深酒はよくない
息を切らして部屋に入ってきたのは、ピンクのドレスを着たドリスだった。
「ぜー、ぜー! 間に合ったのじゃ!」
「おっ、ドリス! 来たのか?」
「海彦ひどいのじゃ、妾をおいてくなんてー!」
「悪い、悪い。いつ来るのか分からなかったから、出発しちまった。まあまあ、駆けつけ三杯」
俺はごまかしながらビールを大ジョッキに注いで、ドリスに手渡した。
文句を言いながら、ドリスはビールを一気に飲み干す。
やはりドワーフは酒に強い。一般人はまねてはいけません。
ドリスと俺もまざり、エリックさんに写真を撮ってもらう。
「撮るぞー!」
「はーい!」
俺も女達に話しかけながら、ビールを飲む。
生活費を切り詰めるのに必死だったので、飲み会に参加したのはほんの数回、もちろん合コンの経験もない。
こういう宴会なら良いなと思っていたら、時間が経つと場が荒れてくる。
飲んだら七癖とはよく言ったもので、俺は酒乱女にからまれていた。
「ほらん海彦、口移しで飲ませてあげるわん」
「お兄ちゃん! 私の酒が飲めないっていうのー!」
「はいはい」
ハイドラとロリエは特にひどかった。
フローラは泣きじゃくり、何を言っているか分からない。
ミシェルは愚痴をこぼして、雅はハイテンションで笑っていた。
リンダはいびきをかいて寝ている。これはもうお開きにすべきだった。
エリックさんも気づき、メイド達を呼んで女達をかつがせて寝室へと運んだ。
「すみません」
「いやいや、思い切り騒ぐことも人生には必要じゃよ。ため込んでいて良いことはない」
「ですね、それじゃー俺も休みます」
「うむ、儂も寝るとするか」
こうして全員が出ていった後、一人忘れられたドリスは朝まで飲んでいた。
次の日、女達は誰も起きられない。頭を抱えて、ウンウンうなっている。
二日酔いでダウンしており、ロリエの作った酔い薬を飲んで寝ているほかはなかった。
俺も飲んだが酒量はおさえたので、悪酔いはせずにすんだ。薬も効いて午後には回復する。
ベットから起き上がり体操をしてると、エリックさんに誘われて一緒に昼食をとる。
昨晩とは打って変わり、ラフな格好をしていた。
半袖シャツにベストを着て、ズボンにはゲートルを巻いている。腰には赤布の腹巻き。
王様じゃなくて、まるで海賊である。
結構サマになっており、主演俳優として映画にでられそうだった。
食後、俺は思わず聞いてみる。
「軽装じゃ危なくないですか?」
「城には騎士はおるし、街中で襲ってくるような輩はおらんよ。かえってマントやゴテゴテした服を着とったら、とっさに動けん。王冠も重いだけで首が痛くなる。式典の時だけ仕方なく正装しとる」
「なるほど。あと王様が亜人の村に、直接行かれるのはなぜですか?」
「使者を何度も行き来させるよりは、儂が族長と話をつけた方が早い。というより玉座に座って威張ってるのは性に合わんし、どうしても外に行きたくなる。女房には心配させとるがのー」
「ははははは!」
ようはアウトドア派なのだ。娘の雅も似たのだろう。
俺も同じなので好感がもてる。
「それで海彦殿、この後の予定はあるかな?」
「デジカメで撮った写真を印刷したいので、一旦クルーザーに戻りたいですね」
「ならば馬車で送っていこう。ついでにアルザスの街を案内しよう」
「助かります」
「じゃが、儂らが姿を見せたらまず騒がれるな、二人で変装することにしよう」
お忍びで歩くため、エリックさんはカツラと髭をつけて、いつもの毛むくじゃら姿になった。
俺も勇者として面が割れているので、顔を染めてターバンをかぶりインド人になった。
シーク教徒じゃねーぞ!




