表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
最終章 ヘスペリス合戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/243

魔物にこらえ性はない

 ……どうも魔物はこらえ性がないらしい。慎重という言葉はないようだ。


 明日攻めてくるかとも思ったが、食って休んだ後にすぐに攻めて来た。時は夕暮れ前。


「ギャオオオオオオオオー!」


 嫌な雄叫びがアルテミス湖に響き渡る。先に動いたのはゴブリンが乗っている船団。


 見た感じは、ヴァイキングが使っていたクナール船。魔物にも技術力はある。


 俺と同じく、誰かが知識を教えているのだろう。魔王という奴かな? うーやだやだ。


 さほど大きくない帆掛け船だが、オールも使って漕いでるので機動力はある。



「攻撃開始じゃ!」


「うおおおおおおー!」


 エルフのロビンさんの号令で、武装船団が前進する。こっちは蒸気船、敵の船より速い。


 絶好の位置取りをすると、ボウ銃での攻撃を始める。弓の射程もこちらが上。


 空を埋め尽くすほどの矢が飛んだ。まともに食らえば一溜まりもあるまい。


 これでゴブリンどもは、ハリネズミにな……らなかった。


「アギャ、アギャ、アギャ――――!」


 奇声を発して何を言ってるかはわからないが、やったことは分かった。


 赤い盾精霊が現れて、威力のある矢を防いだのだ。


 薄汚れた赤いローブをまとった、魔法使いが船に乗っており、数は数十人ほど。


 あれが、ゴブリンメイジというやつだろう。船と魔物達を守っている。


 更に船縁にかけてあった、円形盾ラウンドシールドを取って構え、ゴブリン達は矢を防いでいた。


「頭の上も盾で守ってやがる。亀甲防御(テストゥド)というやつだな。これでは、いくらボウ銃の矢でも貫けん」


「魔物もやるわね。弩砲(バリスタ)も防いでいるから、魔法使いもかなり強いわ」


 俺とフローラは魔物の戦いぶりを見て感心し、驚いていた。


 やはり、ただやられるだけの雑魚モンスターではなく、戦法を理解している。


 ボウ銃だけで片がつくとは思っていなかったが、予想以上の善戦ぶりだ。


「このまま、蒸気船に近づいて白兵戦をしかける気なんでしょうね?」


「乱戦になると大変だわん!」


「そうだな、犠牲者がかなりでるだろう。だが、そうはさせんよ!」


 俺が言わなくても魔物の意図は、みんな分かっている。こっちもアホではない。

 もうとっくに別働隊が動いていた。



 そして、陸戦も始まろうとしていた……。


 前線の防御陣地から大声が聞こえてくる。


「そりゃー! 放てえ――――!」


「おおっ!」


 ゴブリンとコボルドの歩兵団が迫ってくると、ドワーフのチャールズさんは合図を出して攻撃を開始した。


 もの凄い速さで空を飛んでいくのは、たくさんの丸い砲弾。鋳造で作った鉄球だ。


 球を撃ち出しているのは、バネ式投石機(カタパルト)


 様々なバリエーションが作られ、蒸気機関で動いている。これも対魔物用兵器の一つ。


「キャイン!」


 コボルドに球が命中すると、頭がふっとんだ。肉片と血がそこら中に飛び散る。


 大砲でなくても敵を倒すことはできる。


 むしろ投石機の方が手間がかからず、撃つのは早い。大砲は火縄銃と同じく発射まで時間がかかるのだ。


 飛距離も十分であり、威力は言うまでもない。


 陣地には何十台もの投石機があり、大小様々な球を連続で撃ちだしていた。


 中には穴を開けた球もあり、不気味な音を立てて飛んでいく。脅しの効果がある。


 流石に魔物部隊は後退して一旦下がった。ただ、あきらめた様子はない。


 こっちも密集隊形を組んでから亀甲防御態勢をとり、精霊を召喚してバリアを張り、少しずつ前進してくる。


「ふん、盾ごと粉砕してくれるわ! のうオグマ」


「うむ!」


 重い投石機を動かすのはあくまで人。蒸気機械は補助にすぎない。


 向きと角度を変えて狙いをつけ、さらに鉄球をセットする作業は、かなりの腕力がいる。


 力自慢のドワーフとオークだからこそ、素早くやれるのだ。


 二部族は製造で共同作業することが多く、仲も良い。凸凹コンビのチームワークは抜群だ。


「あいつら、影も形もないようにしてやる!」


「ミンチだ! ミンチだ! ミンチだあぁ!」


 ……まあ、言ってることは過激であった。攻めてくる魔物が悪いのだが。


 それと全員機嫌が悪くて怒っている。理由は……あとで述べよう。



 前線陣地の防御は万全。


 鉄球の雨をくぐり抜けたとしても、次に待ち構えているのは長い空堀で、深さは三メートルもある。


 一度落ちてしまえば、背の高いオークでさえ這い上がるのは困難。もたもたしてると、岩と樽が転がり落ちてくるのだ。


 スポーツバラエティのアスレチックとは違い、地獄の罠が待ち構えている。


 水に落ちたら終わりではなく、息の根が止まるまで続くのだ。けっけけけけけ!


 最後はアルザス騎士団。陣の両脇に控えており、接近してきた敵を迎え撃つ。


 まだ戦いは序盤、俺達は慎重に戦いを進めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ