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竜のコエ、聞く者  作者: 暁月夜 詩音
黄金果実と比翼の銀竜編
6/12

“依頼”

 チリン、と小さな鈴の音をたてて私達は事務所兼家に帰ってきました。師匠は居るようですね。二階から音が聞こえます。


「師匠~! 依頼主を連れてきましたよ~!」

「わかった。すぐに来る」


 そう言われたので、ソファーに双子を座らせておきます。その後に、お茶の準備のために台所へと向かいます。今日は香りがキツくない品種の紅茶を出しましょうか。



 お湯を沸かしながらそんなことを考えていると、師匠が降りてきたみたいですね。ちょうど、お湯も沸いたので紅茶を淹れて運びます。4つありますが、片手に二つずつ持てば運べますしね。




「王様。王様、ボクたちの話を聞いてください」

「ん? 俺は王ではないぞ。空似だろう。それで? 依頼はなんだ?」


 なんで師匠は王様なんて呼ばれたんでしょうか? 師匠はそんな柄じゃないです。もっと強い大樹のような人です。王様にはなれないでしょう。でも、少しだけ似合う気もします。もしかしたら、王様だったのかもしれませんね。


 まぁ、それはないでしょう。だって、師匠も困ったように笑っていますし。きっと気のせいでしょう。




「ワタシは、シィエル。亡き母様が最後に託した『黄金果実』を探して欲しいのです」

「それで? 報酬はどのくらい出せる? モノ探しってんならこんぐらいは必要だぞ?」


 師匠が紙に書いた金額は、ものすごく高いものでした。相場の二倍です。これは、なんでもやりすぎですよ。



「良かった、このくらいなら……前金で半分、渡すのが常識なんです、よね?」

 シィエルちゃんの鞄からは、師匠の言った半分の額が出てきました。こんな大金を持ち歩いているなんて、少し無用心な気がします。でも、それを見て師匠は呆れたような、驚いたような顔をしました。




「俺の負けだ。いいぞ。その依頼を受けよう」

「やったぁ!」

「ありがとうございます!」


 二人は嬉しそうに笑いながら歓声をあげました。余程、嬉しかったのでしょうね。動きは双子だからなのかほとんど一緒でした。




「それで、黄金果実ってのはどういう物なんだ?」

「それが分からないの」


「分からない? 探すものが分からないのに、どうやるんだ?」



 確かに、師匠の言うとおりです。探し物でも探すものが分からなければ、探しようがありません。そんな師匠の言葉に一転、気まずそうに話始めました。



「それが、まったく分からないの。黄金果実って、言うのはワタシ達の村の伝承なのは分かっているけど……」




「なら、師匠! 二人の村に行くしかないですね」

「なんでそこまで……って、目が怖ぇよ。ミユナ。ったく、誰に似たんだか……分かったよ、明日は村に向かうか」


 相場の二倍とった癖に、と睨みながら伝えます。きっと伝わったでしょう。だって、ブルリと震えた後に折れてくれましたから。ふと、外を見ると辺りはもう真っ暗になっていました。これでは、二人を返すのは危ないですね。治安が良いと言っても、何があるか分かったもんじゃないですからね。




「あの、師匠……」

「分かってるぞ? 強く言った後に、頼みづらいんだろ? ったく。客間は二つ空いてるから自由にしろ」


 心を読まれたみたいに、当てられちゃいました。不思議ですね。でも、やっぱり優しい師匠です。普通、見ず知らずの子を泊めたりはしませんよ。何をされるか分かったもんじゃないですからね。




「あの、フルートちゃん、シィエルちゃん。今日はもう暗いけど家にちゃんと帰れる? もし、良かったら。なんだけど、泊まらない?」


「いいんですか?」

「ワタシ達、今日はどこかに泊まるつもりだったの。だから、誰にも心配されないわ」



 渡りに舟と言わんばかりに、食いついてきました。うん、提案して正解でした。依頼主が誘拐された~なんて冗談は洒落にならないですからね。じゃぁ、早速、夕飯の支度をしましょうか。ぱぱっ、と手短に。



「師匠、夕飯を作ってくるので二人と黄金果実のヒント、探してて下さいね」

「あぁ。そうするよ」



 手をヒラヒラさして答えました。その姿を見てから、台所に向かいます。今日は、何を作りましょうか。簡単で、肉を使った料理……


 もう、豪快に焼いてしまいましょう! 肉は少し多目に買っているので二人ぐらい増えても問題ないです。奮発しましたからね。




 ついでに、スープを作りながら私も『黄金果実』について考えてみます。どういったものなんでしょうか。黄金、という程ですので金ぴかなんでしょうか。


 金ぴかだったら、純金とかですかね。後は、金を含んだ魔術鉱石とかですかね。でも、そうすると果実の部分が分からなくなってしまいますし……




※※※





「まぁ、スープはこのくらいでいいですかね?」

 野菜多目のスープを、塩で味を整えておきます。考え事をしていたので、早く作れた気がしますね。まぁ、野菜を切って味付けしただけなんですけどね。それじゃぁ、肉を焼きますか。




 熱したフライパンの上に、薄く脂をひいて一気に入れます! ジュゥッ、と肉の焼ける良い音がしてきます。


 そうしたら、完成です。これを皿に盛り付けて持っていきます。結構、時間がかかったようで空には月が見えました。まだ欠けていますが、もうそろそろ満月になりそうですね。四日後ぐらいは満月ですかね?





 師匠達は、頭を悩ませていました。やっぱり、わからないみたいですね。


「師匠、どうでしたか?」

「やっぱ、こいつらの村に行くしかねぇな。お、今日も旨そうだな」


「それは、どうも。ここで食べますか? 少し狭いですけど、食べられないことは無いですし」


 少し狭いですが、ぎゅうぎゅうになれば皆で食べられないこともないです。いつもは、この机よりも小さいものが上にあるのでそこで食べているのですがね。やっぱり、皆で食べた方が美味しいでしょう。



「ありがとう! えっと……」

「あ、私はミユナ。ミユナ・フォルガード」


「ありがとう! ミユナお姉さん」

 そうでしたね。名前を教えていませんでした。なので、ここで名乗っておきます。私の名前の由来は、たしかミユナという花の名前からつけたそうです。


 白くてちょっとのことでは枯れず、ほぼ永遠に先続ける、と伝承のある花の名前です。





「それじゃぁ、食べましょう!」

「うん!」

「あぁ、食べよう。ミユナ、パンを取ってくれ」


 慌ただしくも、夕食が始まりました。いつもよりも、多くて楽しいものになりそうです。

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