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なげく他ない

 早朝、俺は起きて湖で釣りをする。これも憂さ晴らしだ。

 驚いたことに、一日たらずで黒い瘴気はほぼ無くなっており、湖は美しさを取り戻している。

 しかし、入れ替わりに濃藍こいあい色に、水は変わりつつあった。


 神怪魚ダゴンによる、マーキングのようなものだろう。


 ここは俺様の縄張りだ! と意気ってる。


「調子こいてんじゃねーぞ! モサウルス!」


 昨日、ダンクレウスを分捕られたのにはガッカリしたが、今の俺は怒りに震えている。

 横から獲物をかっさわられ、やられたまま引き下がるような性格はしていない。

 絶対にお返ししてやる!


 夢中で竿をふっていると、優しい声がかけられる。

 俺も少しクールダウンできた。


「お早うございます。海彦さん」

「あっ! エイルさん。お早うございます」

「ずいぶんと魚を釣られましたね。頂いてよろしいですか?」


「はい、みんなで分けて下さい。そのつもりで釣ってました」

「それでは遠慮なく」


 砂浜には全部族が集まるだろう。まだまだ足りないと思い、俺は釣りを続けた。

 数時間もしないうちに、亜人達はたくさん集まってくる。皆不安なのだ。

 俺はクーラーボックスを持って、追加の魚をエイルさんに渡した。


 焼き上がった魚を一つもらい、食いながら集会の様子を見る。

 中心に演台が組み立てられて、三人の族長が上がり胡座あぐらをかいた。


 立ち話では終わらないということか。ホビットのばばあは見当たらない。


 特に気にしてはおらず、いても役に立つとは思えなかった。イタズラだけはすんな!


 村人達も、座ったまま食ったり飲んだりしている。

 それでも騒がしくはないので、話を聞くのに問題はない。

 最初に口を開いたのはロビンさん。


「ダンクレウスは、勇者殿と我らの力によって倒された。じゃが……新たなる神怪魚ダゴン、『モサウルス』が現れてしまった。儂は生まれてこの方、続け様に神怪魚を見たことはない。時期が空くのが普通で、これは異常事態じゃ!」


「うむ」


 二人の族長もうなづいている。

 誰もが黙って聞いており、不安気な表情を浮かべていた。


「巫女のフローラとハイドラに、女神のお告げあった以上、狂える神はまたもや降臨した。皆も見たであろう。新たな神怪魚はかなりの巨体であり、恐らく歴代の中でも最強かもしれぬ。これも今までにみたことがない……」


 ここでロビンさんは黙り、司会は弟のアランさんに変わった。


「それでまず、皆の意見を聞きたい。質問でも構わん。言いたいことがあれば、立ち上がってくれ」


「どうして、こんなことになったのでしょうか? 女神様は何もおっしゃってはくれないのですか?」


 直ぐに一人が立ち上がり、誰もが知りたいと思ってる事を聞いてくる。


 当然だ。俺だって原因を知りたい。


「巫女達に告げられたのは名前のみで、他に啓示けいじはなかったそうだ。これはあくまでも推測だが、女神様の力が弱ってる可能性がある。それで別世界の方から霊道アウラが開かれて、神怪魚が送り込まれた可能性がある。あんな瘴気の色は初めて見た」


「なんだってー!」


 おいおい、フローラが神怪魚を、日本に放逐しようとした時と同じじゃねーか。


 逆もあり得るってわけか。


 異世界転移も何がやってくるか分からんな、良い物とは限らない。



「そんな馬鹿な! 我らの歴史は数千年、ずっと女神様が守ってくだされてたのにー! どうしてー!?」


「わ、わ、我らは……い、一体、ど、どうすればー!」


「女神様! 私達をお救いください!」


 大多数が手を合わせて祈り出す。砂浜の集会場は阿鼻叫喚あびきょうかんとなる。


 女神のおかげで今まで平和に暮らしていたのが、いきなり無くなると言われたら、そりゃーパニックってもしかたない。だが……


 黙って様子を見ていた俺は、段々いらついてきた。怒りが再燃する。

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