明日決戦なのに寝てくれない
一回戦、
「じゃん、けーん、ぽん!」
「うっ!」
「おお――――!」
全員パーを出して引き分け。
野次が止まらない。
二回戦、
「うおお――――! また引き分けだ!」
今度はぐー・ちょき・ぱーをそれぞれ出していた。
場のボルテージが上がり、非常にやかましい。
お前ら、他に娯楽はないのか? 応援が過熱している。
女達は汗をかいて一休みしていた。そこまで気合いが入るものか?
休憩時間の間、
「女神ヘカテーよ、我を勝たせ給え!」
「次は多分あれを出すはずだから、私はその裏をかいて……」
「…………」
フローラはお祈り、ハイドラは予想、リンダは無言で真剣そのものである。
そして運命の三回戦。
「じゃーん、けーん、ぽん!」
だされたのは、チョキ・チョキ・グー……決まった。
「勝者、リンダ!」
「やったあ!」
「ああ…………」
落胆の声と歓声が止まない。
「わ、私のちょきがー! ちょきがー!」
「読みが外れたわ。あー悔しい!」
エルフ女二人は嘆いていた。こうして、俺と一緒の船に乗るのはリンダとなる。
全員一緒に乗るよりは、有能な女達は分けた方がいい。
「いや、まだだ、まだ終わらんぞー!」
収まりがつかなかったのか、部族同士でジャンケン大会が始まってしまう。
勝手に船に乗り込む権利を賭けてる。補欠にとってはチャンスだ。
夜遅くなっても勝負に終わりが見えず、俺は声を張り上げた。
明日は決戦だっつうーの!
「お前ら、いい加減、寝ろ――――!」
こうして、次の日をむかえた。
「出航!」
「おおー!」
俺達は進発した。空に雲はまだあるが、ときどき晴れ間がのぞく。
鉄船二隻に小舟が続き、慎重に進んでいた。
小舟は前線に立たず、鉄船も奴に近づかずに戦うつもりだ。
鰐鮫の巨体を叩きつけられたら、船体が保つかどうか怪しい。
やられたら元も子もないので、危険と判断したら一目散に逃げる予定。
命あっての物種で、俺も引くことを覚えた。
湖の色が濃藍色に変わり際、鉄船は二手には分かれ「く」の字をかくような隊形をとった。
狙いは十字砲火である。上手くはまってくれれば、これで勝てるはず。
鰐鮫の姿は見えず潜ったままのようだ。仕掛けた浮子が見えないので分かる。
「よし、エサを流せ!」
生きエサを入れた桶が三つ、湖面に降ろされる。
小さい帆が付いてるのは同じ、しかし今回は桶に紐をつけていた。
鰐鮫の食いつきが早い。波が起きて船が揺れる。
「すぐに奴がくるぞ! みんな警戒しろ!」
「おう!」
浮子が浮き上がり見えた。
十メートル……五メートル、いまだ!
「よし、エサをポイントまで引き寄せろ!」
「まかせろ!」
今回はタダで、生きエサを食わせる気は無い。
紐を引っ張って桶を移動させ、射撃ポイントに誘導したのだ。
エサの移動が終わり、全員が狙いを定める。
さあ、来やがれ、化物!




