下ネタはやめて欲しい
「ひょひょひょ! 者ども、こんな若造に言いたい放題言われて、悔しかろう? ならば亜人の意地を見せよ! 神怪魚と戦うのじゃ!」
「うおおおおおおー!」
座っていた全員が一斉に立ち上がり、鬨の声があがる。
非常にやかましくなり、この場は決起集会に様変わりした。
もしかすると、俺は盛り上げるのに利用されたのかもしれない。
食えない老人達だった。婆の声は意外と大きく聞こえ、砂浜中に響いていた。
「確かに、こたびの神怪魚は強いじゃろ。そこで婆は、人間の王に援軍を頼んだ。王は快諾しここに来てくれるそうじゃ! 皆の者、なにも恐れる必要はない!」
「なるほど人間の国に行ってたのですね? 流石は、おばば様!」
「勝てるぞ! これなら絶対に勝てる!」
これで亜人達は完全に立ち直る。さっきまで嘆いていたのが嘘のようだ。
俺も興奮しすぎたので、壇から下りることにする。
一応、族長たちには会釈をしておいた。
さて、また戦うとなれば策を練る必要あるな、ない頭を絞るしかない。
しかし人間は戦力として当てになるのか? 神怪魚はつえーぞ。
疑問を持ちつつ、歩いていると美女四人に囲まれた。
フローラだけが呆れた顔をしており、他の三人は笑っていた。
ロリエはキラキラと目を輝かせている。
「すごく格好よかったよ、海彦お兄ちゃん」
「ありがとう、ロリエちゃん」
「かなり乱暴だったが、なんかスッとしたわ。あたいらは狭い世界にいるんだと、つくづく思う。だから新しい考え方ができない。海彦にはもっと色々と教えて欲しい。何でも協力するからさ」
「うん、頼むリンダ」
俺が女神を否定したわりに女達は好意的だった。
悪口を言われるものとばかり思っていたので、これは意外である。
俺もこれ以上言うつもりはない。
自分にとって大事なものをけなされると、人は怒って当たり前なのだ。
「それで、二人とも体はもういいのか?」
「心配してくれてありがと。生理痛よりひどくないから大丈夫よん」
「ぶっ! 何を言ってるハイドラ! 他のたとえにしろよ」
「そうよねー、男には分からないわよねー、あの苦痛は女じゃないと。ロリエの薬と母さんの魔法で和らぐからいいけど、長びくと辛いわー」
「うんうん、分かる分かる!」
リンダもくいついていた。お前ら、女子トークやってんじゃねー!
何で俺が下ネタ話を聞かされにゃー、ならんのだ?
女性と付き合ったことがないので、心情はどうにも分からない。
「子供でも作ったら楽になるかな?」
「出来たらできたで大変よ。つわりは苦しいらしいし、生むときには陣痛があるしね」
「そうよねー、女にばかり体に負担がかかる。男は楽でいいわよねー」
「恨めしそうな目で、俺を見るな!」
「「「きゃははははは!」」」
どうやら俺の反応を見て、楽しんでるようだ。人をからかってくる女達だ。
ひどく馬鹿にされたわけではないので、あまり腹は立たなかった。
ここで話題になるネタは限られる。
「それでどう戦う気だい? 海彦」
「それを今考えてたとこだ」
「あら、それは邪魔をして悪かったね」
「気にするな、良いアイデアがすぐに浮かぶわけじゃない。まずは奴の様子を観察しようと思う」
「お兄ちゃん、ロリエも手伝うわ。何でも言ってね」
「今日は、『モサウルス』の姿は見えないから、まだダンクレウスを食べてるのかも……」
「トウゾクカモメのような奴だからな……まてよ、エサ……」
鰐野郎は、魚だけしか食わないのか? 俺はあることを閃いた。
「どうしたの海彦?」
「ちょっと、試してみたいことがある。みんな……を用意して欲しい」
「分かったわ」
人と話すことで、気づくこともある。
俺一人の力では足りなくとも、力を合わせればどうにかなりそうだ。
頼んだ俺も、クルーザーに戻ってある仕掛けを作る。