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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

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見張り台から子供が見えたので助けにいくしかない

 ロビンさんが剣を振り下ろすと、ゴブリンは袈裟斬けさぎりにされて倒れる。


 アランさんが矢で眉間を撃つと、やじりが後頭部から突き出てくる。


 チャールズさんは戦斧で、ゴブリンの首を斬り飛ばした。でたらめな強さである。


 その中でも圧倒的だったのは、オークのオグマさんであった。


「ありゃー、チートキャラだわ……」


 身の丈ほどもある重そうな巨剣を、片手で振り回しゴブリンを蹴散らす。

 防御は意味をなさず、武器ごと吹っ飛ばされていた。


 キックを繰り出せば、ゴブリンの体が千切れ飛ぶ。武器無しでも滅茶苦茶強い。


 後、珍しく口を動かして喋っている。ココからでは聞こえないのが残念。

 オグマさんの、「うむ」以外の言葉を聞いてみたいものだ。

 

「いやーまさに修羅場だな、血と肉片が散乱してる。味方は誰もやられてないし、これは楽勝だな」


「パパ達だけで片が付きそうねん……あっ!」


「どうしたハイドラ!?」


「向こうに子供がいるわ! ゴブリンも!」


「なに――――!」


 俺は慌てて、ハイドラが指さした方向を探すと――いた!

 鉱山からは少し離れた森に、別なゴブリンの集団が動き回っていた。


 ドワーフの子供らは上手く隠れており、まだ見つかってはいない。

 遠くに遊びに出かけたせいで、恐らく逃げ遅れたのだろう。


 男の子と女の子の二人は、ボールを持ったまま震えていた。


 助けねば!


 俺とハイドラは見張り台から素早く下りて、待っていたフローラ達に状況を話す。


 族長達を呼び戻してる時間はない。俺達で助けに行くしかないのだ。


「ハイドラ、三輪バギーを出してくれ! 俺達は荷車に乗る!」


「みんなは運べるけど、速度を上げてパワーを出すとモーターが焼けちゃうわ。急がないとまずいし、どうしよう……」


「それなら手はある! フローラ頼む!」


「分かったわ!」


 俺は一言だけいい、出発の準備を急いで整えた。荷車に四人と二匹が乗りこむ。

 犬はいるのか?



「とばすわよん!」


 モーターが唸りを上げ、バギーが加速する。

 俺達は振り落とされないように、荷車につかまっていた。


 案の定モーターは加熱して、煙を出し始める。


「シルフよ、風をふかせたまえ!」


 フローラが風精霊を召還して、モーターに風を送ると熱が逃げていく。

 これで心置きなく、ハイドラはバギーを走らせることができる。


「なるほどな、魔法による空冷。あたいの蒸気機関にも使えるわ。さすがだわ海彦」


「どんな動力でも動かし続ければ熱を持つからな、水冷が一番いいんだがシルフでも十分冷却できる。俺も魔法が使えたらなー、叔父のボロ船の故障は減っただろうに」


 何度もバラしたので、俺はエンジンには詳しくなっていた。

 船が止まるたびに直すのは大変だった。


「もっと、もっと、もっと頂戴! フローラ!」


「変な言い方で催促さいそくするなー!」 


 ハイドラはバギーを飛ばして、調子に乗っている。完全に女暴走族だ。

 通常の三倍の速さは出てるだろう。俺達は荷車に必死でしがみつく。


「もうすぐ着くな、何とか間に合いそうだ」


「ドワーフ族を代表して感謝するのじゃ、海彦がいなかったら……」


「まだ礼を言うのは早いぞ、ドリス。子供達を助けてからな」


「そうじゃな!」


 ドリスは可愛らしく笑った。

 犬達が荷車から先に飛び降り、ゴブリンに飛びかかる。


「ガウッ!」


「ンギャ!」


 ゴブリンの腕に噛みついたかと思えば、ヨーゼフはそのまま捻って骨を折ってしまう。


 パトラッシュは骨をかみ砕く。ゴブリン達は悲鳴を上げていた。


 犬TUEEEE――!


 ……そうか、犬達は俺の護衛をしてくれていたのか。たぶんドリスの命令だろう。


 スキンシップはかなり痛かったが……。


 ハイドラはバギーを止めて、俺達は荷車から下りた。

 全員武器を構えてゴブリンに立ち向かう!


「いくぞ――――!」

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