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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
第二章 騎士と姫

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人を当てにはしない

 俺と女四人は、クルーザーの中で作戦を詰めることにする。

 とは言っても、やることは決まっていた。


 なんか飯を食わせて、風呂に入れるのが定番になりつつあり、もう自宅デートだ。


 ただし、女が一人しかいない時は絶対に泊めない。

 どうも貞操の危険を感じるので、これだけはゆずれない。


 流石に他の女がいれば、せまられたりすることはなかった。


「作戦はエサ桶を今日のように流して、食いついた所をボウ銃で攻撃する。他に意見があったら言ってくれ」


「ダンクレウスよりでかいから、当てやすいと思うわ。ただ仕留めそこねて、潜られたままになると厄介ね」


「そうだな。となると船を改装してボウ銃の数を増やし、一気に攻撃しよう。戦いは数とはよく言ったものだ。四丁だけじゃ全然足りない」


「大型ボウ銃はあたいが作る。もう少し改良できるはずだわ」

「船の方は父さんに、私が頼むわ」


「うん、頼む……ロリエちゃん?」


 ロリエはアルカナカードで占っており、顔を曇らせていた。

 はよくないようだ。聞いてみると、


「ごめんなさい、吉兆はないの。ただ、みんな無事に戻ってこられるわ。お兄ちゃん」


「そうか、それだけでも十分だ」


 失敗も覚悟の上である。


 孫子の兵法では、敵を知れとか抜かしているが、鰐鮫を知る手段がねーんだよ!


 兵書を読んで勝てるのなら苦労はない。結局、戦ってみるしかないのだ。


 翌日、俺もロビンさんに作戦案を話した。


「……なるほど、その作戦なら良いじゃろ。じゃが、人間の軍を待たなくていいのか? 協力した方がいいんじゃないのか?」


「少しは待ちますよ。ただし鉄船の改装が終わり次第、戦います」


「そうか……準備を進めるとしよう」

「よろしくお願いします」


 同じ人間でも、俺は当てにはしていない。なぜなら亜人の方が圧倒的に強いからだ。


 ……昨晩、寝る前の暇つぶしに女達と腕相撲をしたのだが……俺は全敗。


 ロリエにも、負けたあああああああああ! しくしく。


 亜人恐るべし、女でもかなり強い。もし押し倒されたら、逃げようがないな。


 人間の王は勇者らしいが、軍隊は神怪魚ダゴンと戦ったことがあるのか?

 経験がないのであれば、足手まといとしか思えず、亜人達だけで十分だった。


 鉄船の改良は着々と進んでいた。

 杭に置くのをやめて船縁に長板をつけ、ボウ銃を並べることにする。


 右舷と左舷にそれぞれ六丁で、計十二丁。手持ちボウ銃も用意する。


 心配なのは船のバランスだった。


 今回は正面から戦うわけじゃなく、船腹を向けて片側に船員が集まるから、どうしても傾いてしまうのだ。

 下手すりゃ船が転覆する。


 そこでバラスト代わりに、船倉に水をいれた樽を数個置く。

 状況に応じて樽を移動させて、バランスを取るようにしたのだ。


 鉄船の重量が増したのは仕方ない。矢の砲台として使うので機動性は不要。


 それからしばらく、天候の悪い日が続いた。

 俺は雨を見ながらぼやく。


「援軍に来るって言った割には、こねえーじゃねえーか!」


「そうね……」


 連絡くらいよこせ、と言いたいとこだが、やむを得ない事情もある。

 道路がぬかるんでおり、馬での移動は危険すぎる。


 ここから城まではかなり遠いらしい。 

 電話もないから、連絡手段はない。どのみち間に合わんだろう。

 妖怪婆は瞬間移動……いや、霊体を飛ばして王と話したとか言ってたな。


「まあ、期待はしてなかったがな」


 やはり、自分達だけでやるしかない。とっくに準備は完了していたのだ。

 あとは天候が回復したら作戦を決行する。


 訓練も重ねて来た。ボウ銃はもちろんだが、特に力をいれたのは船の操舵だ。


 実際には船は動かさず、室内での模擬訓練シミュレーションである。

 まあ天候が悪く船が出せなかったので、苦肉の策だ。


 そのやり方を知った亜人達は目を丸くする。

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