊員が潜んでいる。


 その間にもロブ少佐による状況説明は続いていた。


「今やバリケードを挟んで銃撃戦まで生起しており庁舎が陥落するのは時間の問題かと……」

「ふむ……」


「さらに我々が掴んでいる情報によると、どうも一部の宇宙軍兵士が軍籍を離脱し騒擾に加わっているようです!」

 涼井の目がきらりと光った。

「確かか? 少佐」

「はっ、いま細かい人別は行っている最中ですが、少なくとも数十名規模のようです。火器の持ち出しも確認されています」


「ふむ……」

 涼井は地球の端末を閉じ椅子に深く座りなおした。

 眼鏡の位置を直す。


「……宇宙軍の掴んだ情報ではさらに革命的反戦軍のものと思われる艦艇の集団が近づいてきているようだ。その数およそ数十。戦隊くらいの数ではあるな」

 ロブ少佐は血相を変えた。「何ですと!?」


「さらに艦艇の受託建造企業のフォックス・クレメンス社が怪しい動きをしているそうだ」

「とんでもないことになりましたな……」


 涼井は眼鏡をくいっとあげた。

「ふ……良いではないか。逆に言うとこれまで潜在的だった国内の敵性勢力が浮き彫りになったのだ。むしろ膿を出すべき時だと思わんかね?」

「提督……そこまでお考えとは……」

「顕在化した陰謀など国家権力の敵ではないさ」

「しかしやってくる艦艇はどうします?」


「どうせ共同訓練もまともにやっていない連中だ。普通の艦隊が到着するよりも時間がかかる。奴らは間に合うと思っているだろうがそうはいかん」

「なるほど……」


「実は惑星ゼウスから第一艦隊の分艦隊を数百ほど派遣してもらった。仮にフォックス・クレメンス社が追加で艦艇を提供したところで何もできんさ。陸戦隊も積んでいる」

「おぉ……」


「それより君が率いてきた憲兵大隊に急ぎ武装をさせろ。デモ隊による庁舎の包囲を解囲するのだ」

「はっ」

「多少は熱に浮かされた一般人もいるかもしれんが9割クロならとりあえず制圧だ。銃を持っている相手がいるなら容赦なく撃て」

「かしこまりました」


 ロブ少佐は敬礼しさっと出て行った。

 涼井はその後ろ姿を見守るとこの世界の端末を出しどこかに通話を行った。

 その相手の人物は涼井の指示を了解したようだった。

 涼井は微笑を浮かべ、ホテルの部屋のカーテンを端末を使って閉じた。狙撃を警戒してのことなのであった。


 この状態であれば警戒しても警戒しすぎることはない。

 涼井は地球でのうかつな行動を悔い二度と繰り返すまいと誓っていたのだった。

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