防御魔法をなんとかしたい
次の日になっても、騒動は収まらなかった。
ミシェルがフローラと何やらもめている。俺は聞きたくもない。
それでもフローラの大声は耳に入ってくる。
周りで見ている者達はニヤニヤと笑っていた。噂話はすぐに広がるだろう。
「だからー、昨日言ったことは嘘で冗談よ。本気にしないで!」
「いや私は本気で海彦を好きになった。命懸けで助けに来てくれる男など、他にはいない。もう、ただならぬ関係にもなったし……」
「嘘っ!?」
なってねー! 願望を口にするなー!
これが女の見栄というやつか。どうやらフローラの思わくは外れたらしい。
何を狙っていたのかは知らんが、逆にミシェルから嘘をつかれて、取り乱してるようでは負けだろう。
二人に見つからないうちに、俺は足早に逃げる。巻き込まれてはたまらん!
モサウルスがまだ暴れまわっているのに、色恋沙汰なんかに構ってはいられん。
俺は頭を抱えながら、近くを散歩する。
しかし本当に、鰐鮫をどうしたもんか?
鉄船は残り一隻、ボウ銃が通じないのでは造船しても無意味。
仮に鉄砲で撃ったとしても、あのバリアは破れないだろう。
「ナイアスの守り」を突破する方法はないものか?
あーそう言えば、ロリエが魔法に詳しいと婆が言ってたな。
今、フローラやハイドラに聞くよりはまともだろう。
宿舎にいるはずなので、俺は歩いて向かう。
神怪魚と戦うようになってから、亜人達の一部が浜辺で暮らすようになっていた。
日々の生活もあるので、各村から交代でやってくる。
ロリエも臨時工房で薬を毎日作って配っていた。俺が中に入ると笑顔で迎えてくれる
これには、かなり癒やされる。他の女達は張り合ってばかりだから。
「あ、お兄ちゃん! ミシェルさんを助けてくれてありがとう」
「ロリエちゃんの頼みだったからね。約束を果たしただけだ。ところで聞きたいことがあるんだがー……」
「もしかして魔法のこと?」
「おお、話が早くて助かる。『ナイアスの守り』を破る方法はないかい?」
「うーん。神怪魚の魔力が尽きないうちは破れないと思うの……精霊には精霊をぶつけるしかなくて、防御魔法を直接消すのは無理なの……」
「……そっか」
俺はガッカリするしかなかった。
「でもどんなに魔力を持っていても、意識したところにしかバリアは張れないから、必ず隙はできるわ」
「……そっか、何とかその隙をつくしかないのか」
「力になれなくてごめんね。お兄ちゃん」
「いや十分だ。もう少し考えてみる」
俺は手を振り、クルーザーに戻ることにする。
見れば湖の侵蝕は進んでおり、濃藍色の瘴気は毒毒しい。
「早く神怪魚を倒せ!」と女神に急かされてるようだった。
俺の方こそ言い返してやりたいのだが。
飯を食い、夜遅くまでパソコンをいじりながら策を考えて見たが、
あー、もう止め止め! 一人で考えるのも限界だー! やってらんねー!
頭が爆発しそうになったので、もう休むことにする。明日みんなと相談だ。
寝る前に戸棚から、ある物を取り出して見ると……
「ちょ待てよ! これは使えるんじゃないか?」
だ・け・ど……これを利用にするにはアノ手しかない。
うー! 下手をすると確実に俺は死ぬ。とは言え時間もなく、他に手はない。
俺は覚悟を決めて、ある作戦をやるしかなかった。
なんだか「イン・ディヴァインマスター」と同じく、知略戦・頭脳戦ぽくなってきました。




