雪だるまを作って悪だくみするしかない
「そーれ!」
俺はスコップで雪かきをしている。冬一番の仕事だ。
ほっとけば、道も家も埋もれてしまうので、みんなでやるしかなかった。
除雪機械はまだなく、今のとこは手作業なので大人達は嫌々やっている。
俺は楽しい。
何せ雪が降らない所に住んでいたので、珍しくて仕方ない。
俺は子供達と一緒にはしゃいでしまい、雪合戦をして雪だるまを初めて作った。
「完成だ!」
「わーい!」
この雪だるまが一騒動を起こすとは思わなかった。
「おおっ!」
雪像はエルフ達にとって初めて見るもので、かなりの衝撃をうけたようだ。
そう大したものでもないのにね。
毎日の生活が忙しければ、芸術に目を向けてる余裕はなかったのかもしれない。
ヘスペリスに彫刻や絵画などは見当たらなかった。
今は機械のおかげで、ひまな時間はある。
こうして雪祭りではないが、雪像ラッシュが始まってしまう。
最初はみんなまともな物を作っていた。身近にある鳥や魚に森の動物などだ。
……しかし、人を作り出すと方向性が怪しくなる。
「裸婦像じゃねーか! しかもUMEEEE!」
やっぱり、エ○系統にいきやがった。
女性達も「裸夫像」を作って喜んでいるから始末が悪い。
そんでもって、俺をモデルにするなー!
だんだんポーズが過激になっていき、子供には見せられません。
お前ら、日本だったら猥褻物ちんれつ罪で捕まるぞー!
そんな中、男達はコソコソと動き回っていた。辺りを気にしておりかなり怪しい。
女達に見つからないように、紙切れを手渡しており、メモを見た者は次の男に渡している。
気づかれそうになったら、破いて捨てるだけだ。
「ふっふふふふふ……」
それを見ながら、俺はほくそ笑む。
何を隠そう、悪巧みを思いついたのは俺である。
ピカレスクロマンではないが、悪いことをしたくなるのも人の性だ。
ただし、それは他人に危害を加えるものではなく、ルールを破る「悪戯」のようなものである。
まあ女達にバレたら、まず許してもらえない。
最初に一番信用できるエルフ男に話をもちかけて、俺は同志を増やしていった。
そして、ほとんどの男達が仲間となる。乗ってこない者はいない。
決行の日は近い。
ホビット村に俺が移動する前日の夜、エルフ村での最後の映写会を終えた。
「本日の上映は終了しました。皆様、お気を付けてお帰りください」
俺はマイクで場内アナウンスをしながら、ワイヤレススピーカーから「蛍の光」を流す。
スピーカーに内蔵されてる音楽はかなりあり、合図や時間つぶしに使っている。
「面白かったー。あー、もっと見たいなー」
エルフ達は席を立って、出入り口へと歩きだす。
名残おしいのは分かるが、エルフだけを依怙贔屓するわけにはいかなかった。
他の村の亜人達も、映画の上映を待っている。
ふっ、俺はしがない旅芸人。
風の吹くまま、気の向くまま、お呼びとあらば即、参上!
と格好をつけたが、移動紙芝居と変わりない。水あめは売ってません。
残った俺は、片付ける振りをしながら準備をする。
エルフ達は家にかえり、やがて寝静まる。
……草木も眠る丑三つ時、男達はコッソリと起きて動き出す。
フード付きマントをつけて、怪しい集団にしか見えない。
ランタンも持たず、雪明かりをたよりに映画館に戻ってきていた。
入り口には、もぎりならぬ見張りがおり、来た者を順番に確認している。
「山!」「川!」
「鳥!」「魚!」
合い言葉を知らぬ者は中に入れない。そんな奴はいないが、念のためだ。
真っ暗な映画館に大勢の男達が集まると、俺はプロジェクターの電源をいれた。
そして懐から、ある秘蔵円盤を取り出す。十八禁です。
いよいよ、深夜の特別上映会が開かれようとしていた。




