【MTG】新大統領と課長が会うようです
涼井は久々に共和国領に帰還し首都惑星である惑星ゼウスに向かっていた。
さすがに帝国皇帝リリザも一度は帰還するということになったため、武装商船ドーントレーダーにリリザに同乗してもらい、国境付近で事情を知るミッテルライン公カルヴァドスの艦隊にリリザを引き渡した。
「また私のことが必要になると思うわよ、涼井提督」リリザは謎めいた微笑を浮かべた。
「その時はお呼びいたしましょう」涼井は敬意を込めた一礼をする。
「確かに陛下を預かった。ありがとうスズハル提督、いや元帥殿。いつになく陛下も楽しそうだよ」
カルヴァドスは去り際に涼井の肩を叩いた。
帝国艦隊と別れた涼井は途中から司令官直轄艦隊である第3艦隊に護衛されて惑星ゼウスにたどり着いた。その道中、いくつかの指示を開拓中域のヘルメス・トレーディング社に飛ばした。リリヤが必死に現場担当をつとめているが迫力に欠け、アイラやローランに毎日いじくられているらしい。
ヘルメス・トレーディング社のある漂流惑星ランバリヨンには、メスデンやオガサら海賊一党に加え傭兵艦隊マトラーリャのルテニアがいるとはいえ、勢力的にはロストフ連邦に劣っており不安だった。統括する人間が涼井だけという状況もよくはない。突発的な事態に対応しづらそうだった。
そもそも開拓宙域は混沌としており軍人というより政治家に近い人材でなければ難しそうだった。
宇宙艦隊司令長官の帰還ではあったが、あくまで予定を公表しての帰還ではなかったので、迎えはごく少数にとどまった。首席幕僚のバーク少将は飛び付かんばかりに走り寄ってきた。
「提督ぅぅぅよくお戻りで!」よく整えた灰色の髭がやや白くなった気がする。
「ありがとう、助かった」
自動運転の防弾車に乗り込むとバークは憤慨した。
「いやはや今の大統領のせいでとんでもないことになってますよ」
バークによると、大統領エドワルドの後任となった労働党のオスカルはさっそく大統領令で軍事予算の削減を訴えてきたとのことだった。議会の承認が必要だが、一般的には帝国との戦争はひとまず終結したという認識で、ロストフ連邦との戦争も事実上「国境付近でのただの紛争」という認識が議員や有権者の間に広まっているそうだった。
挙句に涼井が正攻法で豪快に勝ったも一因とのことだった。
涼井はこめかみを押さえて嘆息した。
「まさかあの勝ち方に足を引っ張られるとは……」
「まぁまぁ提督……それに予算配分は財務省や国防省の仕事ですから、予算が削減されるにしても施行はまだ先ですし」逆にバークが慰めにかかる。
「どれくらい削減されるという話になっているんだ?」
「毎年10%づつの削減です、議会で否決されるかもしれませんが」
「10年で半減か……こういうのは一度減らしてしまうと、増やしても戦力回復まで時間がかかる。半減となると国力で劣る中堅国家も野心を煽ることになる」
「でしょうなぁ」
「ところで大統領と面会はできるだろうか?」
「リクエストをいれています。たぶん数日以内には」
「それと……」
涼井はある人物との面会をバークに依頼した。
バークは驚いたが、涼井が丁寧に事情を説明しようやく納得したのだった。
大統領との面会はカジュアルに、以前に使ったことのあるホテル「トライアンフ」の一室でとなった。レストランの個室が押さえられ、涼井は礼装に身を固め、ホテルに出向いた。
大統領が現れるということでホテル「トライアンフ」は厳重な警護官の統制下に置かれ、周囲を警察車両が固めていた。あちこちで赤と青の警戒灯が煌めき、何が起きたのかと周辺の住人が見物していた。涼井本人も武器チェックを受け、護衛のロッテーシャと数名が拳銃を許されたのみでホテルに入ることができた。
ウェイターに丁寧に個室に通される。きらびやかな内装で、銀と白の上品な色使いだった。大統領オスカルは先に入って涼井を待ち受けていた。
オスカルは金髪碧眼を丁寧に切り揃えた30代半ばの青年だった。
スーツを着ていたがネクタイは締めずにカジュアルな着こなしだ。
そのそばにオスカルより少し若く見える青色がかった髪の毛の女性が控えている。そちらもカジュアルなスーツ姿だ。護衛もいない。
「待っていたよスズハル君」オスカルは真珠のように白い歯を見せて笑った。
「本日はお時間をいただき……」
「堅苦しいことは抜きだ、まぁ座りたまえ」
「失礼いたします」涼井が座る。ロッテーシャだけが念の為で涼井の背後に控えた。
「さてスズハルくん」
「はい」
「さっそくだがキミはクビだよ」
オスカルは笑顔のままだったが目は笑っていなかった。





