トロッコが完成したのでお披露目をしたい
「我らドワーフは創意工夫を繰り返してきたから、ヒントさえもらえれば、作る物のイメージは直ぐに浮かぶんじゃよ」
「なるほど、だから作るのが早いわけですね。それにしてもあらゆる材料には詳しいし、道具もそろってる」
「伊達に長くは生きとらんからな、嫌でも金属の性質は知り得てしまう。やはり鉄が一番じゃな」
「地球じゃ金なんですけどね。絶対量が少ないから希少なんです」
「金か……ヘスペリスじゃ使いどころがあまりない。腐食せんのはええが、重いし柔すぎる。装飾品くらいかのう」
所変われば品変わるか。人が欲しがらなければ、金でも価値がおちてしまう。
貨幣経済でないから、通貨として使うこともない。日本に持ち帰りてえー!
「ところで、銅はありますか?」
「あることはあるが、銅も使わんのう。加工は鉄より楽だが」
「それとニカワと、……が必要です。ありますかね?」
「あーアレか、あるぞい。はてさて勇者殿は何を作る気じゃ? ほっほほほほほ!」
「それは出来てからのお楽しみで」
俺は笑って誤魔化した。
材料から加工して、各パーツをそろえて組み立てる。
合わない部品は削ったり磨いたりしていた。又は作り直す。
毎日、職人達は忙しかった。
俺も翻訳係だけでは飽きるので、手伝おうとしたのだが……
「怪我をされたら困る!」
「絶対駄目!」
しくしく、鉄船造りの時と同じく何もやらせてもらえない。
仕方なく、ドワーフの子供達にバレーを教えることにした。ボールは持ってきている。
「バレー、面白え――!」
「勇者の兄ちゃんありがとう!」
感謝されるのも束の間、子供達はメキメキと上達する。
プロ顔負けのジャンプサーブや変化球サーブを、使いこなすようになってしまった。
大人達も混じり、息抜きにはちょうどよかったが……子供相手でも俺は苦戦を強いられる。
俺、YOEEEEE――!
こうして一か月後、ついにトロッコは完成した。むしろレールを敷くのに時間をとられている。
それにしても早い、早すぎる完成だった。
進発式には全員が集まる。貨車をつけた手押しトロッコが動き出すと、
「おお!」
皆が感嘆の声を上げる。止まったりはせず、すごい速さでトロッコはレールを進んだ。
走って追いかけようとした子供もいたが、追いつけるものではない。
そのままトロッコは鉱山の中へと入っていった。
ちなみにレールは連結されているのだが、段差や継ぎ目は一切なかった。
炎精霊による溶接で綺麗に仕上がったのだ。これには俺も驚く。
これで脱線することはないだろう。
「勇者海彦殿に感謝を!」
「ありがとう!」
集まったみんなから一斉に拍手された。俺は照れながら頭を下げる。
心情としては嬉しいが、気持ちは複雑だ。俺は技術を伝えただけで、何もしていないからだ。
あくまで作ったのは職人達だ。日々の生活に役立ってくれれば、それでいい。
それと機械のお披露目は、まだ残っていた。
俺達は鋳造所に移動する。溶かされた鉄が、次々と金型に流し込まれていた。
新たに作られた製造所で専門の職人も育ちつつある。
リンダのそばに機械があり、これからデモンストレーションを行うのだ。
俺や職人達は知っているが、一般公開されるのは初めてである。
「リンダいけるか?」
「もう何回も動かしてるから問題ない。早く取り付けて走らせたいわ!」
「まあまあ、じゃー頼む」
「出でよサラマンダー! ゲルラの炎!」
火炉に現れた炎精霊が、水の入ったタンクを熱すると、
すぐに湯気が上がり、水蒸気によりシリンダー内のピストンが動き出す。
ピストンの往復運動は、クランクでつながれた車輪を回していた。
車輪の回転速度は、どんどん上がっていく。
「うおー!」
「これが蒸気機関です。これをトロッコに取り付ければ、大量の鉄鉱石の運搬が可能になります」
しかもクリーン動力だ。石炭を燃やして煙を出すことはない。
その代わりに炎精霊で水を温めて水蒸気を作っていた。魔法の労力は少しですむ。
おかげで大型ボイラーや煙突がいらず小型化できる。これは大きな利点である。
精霊様々だ。そしてもう一つ、精霊の力を利用した機械があった。
ファンタジーの世界がぶち壊れます。ただ現代文明を持ち込もうとするならば、知識チートだけでは足りません。そこで魔法と機械の融合を考えてみました。
技術持ち込みネタの元祖は戦国○衛隊ですかね。




