何もしてないのに責任はとれない
「話はわかった。それで、俺にどうしろと?」
「いや、ただ事情を教えたかっただけじゃ。もし、ミシェルが態度を改めたら、許してやってくれ」
「アイツが突っかかてこなけりゃ、俺は喧嘩はしない。ミシェル次第だな……」
あれ? さっきから女騎士を呼び捨てにしてるよな。
従者という割には、騎士より偉そうだ。仕えてるが親代わりなのかもしれん。
「それで十分じゃ、恐らく後で……あと娘の方もよろしく……」
「は?」
「いや、何でもない。邪魔したのう」
「ああ」
従者は立ち上がり去って行く。よーく見ると図体は大きく筋肉質だ。
かなり強いと俺は見た。族長三人にひけをとらない。
スポーツをやっていたからこそ分かる。精悍さが他者と違うのだ。
本当は強いくせに、俺を戦わせてるから始末が悪い。老人のふりをしてとぼけている。
あー、むかつく!
俺はそのまま少し寝た。夕方にはエイルさんから夕飯をもらい、砂浜で過ごす。
夜の帳が下りると、近くには誰もいなくなった。皆宿舎に引き上げたのだろう。
星が瞬き始める中、俺は焚き火を焚いて湖と空をながめていた。
「ガレー船もやられちまったな……船のバランスを崩されたらどうしようもない……船ではもう戦えん。さて、どうするかなー……」
寝ても覚めても、考えることは神怪魚を倒すことだけだ。
山彦がいないのが本当に痛い。ここに居ないからこそ、ありがたみが良く分かる。
智者の弟にすがれない以上、自分で考えるしかない。
もちろん諦めるつもりはなく、倒して日本に帰ってやる!
「……少し、いいか?」
「ああ……」
俺の側に来たのはミシェルだ。
乗馬ズボンをはき、フリルのついた白ブラウスを着ていた。
甲冑姿の時とは違い、女であることがハッキリと分かる。胸はやはり大きい。
金髪はまとめず、ロングのままだ。出で立ちは変わっても、凜々しさはそのままである。
やはり女でも騎士なのだ。ミシェルは俺の横に座る。なんか近くねえーか?
「……助けてくれてありがとう」
「まあ、お互い様だ。前にフローラとハイドラが助けられたから、これで貸し借りはなしにしよう」
俺としては、これで手打ちにしたかったが、どうもミシェルの様子がおかしい。
浮ついていて、ソワソワしている。俺をチラチラみながら、顔を赤くしていた。
おいおい、なんか嫌ーな予感がしてきたぞ!
「いや海彦が……勇者が私を助けてくれなかったら、死んでいた。そうなっていたら、生んでくれた母に顔向けできない。本当に感謝している。たとえ体を汚されたとしても……」
「海彦でいい! ちょっと待て、俺が何をしたってー!?」
「私を助けるとき、素っ裸にして胸を揉みしだいて、股間に顔を埋めてなめ回した、とフローラに聞いたが?」
「ふーろーおーらーあ――――!」
俺は立ち上がって、夜空に吼える。あの嘘つき女ー!
ミシェルと俺を喧嘩させたいのか? ここは何とか誤解をとくしかない。
「そんな不埒なことを俺はやってない! 女神に誓ってもいい! したのは人工呼吸と心臓マッサージで、キスはしてないし胸も服の上から押しただけだ。ミシェルに手はだしていない!」
「別に隠さなくてもいいぞ、私は気にしないから」
「いや、気にしろよ!」
「その代わり、男として責任はとってくれ」
「だ・か・らー、俺はなにもしてねー!」
押し問答がしばらく続いた。
どうやらミシェルは理由はどうでもよく、俺を婿にしたいらしい。
惚れられた……確かに金髪でスタイルも良く美人だから申し分はない。
しかし、結婚してしまったら日本に帰れなくなる。女達と過ちは犯せない。
美人が近くに一杯いても、俺は我慢するしかなかった。
そこでミシェルには別な提案をして説得した。
「ミシェルの親父さんを探してやるよ」
「えっ!?」
「従者のエリックさんから聞いた。突然いなくなったそうたが、俺は家族を捨てたとは思えない。俺のように巻き込まれてココにきた例もある。親父さんは転移事故にでもあったんじゃないか? だとすればへスペリスに戻ってこようとするだろう。俺ならそうする」
「……うっ、ううううう――――!」
ミシェルが泣き出して、俺は大いに慌てた。
しばらくすると泣き止む。
「……そうだな、父上が私と母を捨てるわけがない。どうして、帰りを信じなかったのだろう? 裏切ったと、勝手に思い込んでいただけだ。なんて私は愚かなんだ!」
「神怪魚を倒したとしても、俺はしばらくココにいるからその間に探してやるよ」
「ありがとう海彦。もし父上が見つかったら、私の伴侶として紹介させてもらう」
「えっ……」
結局、俺はミシェルの説得に失敗した。結婚するという既定路線は変わらないらしい。
もう逃げるしかない!




