表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/243

喧嘩に卑怯もヘチマもない

「幸坂海彦だ。よろし……」


「なぜ、我ら王国軍の到着を待たなかった! 伝令は送ったはずだ!」


「えっ!?」


 イケメン騎士の勢いと剣幕に、俺はタジタジとなり思考が停止する。

 言い返す前に非難を浴びせられてしまい、騎士が怒っていた理由がわかる。


「我らの王が共闘を約束したのに、貴様はそれを破り勝手に戦い始めた! 違うか? 約定を守れない者など、信用するにあたわず! これにて共闘はなしとする。以後、我らが独自に神怪魚ダゴンを討滅する。そちらの手出しは無用、邪魔するならば容赦はしない!」


「おい、ちょっと待て! こっちの話も聞けよ!」


「聞く耳もたぬ。第一、我らが駆けつけなければ、亜人に犠牲者がでたであろう? それは貴様らが弱く、統率がとれてないからだ。そのような弱兵集団など、足手まといにしかならぬ。不用、無用! これは貴様のためを思って、親切心で言ってやってるのだぞ? ふん、何が勇者だ」


 一方的にまくしたてられた挙げ句、恩着せがましい態度を取られて、俺もキレた。


 俺のことはいい、何を言われてもかまわない。


 だが、一緒に戦った亜人の仲間達を侮辱されては、黙ってはいられない。

 てめーらも、神怪魚を仕留めそこねたじゃねーか!


「ふざけんなー! 黙って聞いてりゃ言いたい放題。伝令なんか来てねー! 最初のダンクレウスは仕留めてるんだ。お前なんかに、弱兵よばわりされる言われはねー! 今日も途中までは上手くいってたんだ。お前らが使ってるボウ銃だって、お前が発明したわけじゃねーだろうが!? ああん! 調子こいてんじゃねー!」


「伝令がきてない? 嘘をつくな! それと武器は改良して、使ってやってるのだ。有り難くおもえ」


「うるせー、クソ騎士!」


「言ったな下郎! 殺してやる!」


「やってみろ!」


 奴は剣を抜いた。細身の片手剣、レイピアという奴だろう。

 俺も腰からロングナイフを抜く。


 まともにやり合えば、俺の方が不利なのは分かっている。

 武器のリーチは短く、野郎は戦闘のプロだ。それなりに修練はつんでいるだろう。


 だからといって、俺も一歩も引く気はない。頭に血が上りすぎていた。


 とにかく、一発ぶん殴ってやる!


 喧嘩であれば、俺は負ける気はしなかった。俺は構えたまま、動かない。


「どうした、口だけか? ど素人め! ならばこちらからいくぞ!」


 騎士野郎が俺めがけて剣を突いてくる――速い!

 だが、野郎の踏みこみは甘く、剣筋も真っ直ぐではない。


 ――やっぱりな、地の利は俺にある。


 俺は咄嗟にしゃがみこんで、左手で砂を握り騎士野郎の目にかけてやった。


「うっ! ひ、卑怯者!」


「うるせー! 喧嘩に卑怯もクソもあるか!」


 目つぶし攻撃に野郎はひるむ。

 軍隊の教本にもある対人殺法だ。お座敷剣法じゃ教えてくれまい。


 この隙に俺はダッシュし、振りましてる剣を避けて騎士に肉迫する。


 起伏のある砂場での動きは俺が上、野郎はど素人。


 伊達にライフセーバーはやってないんだよ! 


 流石にナイフで切りつける気はないので、下に落とし右拳で騎士の顔面を狙う!


「そこまで!」

「ゴホン、ゴホン!」


 おれの拳は野郎に届かない。寸止めするつもりはなかった。

 本気のパンチは、精霊魔法によって止められたのだ。ナイアスの守りか。


「フローラか? 邪魔するな!」

「私じゃないわよ!」


 俺はイラつくが、フローラは首を振って否定する。じゃー誰が?


「二人とも、武器をおさめなさい!」


 この声は、エイルさん! 


 有無を言わせない、きつい口調だ。母親とはこういうものなのだろう。

 俺を介抱してくれた恩人には、逆らえない。飯も食わせてもらった。


 俺はしぶしぶ、落としたナイフを拾ってしまう。野郎もレイピアに鞘に納めた。

 そこに、ロリエが桶を持って近づいていく。


「お水です。目を洗ってください」

「……感謝する」


 野郎は手甲を外して、タオルで顔を洗う。

 水を手ですくい、目を洗うと見えるようになったらしい。

 俺をにらみつけてくる。まだやる気か? その前にエイルさんが割って入る。


「ミシェルさん、まずはこの方とお話をしてくれますか?」


「隊長!」


「お前はハンス! 伝令役のお前がなぜここに!?」


「すみません隊長、自分は任務に失敗しました……」


 ハンスと言う兵士は、革鎧を身につけていた。

 話しぶりから、騎士野郎の部下なのであろう。


 問題なのは兵士の状態だ。左腕は首にかけた包帯でつるされて、添え木もされてる。

 また右腕で松葉杖をついており、重傷としかいいようがない。


 兵士は語り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ