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竜のコエ、聞く者  作者: 暁月夜 詩音
氷結と浄化の青竜編
4/12

“解決”

「ミユナ、そこの竜を連れて洞窟の外に走れ」

 師匠がそう言います。いつもなら、理由を聞きます。それと同時に、どうしてまた隣に居させてくれないのかを聞きます。


 ですが、今回は聞けませんでした。




 本能が反論させてくれません。なので、おずおずとイシュフィードの娘竜についている枷を外します。鍵は《竜が我を破壊するのを禁じる》の意味が籠めた金属を使っているので私が無理矢理破壊して担ぎました。




「手荒になって、ごめんなさい!」

 そのまま娘竜を担いで走っていきます。走って、走って、ようやく入り口付近にまで来ました。枷が外れているので、盗賊が来ても多分大丈夫なはずです。



「私達は、あなたのお母様から頼まれて助けに来ました。師匠がいま応戦してくれているので、もう少ししたらお母様の元に帰れると思いますよ。あの、それと。もし、盗賊が来ても応戦できますか? 私は師匠の所に戻りたいのですが」


「お母様の知り合い? そんなの嘘よ。騙されないわ。どうせ、貴方も密猟者なのでしょ? さっきの男も、貴方も、アイツらもグルで安心した所で売り飛ばすんでしょ!」


 完全な人間族不信になっていますね。まぁ、無理もないでしょう。だって、こんなにも仕打ちをされてきたのですから。でも、ここで逃げられたら師匠に怒られてしまう気がします。




「これは、貴方のお母様であるイシュフィードさんから貰った鱗です」

「っ。お母様の名前を知っているの?」


「えぇ、なので信じて欲しい。なんて言いません。少しだけ待ってて下さい」


「分かったわ。お母様の名前も知っているようだし、信じてあげる。枷の無い私は、そこそこ強いわよ。だから、安心して貴方のお師匠さんの所に行って」


 分かってくれて良かったです。では、またもと来た道を戻っていきます。すると、師匠の声が聞こえてきました。何やら話していますね。それと、小さな呼吸音以外は聞こえません。






「俺はな。お前らに両親を殺さたんだよ。知っているだろ? 200年前、竜王 エリシィナが殺されて竜の大反乱が起きた事件」



「お伽噺話だろ? そんなの。竜を密猟するなって言う。俺達は信じちゃぁいない」



「真実だ。俺は目の前で父である竜王 エリシィナが殺されるのを見た。そして、誓った。お前らみたいな密猟者が居るから、竜は人と交わらなくなった。昔のような世界は消え去った。だから、な? これは俺の復讐だ。実の父、竜王の生き血を浴びて、幽霊となり、死ねなくなった俺のな」




 声が出ません。だって、だって。やっと、本当のことを知れたから。いつもはぐらかして、聞かせてくれなかったのに。




「だから、な?」


「やめろっ! やめてくれ! そ、そうだ。今までの売上、全てを渡す。だから、だから見逃してくれっ!」



「あ? 見逃す訳がないだろ?」



「あぁぁっがあっっっっ!」





 凄い悲鳴が聞こえました。きっと、死んではいないはずです。だって、師匠は約束はしっかりと守るはずですから。



「ん? ミユナか。聞いていたのか? そっか、そっか。だがな、それは聞いたらいけなかった話だ」



 え? 見えない程の勢いで組伏せられました。おかしいですよ。師匠。だって、だって、あんなにも優しい師匠がこんなことをするなんて。


「だから、その記憶は消させてもらう。


 俺は幽霊。今、ここに顕現させる。ここに無く、一時の夢幻で在る。ゆうれ━━」



 聞こえたのは、ここまででした。この時の師匠の顔だけは覚えています。悲しそうな顔でした。でも、強い衝撃を受けたようにふっ、と意識が遠退いていきました。







※※※






「お、起きたか? 随分とまぁ、寝てたな。ミユナ」

「んぐ、師匠?」


 目が覚めたら、昨日の夕御飯を食べた部屋でした。師匠が笑いながら私を見ています。窓からは光が入って来ているので、かなり寝ていたのでしょう。




「あれ? イシュフィードさん達は?」

「あぁ。しっかりと引き渡したぞ。それに、報酬もさっき村長から貰った。後はミユナが起きるだけで出発できる」


 あはは、そうだったんですか。気がつきませんでしたね。やっぱり、こういう時の師匠は手際が良いです。でも、今日はなんだか私を気遣っているような感じでした。


 それに昨日、何かあった気がしますが覚えていません。洞窟に入った所までは覚えているんですが……




「師匠。昨日の夜、私どうしてましたか?」

「ん? あぁ、転移した後に膨大な力に酔って倒れたぞ? 昨日は疲れてたんだな。気が付かなくて、スマン」


 そう言うことでしたか。だから、気を使ってくれたんですね。たまには優しいじゃないですか。前言撤回で、明日からの師匠の苦手な食べ物オンパレードは止めておきますね。




「それじゃ、帰ろうか。ミユナ。今回は報酬を弾んで少しは贅沢はできるぞ?」

「この前もそう言って、調子に乗ったじゃないですか。ほどほどに、してくださいよ!」



「後は、帰るだけだな」

 よいしょ、と師匠が立ってまだ座っている私を見ています。そう言えば師匠はどこで寝たんでしょうか? 部屋はここしかないはずです。って、ことは師匠と同じ部屋で寝たってことですか!




「ん? どうして、ミユナ。そんなに顔を赤くして。あ、もしかし━━」

「ほ、ほら、帰りますよ! 師匠。何日も家を開けているんですよ。帰ったら大掃除ですからね!」


 師匠はケラケラ笑って、部屋から出ていきました。それに私も続いていきます。あ、ちゃんと寝ていた毛布は畳みましたよ?








 それじゃぁ、師匠の事務所兼私達の家に帰りましょう! まぁ、私は居候なんですけどもね。

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