表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/243

貞操の危機は去ったがゴブリンと戦うしかない

 俺があきらめかけたその時、


「あー! ドリス抜け駆けだわさー!」


「ずるいわん!」


「うー……」


 リンダ・ハイドラ・フローラの三人が風呂場に乱入してくる。

 そろいもそろって、男風呂に堂々と入ってきやがった。女達に悪びれた様子はない。


 まあこれで貞操の危機はなくなったか? 


 ……いや違う。こいつらの目的はドリスと同じで、俺の童貞を奪いにきたのだ。


 そもそも用もなしに来るわけがない。夜這いならぬ、風呂這いだ。


「海彦とするなら、ジャンケンで順番を決めないと」


「そうよ、そうよ!」


「うー、分かったのじゃ」


「おいこら!」


 俺の意志は無視かよ! 同意の上でしろー!

 顔を伏せていた俺が頭を上げると、ハイドラとリンダはスッポンポン。


 姉ちゃんええ体してまんなあ……じゃなくて、お前ら恥ずかしくないのか!?


 意外にもフローラはバスタオルをつけたまま、モジモジしていた。

 仕方なく二人についてきたのだろう。俺にとってはどうでも良い。


 股間のナニがさらにヤバイ状況になっており、もう寸前まで追い込まれていた。



 冗談ではない! このままやられてたまるか!


 俺は逃げ出すことにする。


「あー、海彦逃げるなー!」


「うおおおー!」


 組み付かれて湯船に落ちたり、抱きつかれては羽交い締めにされたりする。

 俺は必死に暴れて、組んずほぐれずのプロレスをした。フローラはおろおろしている。


 本来、三対一では勝ち目はないが逃げるチャンスはある。

 ふっ、女の共闘など一枚岩ではない。


わらわが最初なのじゃー!」


「わたしよん!」


 確保された俺をめぐって、順番争いが起き仲間割れする。一番初めはゆずれない!


 この隙に俺は風呂場から逃げ出し、純潔は辛うじて守られた。本当に良かった。


 後で女達に文句をつけても、逆に言い返される。


「なんでしないのん?」「溜まってないのかい?」「子孫を増やすのは当たり前じゃ」


 巫女として処女を守ろうとしているのはフローラだけだが、いつ心変わりしてもおかしくはなかった。


 どうもヘスペリスの住人は、性に関してはフリーダムらしい。

 外で何度も行為を見かけています。俺がコッソリ立ち去ろうとすると挨拶されます。


 長生きしてる割には人口が少ないので、増やそうとしているのかもしれない。

 あと、影で族長達が娘の後押しをしてるようだ。爺どもめー!


 訴えようもないので、俺は自分で童貞を守るしかなかった。

 これからは野郎達と一緒に風呂に入ることにする。



 族長らが来てから三日目、俺は帰り支度を始めていた。

 物々交換は終わり、ミシンを含めた機械を持って村に戻ることになる。


「勇者殿、ドワーフ村に残ってはくれんかのー……」


「すみません。クルーザーに戻ります」


 チャールズさんからは引き留められたが、俺は帰ることにする。

 肉体的には疲れてないが、色んなことで精神は参っていた。全部、女達のせいだ。

 少し一人になって休みたい。


「海彦、春になったら会いにいくぞ」


「あ、ああ」


 ドリスに対しては生返事をしておく。モテるのは悪い気はしない……が、誰とも関係を持つべきではない。


 やはり、山彦や叔父が気掛かりで家族の安否が知りたかった。

 もしかすると、俺を心配しているかもしれない。せめて生きていると伝えたいものだ。


 日本に帰れたら、ヘスペリスでの出来事は思い出にしよう……


 

 ガン! ガン! ガン!


 けたたましい半鐘が村中に響いた。見張り台にいるドワーフが騒いでいる。


「何事だー!? 火事かー!?」


「ゴブリンの群れだー! 結界の外から来てるぞー!」


「門を閉じろー! 女子供は家に入れー! 出てはいかんぞー!」


 村中、蜂の巣を突いたような騒ぎとなり、俺もビックリしている。

 ゴブリンはスライムと同じく定番の魔物モンスター、たまに出るとは聞いていた。

 とはいえ雑魚ではなく、そこそこ強いらしい。


 人間と亜人にとっては共通の敵で、物を奪い攻撃してくるそうだ。

 言葉も通じないとなれば、戦うほかはない。


「戦いか……」


 俺は身震みぶるいして、外に飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ