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竜のコエ、聞く者  作者: 暁月夜 詩音
黄金果実と比翼の銀竜編
12/12

“その後”

 私達は、二人を連れて宿に戻ってきました。二人をベッドに寝かせて、近くのソファに座って黄金果実を見ていました。



「ミユナ、解析が終わったぞ。コイツの過去を聞きたいか?」


「そう、ですね。聞きたいです。どんな過去だったとしても」




 師匠は私の言葉を聞いた後に、そうか。と呟いて話始めました。それは、恐ろしい話でした。



 師匠が言うには、この黄金果実は呪いの石だそうです。効果は人の寿命を伸ばすこと。ですが、これを取り込んだ生き物はある一定の周期で人間を食べなければいけなくなるそうです。

 恐らく、記憶がないだけで何百もの人間をあの双子は食べていたのでしょう。



 それと、あの双子は竜なんだそうです。まだまだ幼いようですが。二人で一体という、珍しい個体なんだそうです。

 一体では空を飛ぶことも出来ないですが、二人でならどんなことだってできる、比翼の竜。



 最後に、この事は秘密な? と言って師匠は話を終わらせました。誰も知らないことは、無いことと同じですから。





「んぐ…………」

「んにゃ………」

「起きましたか。大丈夫ですか?」


 二人ともほぼ同時に目を覚ましましたね。やっぱり双子だと一緒なんですかね? 二人とも目を覚ましてから、少しだけぼぅ、としていますね。



「二人とも起きたばかりで悪いが話がある」

「ちょっと、師匠っ! 早すぎますよ」


 さすがに今からは、辛そうじゃないですか。また明日の朝ではいけないんですか? 師匠の目を見ると真剣な顔でした。

 なんだか、今じゃないといけないような気がしてきます。



「大丈夫だよ。ね?」

「うん。ボクも」


「そうか。なら、最初に。依頼は達成した。これが求めていた黄金果実だ」


 ゴト、と机の上に黄金果実を置きました。それを二人は食い入るように見ています。でも、これが本物かどうかなんて分からないですよね? だって、見たこともないのでしょう?





「本当だ。本物の黄金果実だ……ありがとう」

「まて、どうして本物だと分かる? 俺が嘘をついている可能性だって……」


「それは無いよ。だって、これを触った時に本物だって、心が言ったもん」


「そうか。ならもう、何も言わない」


 ならばこれで、依頼は達成ですね。一瞬だけどうなることかと思いましたが。万事上手くいって良かったです。






「お前達について、話しておく。自覚がある、ないは置いておいて、二人は竜だ。二人で一体の竜になる、言うならば比翼の銀竜」


「なんとなく、そんな気はしてたわ」

「うん。ボクも。だからね、気を使わないで大丈夫だよ」


 ニコッと笑って二人が答えました。どうやら、大丈夫みたいですね。ショックを受けているような様子はありませんし。





「なら、これで依頼は達成だ。俺たちは明日の朝。ここを出る。お前達がどうするかは、二人で話し合って決めろ。分かったな?」


「うん、そうするよ。ね?」

「えぇ。そうね」



「ミユナ、俺達の部屋に戻るぞ」

「はい。師匠」



 私達は、二人の部屋を出ていきました。後ろを振り返って二人を見ることはまだできませんでした。




「師匠。これで良かったんですか?」

「ん? 何を気にしている?」


 やっぱり、なんだかモヤモヤします。だって、あの二人は真実を知っていないじゃないですか。ただ、黄金果実を渡されて、自分達が竜だと言われただけじゃないですか。




「何を言っている? 俺達は『黄金果実を探すこと』が依頼であって、その後のことは依頼されていない。見知っているから、と言ってアレコレ手を尽くしてはいけない。それが、俺のポリシーだ」


「なんだか、やっぱり釈然としません……」




「それなら、ミユナが自分の事務所を開いた時に己の正しいと思ったことをしてやれ」


 そう言うと口を閉じてしまいました。



 私が事務所を開く時、ですか。そりゃぁ、師匠だって人間ですからいつかは死にます。でも、やっぱり、嫌ですね。ずっと一緒に居たいです。




「なら、私が開いた事務所に、師匠を引き抜きに行きますからね」

「そりゃ、大変だ。俺はミユナをミユナ所長と呼ばなきゃならんのか……」


 声を上げて笑った所長の顔を見て、なんだかそんな未来は無いように思えてきました。




「魔術師は竜の感情(コエ)を聞く者だ」

「えぇ、知っています。その言葉は、幽霊と同じぐらい聞き飽きましたよ」




「それなら、大丈夫だ。明日からも依頼を受け付けるさ。それじゃ、おやすみ」

「はい。おやすみなさい、師匠」


 そう言って、微睡みの中に沈んでいきました。







※※※







「では、本当にありがとうございました!」

「あぁ。お前達も元気にな」



「あの、最後に聞いて! ワタシ達は旅をする事にしたわ。たくさんの人を助けて、色んな経験をしていくことにしたの」


 それはとても良いですね。きっと、たくさんの宝物が見つかると思います。一つ一つが大切な思い出です。





「そうか、ならば。沢山の出会いを、経験を積んでこい!」

「楽しかったですよ。フルートちゃん、シィエルちゃん。私達の事務所を訪ねてくださいね。また、遊びましょう!」



「うん! いつか必ず寄るよ」

「もっと旅先の話を期待しててね! ミユナのお姉ちゃん!」




 別れ少しだけ、寂しいですけど。ここでお別れですね。この二日間とても楽しかったです。初めてお友達ができた気分ですね。




「よし、帰るか!」

「はい。師匠!」

 帰り道は、転移で帰ります。馬車を捕まえることが出来なかったので。




「俺は幽霊。魔導空間の守人なり。今、ここに顕現させるは、我が領域。ここに在り、ここに在らず。一時の夢幻で在り、現実でも在り。幽霊は望む場所へと姿を顕す」

 慣れない感覚と共に、事務所に帰ってきました。行きよりも呆気ない帰り道ですね。











「あっ。しまった、依頼達成の金貰うの忘れてた!」

「って、師匠。普通の倍の金額を提示してたじゃないですか。適正価格ですよ」


 少しだけ締まらないですが、これで本当に終了ですね。









はい。暁月夜です。

これにて、「黄金果実と比翼の銀竜編」は完結です。

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