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【コンペ】帝国内で暗雲漂っている件について

 アルファ帝国の帝国首都アンダルシアは帝国領内奥深くにある。

 帝国は現在、家宰(マーヨル・ドムス)リシャール侯爵が実権を握っている。


 リシャール侯爵は弱冠25歳。

 配下に若手の名将を揃え帝国直轄領と直轄艦隊の総司令官でもある。

 その総兵力は8個艦隊で約16万隻もの兵力になる。

 共和国艦隊12個艦隊・約14万隻を上回る戦力だ。


 しかしリシャール侯爵は帝国すべてを押さえているわけではなかった。

 帝国は直轄領を除くといくつもの貴族の連合体だ。

 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵が入り乱れ小さな領地をたくさん持っている。

 多数の派閥に分かれ時には争い、連合し、一枚岩というにはほど遠い状況だった。


 帝国直轄領もあくまで帝国5大選帝公爵といわれる最大勢力の持ち主たちのうち2人が連合してできた領地であって、その領地と艦隊を家宰(マーヨル・ドムス)であるリシャール侯爵が預かっているにすぎないのだった。


 そのためリシャール侯爵はいつも全力で出撃するわけにはいかず、しかも最近はいちいちスズハル提督に阻まれストレスとイライラの限界に達していた。

 彼は家宰府の執務室に閉じこもり昼間からワインを呷り、飲み干したボトルを暖炉に叩きつけるという奇行をしていた。


「リシャール侯爵閣下」

「む……ボルドーか」

「昼間から飲酒とは……これはいけませんな」

「ふん……」


 執務室に現れたのはボルドー伯爵だ。落ち着いた風貌の中年男性で口元に微笑をたたえている。

 リシャール侯爵の忠臣の一人でもとは平民だった男だ。


「スズハル提督のことを考えておられたのですか?」

「いや……む……そうだな。その通りだ。あの男、またしても私の作戦を阻みおった」

「実際あの罠はお見事でした。あと一歩でしたな」

「勝ちきれなければ意味などない」


 リシャール侯爵は新たなボトルの封を解いた。

 慣れた手つきでこの時代の最高級品の証である本物のコルクを抜く。

 

「ところで……ヴァイン公爵の噂はご存知ですか?」

「ふむ? 何の話だ」


 ヴァイン公爵は5大選帝公の1人だ。

 どちらかというと過激派で、現在空席となっている次期皇帝を狙っている。

 皇帝は常に選帝公爵から1人選ばれることになっている。

 

「この度の辺境での会戦を理由に家宰の交代と皇帝選挙の実施を主張しはじめているそうです」

「しはじめているとは……?」

「まだ噂の段階です。毎晩園遊会を催しそこで協力者を募っていると……」

「くだらん……帝国が最初から1つにまとまっていれば共和国など一蹴できるのにな」

「しかしかなりの数の貴族がなびいているようです」

「どうせ泡沫貴族どもだろう。伯爵の1人や2人寝返ったところで数千隻程度の戦力にしかならん」


 リシャール侯爵は冷笑を浮かべた。

「……ところが今回はヴァッレ・ダオスタ公爵が味方になる可能性が……」

「何?」


 ヴァッレ・ダオスタ公爵も選帝公の1人でかなりの実力者だ。それらが結びつくとなると……

「危険だな」

「ヴァイン公爵はちょうど領内の見回りと称して数万隻の艦隊を動員しているようです」

「なるほど分かった、今のうちに手を打っておくか……」

 リシャール侯爵の瞳に楽し気な炎が宿った。

 ボルドー伯爵はその様子を目を細め楽しそうに見つめているのだった。


――ヴァイン公爵の艦隊約3万2千隻がヴァッレ・ダオスタ公爵の艦隊と合流し新たな皇帝選挙を求めて首都目掛けて進撃を開始したのはその年の夏の終わりごろだった。

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] マーヨル・ドムスの日本語訳であれば、家宰よりも宮宰が良いかと思います。 ご参考まで
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