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【重要】目覚めたらSF世界の提督だった件

異世界……とはいえどこか間の抜けたSF世界に転生したおっさん。

サラリーマンの知識を生かして艦隊を指揮して活躍する。

 【重要】目覚めたら異世界SF艦隊の提督になってた件です――とでもメールを打ちたい気分だ。

 涼井 晴康(すずいはるやす)銀河商事 第三営業課長(35)は思った。

 ――いや、【重要】ではなく、【至急】とでも打つか? 

 涼井は皮肉な笑みをうかべた。

 彼は困惑していた。この状況に。

 

 勤続12年。

 まぁまぁ謹厳実直にやってきたほうだろう。

 冷たいインテリの仮面をかぶって黙々と仕事をしてきた。

 いくつもの困難があった。

 そう、今のように周囲からすがるような目つきで助けを求められることも何度もあった。


(しかし、しかしあんまりではないだろうか?)

 涼井は内ポケットからハンカチをとりだし(無〇良品で購入した無難な品だ)汗を拭いた。

 考えをまとめる時に彼がよくやる時間稼ぎの手だ。


 周囲を見渡す。

 明らかにSFのような光沢と凹凸をもつ、さまざまなモニターや何かのメーターが並んだ50平米ほどの部屋。

 部屋としかいいようがないが天井は高い。

 そして背後には巨大なモニタ……モニタなのだろうか? やけに立体感のある……窓ガラスといっても差し支えないスクリーンのようなもの。

 そしてこちらをすがるような目つきで見ている10人ほどの老若男女。


「提督! ご無事でしたか!」

 うるうると目を潤ませ、20代前半くらいの女性が駆け寄ってくる。

 いわゆるスーツとは違う。女性自衛官が着るようなぴしっとした白いブラウスにスカート、濃緑色のダブルのジャケット。しかし現実に目にする自衛隊や米軍兵士などと違い、どこかゆるい雰囲気がある気がする……。態度だろうか、話し方だろうか。まとめるでもなくさらっとした赤みを帯びた彼女の髪型のせいだろうか。


「……提督?」

 涼井は思わず口にした。

 駆け寄ってきた女性がしがみつかんばかりになる。

「ああ! さっき倒れられてからまだ混乱しているのですね! スズハル提督、おかわいそう……」

「提督! しっかりなさってください。我が共和国の怨敵、リシャール侯の猛攻は止まっておらんのですぞ!」

 こちらも同じく濃緑色のダブルのジャケットにしっかりとネクタイを締めたひげ面の初老の男。


 とにかく全くわけがわからない。

 そして衝撃。


 涼井の体は地面にたたきつけられた。眼鏡がふっとびそうになる。

 しかし案外痛くない。どうも金属にみえた床材はわずかなクッション性を帯びているようだ。

「何が……」


 ぐらぐらと部屋がゆれている。

 そして背後から爆発音。思わず振り返るとスクリーンの中でいくつもの真円状の白く輝く爆発が起こっていた。

 画面の端にちらりと映っていた緑の葉巻型の物体がいままさにレーザーのような光線で貫かれ、同じような輝きの中に消えた。


「いかん! 07戦隊がやられた! スズハル提督! ご指示を!」

「そうです! ご指示を! 我が第9艦隊はどうしたらいいんでしょう?」


 スズハル。

 涼井 晴康という自分の名前を短縮したかのような呼び名。

 明らかに自分のことだろう。

 ――かつがれているのか?

 一瞬思ったがこんな迫真の演技、こうした体験が可能な施設がいま東京にあるだろうか?

 そして涼井は困った部下たちを見捨てることはできない。そういう信条の男だった。


「いいだろう、現状を教えてくれ」

 赤毛の女性がほっとしたような表情を見せる。

「提督、良かったです。スクリーンのほうをご覧ください」

 そういって彼女は近くのコンソールをたたく。

 涼井は立ち上がり、これまで背後にしていたスクリーンのほうを向いた。

 目の前の空中に30インチほどの画面が浮かび上がる。これは明らかに現代の技術では無理なものだ。


(あ、これガチなやつだ……)

 涼井の思いを他所に、青い長方形の物体が左側に、赤い錐のような形状の物体が右側に3つほど現れた。 

 いつのまにか自分の周りに集まっていた10人ほどの軍人風の人々はそれぞれの持ち場に戻ったようだ。

 目の前のスクリーンの下にある座席にも数名座っている。いかにもオペレーター席といった体裁だ。


「この私、リリヤがご説明しますね。ええと、記憶が混乱しているようですから最初から説明しますと……」

 赤毛の女性リリヤが説明をはじめた。


 どうやらこちら側は「共和国軍」で青い長方形であらわされている。

 敵はリシャール侯爵なる人物で、赤く表示されている。楔型の陣形でこちらに猛攻を仕掛けている。

 そしてこちらは著しく戦況が悪いらしい。


「……こちらと敵の数は?」

 営業マンの鉄則。数字をベースに考えること。

「こちらが1万2千隻! 相手は6千隻です!」

 リリヤは自信満々に答えた。

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