表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/243

やっぱり奥様方はえらい

 邸宅の外には血相を変えた男達が、チャールズさんの所に続々と集まっていた。


「おかしら! ゴブリンどもは鉱山に向かってやす!」


「分かった! 皆、武器を持てー!」


「おおお――――――――!」


 耳をつんざくほどの掛け声が上がる。俺は思わず耳をふさいだ。

 エルフ・オークの部族達も集まり、ロビンさん達が声をかける。


「チャールズ、儂らも戦うぞ!」

「うむ!」


「よし! 武器庫はこっち……ああ、しまったー!」


「どうした!?」


「ここんとこ機械いじりばかりしてたから、武器の手入れを全然しとらん。ゴブリンの襲撃なんぞ何十年もなかったからな、武器が使えるといいが……」


「何も無いよりはマシじゃ、とにかく行ってみよう」


「ああ……」


 男達は一斉に走り出して、俺も後についていく。

 幾つかの角を曲がって武器庫につくと、


「あれ?」


 大扉は開け放たれており、革鎧はすでに外に出されていた。

 武器もバケツリレーで、中から運び出されている最中だ。


 運搬作業をしているのはドワーフの奥様連中であった。

 ドリスの母親は夫に発破をかける。


「あなた! しっかり戦いなさい!」


「お、おう……」


 武器と防具の保存状態は良く、錆すらなかった。

 夫には内緒で武具の手入れをしてくれていたのだ。まさに内助の功である。


 鎧の装着も奥様方が手伝い、戦いの準備はすぐに完了する。

 こうなると、旦那の頭は一生上がらない。


「よし行くぞ野郎ども! 機関車に乗り込めー!」


「おお――――――――!」


 現場に走るよりは早く着く。機械が役に立って何よりである。

 俺も行こうとしたが、やはり止められた。


「よし俺も……」


「勇者殿は村で、女子供を守ってくだされ」


「……はい。しくしく」


 実際の所、俺が行っても戦闘の役に立つとは思えなかった。生兵法は怪我の元。

 亜人達の方が圧倒的に強く、足手まといにしかならないだろう。


 俺は留守を頑張ることにする。村にゴブリンが来ないとも限らない。

 一応、革鎧を身につけて剣を腰に差す。


 ナイフの方が使い慣れてるが、長い武器はあった方がいい。

 族長の娘達も険しい表情で、武器を手に取っていた。


 フローラとハイドラは短弓、ボウ銃もあったが連射がきかないので使わない。

 リンダは俺と同じく長剣、ドリスは槍斧ハルバードを取った。


 やはり女でも力があり、軽々と素振りを繰り返していた。

 俺達の他にも村に残った若者がいるので、守りは万全と言える。

 

 ただ俺は、何となく嫌な予感がしていた。


 ゴブリンの位置と数が気になって仕方ない。


 もし守りの薄い所を攻められたら、村は一溜まりもなかった。


「見張り台に登る!」


「つきあうわん」


 俺は目の良いハイドラと一緒に、一番高い見張り台に向かう。

 その途中で自室に急いで戻り、ある物を持っていく。


 俺達はいくつかの梯子はしごを上って、見張り台の天辺に着いた。

 確かに見晴らしはいいが、高所恐怖症であれば耐えられない場所だ。俺は平気である。


 早速、持ってきた双眼鏡を使って見て見ると、


「あれがゴブリンか……」


 身長はおよそ百二十センチで体色は緑、髪はない。

 ボロ布をまとい、棍棒やら短剣を手にしていた。


 耳は尖っており、口から牙が生えており凶暴そうに見える。


 人数はおよそ三十人。こえー!


「鉱山にいるドワーフが頑張ってるわん」


「うん、貨車を倒してバリケードを作ったな。それと掘削ドリルで対抗している。あれは当たると痛い」


「パパ達が到着したわ、機関車は早いわねん」


「ああ……やっぱりあの爺達は、つえーわ。思っていた通りだ。俺の出る幕はないな」


 族長達が先頭に立って、ゴブリンの群れに襲いかかる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ