表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第三章 湖めぐり旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/243

勇者に頼るしかない

 もう一人の少女は泳ぎながら、魔法で戦っていた。


 獣耳けもみみ少女をサポートし、「影」の注意を引きつけながら泳いでいる。


 速い!


 それもそのはず、彼女は人魚マーメイドである。下半身は魚であり尾ひれがあった。

 使う魔法も水圧で敵を押しつぶすことができるのだが、これも「影」には効いておらず、当たった水は弾かれていた。


「くっ!」


 二人は協力して、「影」と何度も戦っているが全敗。

 いつも命からがら退散していて、生きているのが不思議なくらいだった。


 今回も旗色は悪い。全力で戦うだけで、攻め方もワンパターンなので意味がない。

 身体能力はあるが、策というものを知らなかった。

 軍師か参謀役がいれば、また違った戦い方が出来ただろう。


「はあ……はあ……」


「ふう……ふう……」


 やがて体力・魔力を使い切り、二人の息は荒くなる。

 動きが遅くなったところに、「影」からの攻撃をくらう。

 

「あがっ!」


 たった一撃で獣耳少女は吹っ飛ばされ、はるか遠くへ飛んでいく。

 ダンプカーに衝突したようなものだ。

 体が頑丈なので死んではいないが、空中で気を失っていた。


「あ……ちゃーん!」


 人魚は泳いで追いかけて助けにむかう。こうして今日も負けた。

 敵である「影」は気にした風もなく、魚を捕って食っていた。



 人魚は水に落ちた獣耳少女を見つけ、沈む前に背中に乗せる。

 そのまま泳いで湖のほとりへと向かい、やがて湿地にたどり着いた。

 すると、尾ひれは二本の足に変わり人魚は歩き出す。


 童話のように薬を飲んだ訳ではなく、魔力で尾を変化へんげさせたのだ。

 声も出せるし足が痛むこともない。一応、陸地でも生活はできる。


 普段は水のある洞窟で暮らしているが、人魚は女性しかおらず人間や亜人の男と交わって、子供を作っていた。


 年頃になると陸に上がって誘いをかける。決め台詞は、


「お兄さん、お兄さん、私といいことしなーい?」


 素っ裸の美人に言われて、落ちなかった男はいない。理性も軽く吹っ飛ぶ。

 こうして人魚族は子孫を残していた。


 人魚は獣耳少女を背負ったまま、密林ジャングルの奥に向かい、葉っぱのある場所に獣耳少女をそっと寝かせた。


 二人の住処すみかであり、一緒に暮らしていた。

 気絶したままの獣耳少女に、人魚は大声で呼びかける。


「アマラちゃん! アマラちゃん! しっかりして!」


「うっ! シレーヌ……」


「良かったー!」


 獣耳少女が気がつくと、人魚は抱きついて喜ぶ。

 二人は親友であった。


 洞窟に迷い込んだアマラが、シレーヌと偶然に出会って友達になったのだ。

 その後、二人は食べ物を持ちよって会うようになる。

 アマラが獣肉を、シレーヌが魚を、捕った獲物を一緒に食べるのだ。


 こうして二人は人知れず、楽しい日々を過ごしていたのだが、異変が起きる。


 湖に神怪魚ダゴンが現れたのだ。


 一番被害を受けたのは人魚族である。水は深緑色の瘴気ミアスマに毒され汚れてしまう。

 こうなると湖に住むのは危険で、陸地に逃げる他はなかった。

 心良く受け入れてくれたのは獣人族である。

 アマラとの縁もあるが、代々それなりに友好関係を築いていたのだ。


 親友を助けるべく、巫女たるアマラは神怪魚と戦うことにした。


 獣人族の長老からは猛反対されたが、同じ巫女のシレーヌと一緒に村から飛び出してしまう。


「アマラが神怪魚を倒す!」


 とは言ったものの、未だに勝てずにいた。

 努力や根性でどうにかなる相手ではなく、二人の見通しは甘かった。


 かといって村に戻る気はない。啖呵たんかを切ったからには意地もある。

 アマラは気絶してる間、女神の啓示をうけていた。


「……女神ニュクス言った。『勇者に頼れ』と……」


「え! そうなんだ!? 私に女神様のお言葉はなかったなー」


「そうか……だが勇者どこにいる?」


「姉様達に聞いたことがある。きっと人間の国にいるよ。一緒に行って見ようアマラちゃん。勇者様に頼んでみよう!」


「アマラ分かった。シレーヌと人間の国に行く」

「うん!」


 少女のように見えるが、二人は成人女性だった。ただ精神はまだまだ幼く知識もない。

 こうして二人はアルザスへと旅立つ。

 海彦はまだ知らない。新たなる嫁候補が近づいてることを……。


◇◆◇◆ 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ