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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

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何もしてないのに責任はとれない

「話はわかった。それで、俺にどうしろと?」


「いや、ただ事情を教えたかっただけじゃ。もし、ミシェルが態度を改めたら、許してやってくれ」


「アイツが突っかかてこなけりゃ、俺は喧嘩はしない。ミシェル次第だな……」

 

 あれ? さっきから女騎士を呼び捨てにしてるよな。

 従者という割には、騎士より偉そうだ。仕えてるが親代わりなのかもしれん。


「それで十分じゃ、恐らく後で……あと娘の方もよろしく……」

「は?」


「いや、何でもない。邪魔したのう」

「ああ」


 従者は立ち上がり去って行く。よーく見ると図体ガタイは大きく筋肉質だ。

 かなり強いと俺は見た。族長三人にひけをとらない。


 スポーツをやっていたからこそ分かる。精悍せいかんさが他者と違うのだ。

 本当は強いくせに、俺を戦わせてるから始末が悪い。老人のふりをしてとぼけている。


 あー、むかつく!


 俺はそのまま少し寝た。夕方にはエイルさんから夕飯をもらい、砂浜で過ごす。


 夜のとばりが下りると、近くには誰もいなくなった。皆宿舎に引き上げたのだろう。


 星が瞬き始める中、俺は焚き火を焚いて湖と空をながめていた。


「ガレー船もやられちまったな……船のバランスを崩されたらどうしようもない……船ではもう戦えん。さて、どうするかなー……」


 寝ても覚めても、考えることは神怪魚を倒すことだけだ。

 山彦がいないのが本当に痛い。ここに居ないからこそ、ありがたみが良く分かる。


 智者の弟にすがれない以上、自分で考えるしかない。

 もちろん諦めるつもりはなく、倒して日本に帰ってやる!


「……少し、いいか?」


「ああ……」


 俺の側に来たのはミシェルだ。


 乗馬ズボンをはき、フリルのついた白ブラウスを着ていた。

 甲冑姿の時とは違い、女であることがハッキリと分かる。胸はやはり大きい。


 金髪はまとめず、ロングのままだ。出で立ちは変わっても、凜々(リリ)しさはそのままである。

 やはり女でも騎士なのだ。ミシェルは俺の横に座る。なんか近くねえーか?


「……助けてくれてありがとう」


「まあ、お互い様だ。前にフローラとハイドラが助けられたから、これで貸し借りはなしにしよう」


 俺としては、これで手打ちにしたかったが、どうもミシェルの様子がおかしい。


 浮ついていて、ソワソワしている。俺をチラチラみながら、顔を赤くしていた。


 おいおい、なんか嫌ーな予感がしてきたぞ!


「いや海彦が……勇者が私を助けてくれなかったら、死んでいた。そうなっていたら、生んでくれた母に顔向けできない。本当に感謝している。たとえ体を汚されたとしても……」


「海彦でいい! ちょっと待て、()()()()したってー!?」


「私を助けるとき、素っ裸にして胸を揉みしだいて、股間に顔をうずめてなめ回した、とフローラに聞いたが?」


「ふーろーおーらーあ――――!」


 俺は立ち上がって、夜空に吼える。あの嘘つき女ー!


 ミシェルと俺を喧嘩させたいのか? ここは何とか誤解をとくしかない。


「そんな不埒ふらちなことを俺はやってない! 女神に誓ってもいい! したのは人工呼吸と心臓マッサージで、キスはしてないし胸も服の上から押しただけだ。ミシェルに手はだしていない!」


「別に隠さなくてもいいぞ、私は気にしないから」


「いや、気にしろよ!」


「その代わり、男として責任はとってくれ」


「だ・か・らー、俺はなにもしてねー!」


 押し問答がしばらく続いた。


 どうやらミシェルは理由はどうでもよく、俺を婿にしたいらしい。


 惚れられた……確かに金髪でスタイルも良く美人だから申し分はない。


 しかし、結婚してしまったら日本に帰れなくなる。女達と過ちは犯せない。


 美人が近くに一杯いても、俺は我慢するしかなかった。


 そこでミシェルには別な提案をして説得した。


「ミシェルの親父さんを探してやるよ」


「えっ!?」


「従者のエリックさんから聞いた。突然いなくなったそうたが、俺は家族を捨てたとは思えない。俺のように巻き込まれてココにきた例もある。親父さんは転移事故にでもあったんじゃないか? だとすればへスペリスに戻ってこようとするだろう。俺ならそうする」


「……うっ、ううううう――――!」


 ミシェルが泣き出して、俺は大いに慌てた。

 しばらくすると泣き止む。


「……そうだな、父上が私と母を捨てるわけがない。どうして、帰りを信じなかったのだろう? 裏切ったと、勝手に思い込んでいただけだ。なんて私は愚かなんだ!」


「神怪魚を倒したとしても、俺はしばらくココにいるからその間に探してやるよ」


「ありがとう海彦。もし父上が見つかったら、私の伴侶として紹介させてもらう」


「えっ……」


 結局、俺はミシェルの説得に失敗した。結婚するという既定路線は変わらないらしい。

 

 もう逃げるしかない!

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