お尻がでかい
「隣の男は彼氏かい? そうか、いよいよ結婚するのか。お祝いしないとね」
「ぶっ!」
「違うわよ! 誰がこんな男とするもんですか!」
フローラの機嫌が、また悪くなったのは見て取れた。
変なことを言われる前に、俺は自分で自己紹介をする。
「俺の名は、幸坂海彦。こっちの世界で言うところの異界人だ。今はフローラに村々を、案内してもらっている」
「へー、アンタが勇者か……あたいはリンダ」
俺より背の高い女は、笑みを浮かべながら、俺を値踏みしてるように見えた。
おもむろに手を差し出してくる。俺も右手を出して握手をした。
リンダの手は大きいが、意外と柔らかい。
「……良い手だ。ずっと真面目に働いて生きてきた証だわ。親父が言っててな、手をみりゃその人間が分かると……」
「なるほど、いい親父さんだな」
「単に古くさいだけさ、今は留守にしてる」
「オークの族長よ。まあリンダに会えたから十分ね」
フローラが説明した。
リンダをよく見ると、茶色の作業エプロンをつけており、膝上まで覆われていた。
素肌が見える腕と、顔は蜂蜜色。髪色はブラウンでショートパーマ。天然ぽい髪だ。
体型はボディビルダー思わせ、無駄な贅肉がない。恐らく腹筋は割れてるだろう。
鍛冶という力仕事をするには、うってつけの体だ。
顔つきは穏やかで、人懐っこい笑顔をする。
時折白い歯がこぼれるが、見えたのは牙ではなく、やや長い犬歯だった。
はっきり言おう、俺の好みのタイプだ。ブラジリアン美人を思わせる。
性格もフレンドリーで申し分ない。
俺の隣に、夢にまで見た金髪青目女はいるが、性格不美人はお断りします。
顔も穂織では萎えてくる。
グー
とうとう腹の虫が鳴ってしまった。恥ずかしいが、生理現象はどうしようもない。
「あっははは! ちょうどいい、昼飯を食っていきな。取った獲物が余ってて、皆で分けきれなかったとこだ」
「ゴチになります。リンダさん!」
俺はかしこまる。
今なら魂を売り渡しても、飯を食いたい。
「リンダでいいよ。堅苦しいのは好きじゃない」
「分かった、そうする。俺も海彦でたのむ」
うなずいたリンダが背を向けると、俺は目を丸くした。
「うっ!」
「どうかしたかい?」
「いや、何でも……」
正直、俺は目のやり場に困った。
リンダはTバックを履いており、綺麗なお尻が丸見えだったのだ。
それだけでなく、背中にあるブラジャーの紐が見えた。裏側は丸裸と言っていい。
こ、これは裸エプロンという奴ではないのか? 下着はつけてるが。
熱い鍛冶仕事をすれば、汗を大量にかくので、裸でいる理由も分かる。
しかし、男に見せるもんじゃねーだろ!
文化の違いなのか、リンダは俺に見られていても気にした様子はない。
揺れる生尻に目が離せず、触りたいのを必死で我慢してると、フローラから肘鉄をくらった。
「いてっ! なにをする!?」
「ふん、やっぱりスケベね」
「…………」
今ばかりは、欲情丸出しだったので、俺は何も言い返せない。
目の前に、大きい桃があるのが悪いんだー!
部屋を移動し奥に行くと、食卓と台所に案内される。
間取りは広く、中は明るくて綺麗だ。
リンダは大皿に料理を盛って、出してくれた。
「肉だ――――!」
俺は大きい串焼きに涙する。肉を食わずして、生きてはいけない。
若人のエネルギー補給にはかかせず、活力の源である
俺はそのままかぶりつく。
美味い!
やや臭みはあるが、香草と酒で和らいでいる。
歯ごたえもよく、それでいて噛みきりやすい。脂身や筋が切ってあった。
いわゆる隠し包丁だ。
手間のかかることは、中々できることではなく、リンダは料理上手である。
空腹が収まってくれば、余裕が生まれ、ふと二人を見てみると、
薄いパンに挟んで野菜と一緒に食べていた。
俺も真似をする……あれ?
エルフって菜食主義者じゃなかったか?
「フローラ、肉くうんだ?」
「当たり前でしょ、栄養バランスを取らないと、美容にも悪いわ」
……どうやらこの世界のエルフは、俺のイメージとはかけ離れてるらしい。




