表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第三章 湖めぐり旅
87/243

一人になって休みたい

「もうすぐ一番近いオークの村まで線路は届く。皆やる気があるからのう。あと仕事を終えた後のビールが美味い。これはやめられんわ!」


「ははははは、なるほど」


 秋から冬にかけて、ビールは各村で作られるようになっていた。

 果実酒は材料が少ないので大量には作れなかったが、大麦は自生している物もありたくさんとれた。

 これを使わない手はなく、男達は真剣にビール作りに励む。

 テレビもない世界では、酒は一番の娯楽である。


 味にもこだわり始めて、麦を焙煎ばいせんした黒ビールも作られた。

 瓶詰めされたビールは毎日配られても、次の日には空きビンになる。


 虎だ! お前は虎だ! 大虎になるのだー!


 亜人達は男女問わず飲んべえと化した。子供は飲んではいけません。

 

 ガラスに関しては人間の王国で作られていると、チャールズさんから聞いた。

 現在の王様が地球の技術を持ち込んだらしい。モルタルもそうだ。

 異界人であれば、なんら不思議はない。いずれ会うこともあるだろう。


 話が変わり近況を聞くと、


「えー! チャールズさんしばらく家に帰ってないんですか? 大丈夫なんですかー?」


「うむ、線路工事で遠くまできてるからのう。いちいち帰るのが面倒だから、車両を住まいにしとる。職人達も一緒じゃよ。ドリスに会えんのは寂しいが、カカアの我が儘は聞き飽きた。仕事をしとる方が楽しいわ」


「なるほど……」


 俺はシミジミと考えさせられる。結婚生活は楽しいことばかりではないな。

 何百年もの年月を連れ添うかと思えば気が遠くなる。

 夫婦関係が続いているだけでも凄いと思う。たまに離れたくなる気持ちも分かる。


「親方、電話です」


「おう!」


 一人のドワーフが電話を運んできた。戦争時の通信兵のようにケーブルを背負っている。

 電話も野戦電話のようでかなり大きい。バッテリーを積んでいるからだろう。


 携帯電話には劣るが、何もないところから電子機器を作り上げたのだから、ドワーフは物作りの天才である。


 何よりちゃんと動いてるので、遠くにいる人と連絡するのに、電話以上のものはない。

 伝書鳩や伝令による伝達では時間がかかりすぎるし、失敗することもある。


 ……ただし、楽しい会話ができるとは限らない。


「あー、儂じゃ……!」


『アナタ! いつまで工事してるんですか!? 冷蔵庫はどうなったの!? さっさと作りなさい!』


 奥さんの怒鳴り声がこっちにまで聞こえてきた。

 チャールズさんは、顔をしかめて受話器を遠ざける。

 まさか電話をかけてくるとは、思ってもみなかったようだ。

 もう面倒くさいので口喧嘩せず、最初から白旗を上げている。


「わかった、わかった! 明日には帰る」

『あんまり遅いと、機関車でそっちにいきますからね!』


 ガチャン、と電話が切れてチャールズさんはため息をついた。


「うーむ……遠くに逃げても機械があると、奥さんからは逃げられんなー。便利なのも考えものだなー」


「あんたが機械を広めたからよ。世の中狭くなったわ」


「そうねん。私も電動バギーでどこにでもいけるわん」


「うっ……」


 二人に言われて、俺は何も反論できなかった。


 やっぱり俺のせいか? 今更どうしようもない。


 取りあえず、荷台に積んである枕木を降ろすことにする。


 鉄道を敷くのに各村からも資材が送られ、駅の工事も進められていた。

 降ろす作業もクレーン車のお陰ですぐに終わる。


 これが人力だけなら、重い木材を動かすだけでも大変だ。腰を悪くする。

 やはり機械に頼るしかなく、もう生活にはかかせない。

 作業を終えて、俺達はチャールズさんに別れの挨拶をし、この場を去った。


 街道に戻るとヘカテーの湖が見えた。水面みなもに光が反射して輝いている。

 やはり美しい湖だ。これに勝る景観はない。


 しばらく進んでから、俺は荷台から降りることにする。


「ここらでいい。送ってくれてありがとな、ハイドラ」


「うー海彦、名残おしいわん。また来てよん」


「…………」


 フローラは何か言いたそうな顔をしていたが、俺は手を振ってクルーザーに向かった。

 いつものように二人を船に入れる気はなく、俺は一人になりたかった。


 結局、冬の間中ドタバタしたので流石に疲れました。


 遊びまわったせいもあるが、休んだ記憶が全くない。寝不足だ。


 しばらく寝て過ごします……と思っていたのだが、新たなる厄介事(イベント)がクルーザーの中で、俺を待ち受けていた……。

変化のない日常物語ではありませんので、主人公を休ませる気はありません。


楽人「冬は終わりだ。さあ冒険をするんだ、海彦!」

海彦「ふざんけんなー作者! とっとと俺を日本に帰せー!」

楽人「そうはいかん、話はまだまだ続くんだ。お前が帰ってしまったらこの物語は終わる」

海彦「だったら、終わらせろー!」

……以上、話し合いは平行線のままのようです。脳内ニュース。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ