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【要調査】 今回のコンペの件につきまして

 アルテミス宙域は共和国領とアルファ帝国領の間の回廊状の宙域だ。

 もちろん他にも領土を辺縁では接しており、その具体例がヘラ、ハデス両宙域だった。 

 ただお互いが戦力をぶつけやすいからか、比較的安全な宙域だからか共和国と帝国はよくここで衝突していた。


 ロアルド提督の率いる第2艦隊を先頭に、共和国の9個戦闘艦隊は突進した。

 アルテミス宙域を防衛していた小規模の帝国軍を蹴散らし、宙域奥深くに侵入する。

 共和国艦隊は一列になってアルテミス宙域を侵攻し一気にこの宙域の惑星都市、惑星アルテミスまでたどり着いた。


 惑星アルテミス周辺には敵艦隊はおらず、アルテミスに布陣した小規模の陸軍が反撃してきたが、宇宙空間と地上では宇宙空間のほうが有利で、瞬く間に帝国陸軍は降伏。アルテミス市を奪取した共和国艦隊は第11艦隊を残しふたたび第2艦隊を先頭に進撃を再開した。


 アルファ帝国艦隊の反応は早く、共和国の永遠のライバルであるリシャール侯爵の艦隊2万隻が現れた。

 しかし彼の艦隊は戦火を交えることなく射程外で一定の距離をたもちつつ後退を続けた。

 艦艇の推進機構の関係であきらかに前進するほうが早いのだが、共和国艦隊はいつもの通り(・・・・・・)罠を警戒して積極的に手を出せずそのままの態勢でアルテミス宙域を抜け帝国領に侵入した。


 その刹那。

 先頭を快走していたロアルド提督の艦隊に無数の光線が突き刺さった。

 一気に爆発がいくつも起こり、艦隊の陣形が乱れる。


 帝国領内ではリシャール侯の旗下にある貴族たちが艦隊を率いて待ち受けていたのだった。

 ボルドー伯爵の艦隊2万隻、ブルゴン伯爵の艦隊2万隻、そして態勢を整えなおしたリシャール侯爵の艦隊2万隻。


 一列になって次から次に回廊から出てこようとする共和国艦隊は狙い撃ちにされた。

 狭い回廊の出口に扇形に展開したアルファ帝国の艦隊は次から次に集中砲火を浴びせ、一方、共和国艦隊は残骸や前を進む味方のためにうまく機動できず、いい的になってしまった。


 全体の数では帝国艦隊を上回るがひとつひとつの艦隊は規模も1万2千隻と小さく、加えて待ち構えている罠に自ら飛び込む格好で被害が累積する。あっという間に2~3個艦隊が壊乱した。


「だ、だめだ……」

 宇宙艦隊司令長官ノートン大将はぐっしょりとかいた冷や汗を拭くでもなく艦橋の自席で崩れ落ちた。

「な、な、な、何とかするんだマイルズ中佐……」

 血走った目で情報主任幕僚のニールセン大佐がこの作戦を立てたマイルズ中佐に詰め寄る。

 その間にも先頭を進んでいた第2艦隊、つづいて第3、第4艦隊壊滅のニュースが飛び交う。

「ゲーテ提督戦死! ロアルド提督行方不明! サンダーズ提督戦死!」

 オペレーターの悲痛な報告が飛び交う。


 マイルズ中佐は魂が抜けたような表情でよろよろと短艇に向かった。

 短艇を前線に走らせる。

 短艇のモニタには共和国軍艦隊の成れの果てである残骸が無数に浮遊する姿が映し出されていた。

「まもなくいまの最前線の第8艦隊のあたりに到……」

 短艇の艇長は最後まで話すことができなかった。

 短艇のすぐそばの駆逐艦が爆発四散しその破片に短艇が巻き込まれたのだ。激しい衝撃にマイルズ中佐は吹っ飛んだ。


「……マイルズ中佐の短艇大破! 乗員全員行方不明!」

「どうしたらいいんだ……」

 オペレーターの声にノートン大将はぶつぶつとつぶやくだけだった。


 リシャール侯爵はアルファ帝国の艦隊の陣形を微妙に変えていた。扇形を狭めるようにし、自身の直轄艦隊とボルドー伯爵の艦隊で包囲を続けつつ微妙に後退し、共和国艦隊の全貌をおおむね引きずり出した。

 さらにブルゴン伯爵の艦隊を敵側背に機動させ退路を断ちにかかった。


 ブルゴン伯爵の艦隊はまだ無傷だった第1艦隊に襲い掛かった。

 その瞬間。 

 ブルゴン伯爵の艦隊にいくつもの爆発が出現した。


「何事か!」

 ブルゴン伯爵は髭をふるわせ怒声をあげた。

「敵です! スズハル提督の艦隊です!」

「何だと!」


 戦場にここにいないはずの涼井の艦隊が姿を現した。

 戦場に出きった共和国艦隊の後からのっそりと出現し、ブルゴン伯爵の艦隊の側面に盛んに光線を射かけている。

「す、スズハル君……」

 ノートン大将が涙を流さんばかりにしてモニタに現れた涼井の顔を見上げた。


「独断ですが救援に参りました」

 涼井は眼鏡をくいっとあげ氷のような微笑を浮かべた。

 その背後でリリヤがくねくね悶えていたがノートン大将の目にはそれは映っていなかった。


 

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