第185話 要件定義の件です
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「三種の法具?」
その話は涼井にとっては初耳だった。
リリザからもそういう話は聞いたことがない。
ヴァッレ・ダオスタは満足そうな笑みを浮かべた。
「やはり知らんだろう? おそらくだがリリザ……現皇帝も知らん話だ」
「皇帝選抜に関係があると?」
「その通りだ。そもそもリリザは父親である公爵を弑逆した疑いもある。その上で公爵を名乗りシャルトリューズを放逐し同盟に侵攻した。リリザがのっとった選帝公の領地も正式に継いだわけではない……」
「なるほど何らかの儀式があるというわけですな」
涼井は眼鏡の位置を直した。
そうすると間を持つことができるしその間に考えをまとめる余裕もできる。
皇帝選抜。
本来は帝国の六大選帝公が参加して次期皇帝を選ぶ儀式だ。
「その儀式に皇帝の正当性を担保する法具があるというわけだ」
「……もしかするとシャリュトリューズ伯爵が持っているのか」
「その通りだ、ご明察……ブハハハハ」
ヴァッレ・ダオスタはいつもの調子で笑い声をあげた。
「ただし全てではない。全てではないが……もしこのヴァッレ・ダオスタを解放するというのであれば教えても良いだろう」
「……聞こうか」
「条件は解放だ、良いな?」
「覚書でも作りましょうかな?」
「スズハル元帥は冗談が好きだな……まぁいい。そもそもなぜワシが多少の策謀があったとはいえ無理に帝都に攻め込んだと思っている」
スズハルの脳裏に光芒が閃いた。
「帝都に法具がある?」
「……その通りだ。だから法具ひとつとワシの身柄を交換しようじゃないか。場所は教えてやらんでもない……それにワシでないと見分けがつかないぞ」
「なるほど……」
涼井は文書化された契約がないことを盾に情報を聞き出すだけ聞き出してから「実行は来世」と言う考えも持っていたのだがヴァッレ・ダオスタの提案に興味がないわけでもなかった。
もちろん「法具」そのものの正当性や意義にも興味はあった。
涼井はヴァッレ・ダオスタの身柄を厳重に拘束しながらロッテーシャ少佐に陸戦隊を一部抽出させてヴァッレ・ダオスタの言う通りに宮殿へと向かった。
宮殿自体はすでに解囲されて陸戦隊と帝国の近衛兵が共同管理していた。
本物の石を使った宮殿は巨大な丘の上にある。その周辺に兵士たちが展開していた。
すでに負傷者の手当や野戦病院の設置も始まっているようだった。
一行は動路を使い宮殿へと向かった。
ヴァッレ・ダオスタは迷わずに謁見の間へと向かった。
戦闘の跡が見受けられたがリリザが普段腰掛ける玉座は損傷した様子もない。
ヴァッレ・ダオスタはそのまま真っすぐ玉座へと向かった。
「これだ」
ヴァッレ・ダオスタは表情の読みづらい笑みを浮かべた。
「これ、とは?」
涼井は眉をひそめた。
そこには皇帝の座る玉座が置かれているのみだ。
「玉座が法具というのか?」
「……そうだと言いたいところだがそうではない。この部屋そのものが法具のひとつだ」
「……この部屋が……」
「ワシをちゃんと解放するならば残りの法具の場所も教えてやろう。もっともこの玉座の間は法具であって法具ではない。法具になるには条件がある。くだらん拷問などしてもワシは体内に仕込んだ毒でさっさと旅立つぞ」
「……星系を出るまでは護送させていただくが良いですかな?」
「良かろう……」
その時ヴァッレ・ダオスタは意外な行動に出た。
185話です。
ヴァッレ・ダオスタの意外な行動とは!
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