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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第三章 湖めぐり旅

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みんなで映画を見て楽しみたい

 異世界定番のボードゲームは、すでに教えて流行はやらせた。


 オセロ・チェス・囲碁・将棋は亜人達に大うけする。娯楽がなかったから無理もない。


 それとは別に、もっと大勢で簡単に楽しめる物があった方がいい。


 そこでクルーザーからある物を持ち出し、族長達を集めて見せると、


「これは! 雪が降る前に増築せねば!」


「うちは、……館を新築する!」


「うむ!」


「ひょひょひょ、なかなかおもろいわい」


 いつのまにかホビットの婆も現れて、ちゃっかり見ていきやがった。

 こうして各村で準備がすすみ、冬前には専用の建物は完成していた。

 

 俺はエルフの村につくと、ロビンさんの家に向かった。

 地面は見えなくなり、雪を踏みしめながら歩く。


 外にエルフ達は見当たらないが、家に帰ったわけではなく、増築された族長宅に集まっていた。

 中には二百人以上いるだろう。


 俺は正面玄関には行かず、外階段から二階へと上がる。

 真新しいドアを引いて開けると、エルフ達が一斉に振り向いて騒ぎだす。


 広い空間は薄暗く、所々にランタンがともされており、何とか中の様子が見られた。


 一階は階段に椅子が並べられており、奥に行くほど低くなっている。

 最前列にはクッションが置かれて、前の人の頭が視界の邪魔にならないようにしてある。


 下はもう満席で、二階には椅子はなく全員立っていた。

 室内は人の体温で温まっており、冬でも暖房はいらない。


「海彦、早く早く!」

「おう、待ってろ」


 待ちかねてるエルフが、俺をかす。

 機械のスイッチを入れると、正面の白い壁に青色の長方形が映った。


 その大きさはざっと三〇〇インチ、かなりデカい。

 俺が開始を告げると、ランタンの明かりが消され歓声が上がる。


「これより第一回、映写会を始めます」


「おおおおお!」


 俺はポータブルプレーヤーを操作して、DVDを再生させた。

 するとプロジェクターから映像がスクリーンに投映され、ワイヤレススピーカーからは音が出る。


 映画の上映である。族長宅はミニ映画館シアターになっていた。



 秋に船で、ポータブルプレーヤーを見つけた時に、


「うーん、俺一人だけで映画を楽しむのは悪い。みんなに見せられないかなー……」


 と思っていたら、クルーザーにはプロジェクター一式がそろっていたのだ。


 8K対応の最新式、ほんとに何でもある船だ。不思議だなあー。


 DVD・ブルーレイソフトも三〇〇枚以上あり、あらゆるジャンルが楽しめる。

 プロジェクターを動かす蓄電池バッテリーは、作られた発電機で充電できる。


 精霊さんいつもすみません。


 こうして、みんなに映画を見せることができた。


 エルフ達は食い入るように映画を見ており、ときどき声が上がる。

 かなり興奮して楽しんでいるようだ。みんなが満足してくれれば、それでいい。


 見せているのは「星戦争」という宇宙SF物、観客達の反応は良かった。



 それから、一日の上映は四、五回に決めて交代で映画観賞することになる。


 流石に村人全員は映画館に入らないので、ジャンケンで順番が決められていた。

 俺もプロジェクターの操作は毎日はやらない。疲れてしまう。


 そこでフローラや他のエルフ達に、機械操作を任せることにした。

 円盤ディスクをセットしてボタンを押すだけなので、子供でも覚えてしまう。

 その間に俺は知識を教える仕事をしていた。


 映画館は連日大盛況。


 子供達は幼児向けアニメを見て、かなり喜ぶ。


「うおおおおおおー!」


 変身ヒーロー物や怪獣物となれば大騒ぎだ。上映中は静かにしましょう。


 女性達にはやはり恋愛物がうけた。古今東西、亜人でも好む物は同じ。


 唯一うけなかったのは、ファンタジー物である。


 似た世界ではあるがヘスペリスとは微妙に違うので、気に入らなかったらしい。


「あんな魔法なんてないよー」


「ドラゴン、なにそれ美味しいの?」


 なぜか時代劇チャンバラは、かなり評判がいい。


「オー! サムライ、ニンジャ、ゲイシャ、ハラキリ、HAHAHAHA!」


 お前ら、日本かぶれの外国人か!?


 子供達は役者をまねて遊ぶようになってしまった。これでいいのか?

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