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真紅のピンピール
艶めかしい真紅のピンヒール。
個人的には30デニールくらいのパンストを履いていた方がそそるが、それくらいは妥協しよう。
何より適度についた筋肉、無駄な肉のない、すらっと伸びた白い脚が、夜道に消えかけそうな真紅を引き立てる。
色白で身長もヒール合わせて170をゆうに超えるだろう彼女は、襟足を短めに切ったショートカットで、長い前髪からは綺麗な瞳が覗いている。口紅を塗っているのか、艶々した唇は思わず塞ぎたくなってしまうくらいだ。
ここまでは完璧だった。
この足の持ち主の彼女は、大きめのTシャツにパーカーをはおり、ダラっとしたサルエルパンツを履いているのだ。
ピンヒール、そして彼女の美しい容姿には似つかわしくないこの格好。
普通なら変な輩に絡まれても不思議ではないが、そんな、格好をしている彼女を見た男達は、残念そうに目をやって通り過ぎるのだ。
ここでひとつ訂正しておこう。
私が今まで説明した中に、ひとつだけ間違いがある。
この、残念美人なお方は私の務めるお店のリーダーだ。
名は「月宮 歩」。
れっきとした男である。