見張り台から子供が見えたので助けにいくしかない
ロビンさんが剣を振り下ろすと、ゴブリンは袈裟斬りにされて倒れる。
アランさんが矢で眉間を撃つと、鏃が後頭部から突き出てくる。
チャールズさんは戦斧で、ゴブリンの首を斬り飛ばした。でたらめな強さである。
その中でも圧倒的だったのは、オークのオグマさんであった。
「ありゃー、チートキャラだわ……」
身の丈ほどもある重そうな巨剣を、片手で振り回しゴブリンを蹴散らす。
防御は意味をなさず、武器ごと吹っ飛ばされていた。
キックを繰り出せば、ゴブリンの体が千切れ飛ぶ。武器無しでも滅茶苦茶強い。
後、珍しく口を動かして喋っている。ココからでは聞こえないのが残念。
オグマさんの、「うむ」以外の言葉を聞いてみたいものだ。
「いやーまさに修羅場だな、血と肉片が散乱してる。味方は誰もやられてないし、これは楽勝だな」
「パパ達だけで片が付きそうねん……あっ!」
「どうしたハイドラ!?」
「向こうに子供がいるわ! ゴブリンも!」
「なに――――!」
俺は慌てて、ハイドラが指さした方向を探すと――いた!
鉱山からは少し離れた森に、別なゴブリンの集団が動き回っていた。
ドワーフの子供らは上手く隠れており、まだ見つかってはいない。
遠くに遊びに出かけたせいで、恐らく逃げ遅れたのだろう。
男の子と女の子の二人は、ボールを持ったまま震えていた。
助けねば!
俺とハイドラは見張り台から素早く下りて、待っていたフローラ達に状況を話す。
族長達を呼び戻してる時間はない。俺達で助けに行くしかないのだ。
「ハイドラ、三輪バギーを出してくれ! 俺達は荷車に乗る!」
「みんなは運べるけど、速度を上げてパワーを出すとモーターが焼けちゃうわ。急がないとまずいし、どうしよう……」
「それなら手はある! フローラ頼む!」
「分かったわ!」
俺は一言だけいい、出発の準備を急いで整えた。荷車に四人と二匹が乗りこむ。
犬はいるのか?
「とばすわよん!」
モーターが唸りを上げ、バギーが加速する。
俺達は振り落とされないように、荷車につかまっていた。
案の定モーターは加熱して、煙を出し始める。
「シルフよ、風をふかせたまえ!」
フローラが風精霊を召還して、モーターに風を送ると熱が逃げていく。
これで心置きなく、ハイドラはバギーを走らせることができる。
「なるほどな、魔法による空冷。あたいの蒸気機関にも使えるわ。さすがだわ海彦」
「どんな動力でも動かし続ければ熱を持つからな、水冷が一番いいんだがシルフでも十分冷却できる。俺も魔法が使えたらなー、叔父のボロ船の故障は減っただろうに」
何度もバラしたので、俺はエンジンには詳しくなっていた。
船が止まるたびに直すのは大変だった。
「もっと、もっと、もっと頂戴! フローラ!」
「変な言い方で催促するなー!」
ハイドラはバギーを飛ばして、調子に乗っている。完全に女暴走族だ。
通常の三倍の速さは出てるだろう。俺達は荷車に必死でしがみつく。
「もうすぐ着くな、何とか間に合いそうだ」
「ドワーフ族を代表して感謝するのじゃ、海彦がいなかったら……」
「まだ礼を言うのは早いぞ、ドリス。子供達を助けてからな」
「そうじゃな!」
ドリスは可愛らしく笑った。
犬達が荷車から先に飛び降り、ゴブリンに飛びかかる。
「ガウッ!」
「ンギャ!」
ゴブリンの腕に噛みついたかと思えば、ヨーゼフはそのまま捻って骨を折ってしまう。
パトラッシュは骨をかみ砕く。ゴブリン達は悲鳴を上げていた。
犬TUEEEE――!
……そうか、犬達は俺の護衛をしてくれていたのか。たぶんドリスの命令だろう。
スキンシップはかなり痛かったが……。
ハイドラはバギーを止めて、俺達は荷車から下りた。
全員武器を構えてゴブリンに立ち向かう!
「いくぞ――――!」




