プロローグ
「よくぞまいったのです。勇者の方々よ」獅子王の声が響く
俺、斉藤光一は、サラリーマンだ。地方の中小企業に勤めている。会社は、社員50人ほどの小さい会社だが、アットホームで風通しの良い社風は俺にあっている。
す
会社での俺の役職は、総務課総務係長。
総務係長というと凄い業務をこなしているように聞こえるが、この小さい会社では、電球の交換から、経理、クレーム対応まで行う何でも屋だ。
年齢は32才になったが、未婚で彼女なし。ちょっと寂しくも感じるが、楽天的な性格もあり、それなりに楽しくやっている。
休日の昨日も、仲間との草野球、その後打ち上げの宴会と楽しくやっていた。
昨日の夜は野球の疲れもあり、早めに寝ることとした。その寝ているはずの俺の頭の中に声が響く。
「あなたは、別の世界から召還されました。」
徐々に声が小さくなってゆく。
「これから困った事があったら、サポ・・」
と、ここまでしか聞き取れなかった。
変な夢だ。夢の中で考える。それも変か。
しばらく眠ったら、回りが明るくなり、声が聞こえる。
「成功だ!」
「これで世界は救われる。」
「・・」
朝からうるさいなぁと思いつつ目を開ける。
目の前には、ヨーロッパの中世風の服を来た10人くらいの人々が、笑顔で立っている。海外に行ったことがない俺には、外国人が10人も目の前に立っているだけで、プレッシャーだが、さらにヨーロッパ中世風の服を着ているとは、なんのドッキリだ?
両横には二十歳前後の男女が5人が、俺と同じように混乱した様子で、周りを見回している。
頭を抱えようと手を動かしたが、その手は、昨日の夜に見た手よりも、細く日焼けしていた。
さらに混乱した俺の目の前にひとりの人物が進みでる。
年齢は50才くらいに見え、穏やかで小市民的な雰囲気は、職場の上司の鈴木課長を連想させた。
その鈴木課長が言う、
「私はアトランティス王国のリチャード獅子王です。よくぞまいったのです。勇者の方々。」
俺はさらに混乱した。