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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
最終章 ヘスペリス合戦
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空を飛びたい

 俺はイベント広場に足を運ぶ。ここは原っぱで何もない広い場所だ。


 そこに大勢の人達が集まっていて、上を見上げている。


「よーしいいぞ、球皮(エンベロープ)を上げていけ」


「浮いた! ロープを引け、ゴンドラを押さえろ!」


 みんなが見ていたのは、大きな熱気球。


 前年にエリックさんと族長達に頼んで、作ってもらっていた。


「魔物の動きを空から見たいので、気球を作りましょう」


「分かった!」


「うむ!」


 これもみんなが協力してくれることになり、材料が集められて各村でパーツが製造された。


 一番大変だったのは巨大な布袋の作成だ。フローラと奥様軍団がいなければ、球皮は作れなかっただろう。


 あと、ミシンがあればこそである。手縫いではバラツキが出るし遅い。


 知識だけがあっても、人員と材料と道具がなければ、何も作れないのだ。


 気球をふくらますには熱風がいるが、そこはサラマンダーとシルフの協同作業(コラボレーション)


 精霊さん達が見事にふくらませてくれた。いつもありがとうございます。



 俺はゴンドラに近づいて乗り込む。


 最初に乗せてもらえることになっていたのだが、フローラがごねる。


「さて、初飛行といきますか」


「うう、なんで私が最初に乗れないのよ!」


「しゃーないだろ、定員は三人。リンダには気球の上昇・下降と操縦をやってもらうし、ハイドラには電動プロペラを回してもらう」


「そんなにスピードは出ないけどねん」


 そう、気球には小型プロペラがつけてあった。


 推進器を球皮とゴンドラのどちらかにつけると、バラバラに動くので危険であり、思うようには進まないのだ。


 通常、気球は風に流されるだけである。


 そこでアルミ合金で軽いフレームをつくり、球皮とゴンドラを上手く繋げる。


 外に張り出したフレームに電動プロペラをつけ、一体となって前に進めるようにしたのだ。


 他にも金属ワイヤーやステンレス管を使って、気球全体の強度を上げていた。


 流石はチャールズさんとドワーフ達である。


 それとゴンドラ内にガスバーナーや発電機を置く必要がないので、総重量は軽くなり、その分人を乗せられる。


 ホビットなら五人はいけるだろう。あとは精霊さん頑張ってください!



「じゃー、行くだわさ。ゲルラの炎!」


「おう!」


 係留ロープが外されて気球がドンドン上昇し、地上にいる人達が小さくなっていく。


 歓声が鳴り止まない。空に浮かぶ物を見たのが初めてなので、みんなが興奮していた。


「景色が綺麗だわん!」


「だわさ!」


 リンダとハイドラも、上空から見る景色に感動してるようだ。


 自然豊かなヘスペリスを一望できるのは、気持ちがいい。


「高度、約三百メートル。高層ビル並の高さだ。こうして上空から見て見ると、やっぱり霧の厚さは薄くなってるな」


「ええ、でもその向こうに別な世界が広がってるわん!」


「魔物はいないようだわさ」


 まだ気圧式の高度計はないので、俺は小型のレーザー距離計を代用し高度を確認していた。


 これだと、最大1キロメートルまで計れる。


 見たところ結界の霧の高さは五十メートルくらいで、ヘスペリス全体を囲んでいる。


 それも、無くなる日が近いだろう。



「じゃー気球を動かしてみるわねん。いでよボルト! イシュクルの雷光!」


 ハイドラが雷精霊を召喚してプロペラを回す。すると気球は前へ進んでいく。


 成功だ。速度はやっぱり遅いけど動けるだけマシ。ただ、問題もある。


「うう、やっぱり上空は寒いし空気も薄い。厚着してドリスにカイロをもらってて正解だったな。リンダ、高度はこのままで……て寒くないんかい!?」


「あいよ。親父ほどじゃないけど、薄着でも平気だわさ」


 どうやらオークは寒さに強いらしい。


 俺達は一時間ほど遊覧飛行を楽しみ、元の場所に着陸した。


 俺は二人に礼を言って、ゴンドラから降りる。


「リンダ、ハイドラ、サンキュー。いやー楽しかった。さて、次に乗る人と交代せんと……ん? 弐号機が遅いな、トラブルでも起きたか?」


 実は気球は三機ある。今回は試験機(プロトタイプ)で、データを取るのが目的だ。


 くっくくくく、気球量産の暁には魔物なぞあっと言う間に叩いてみせる!


 乗せる兵器も考えてある。空からの攻撃は防げまい。いまのとこは偵察用。


 俺は雅が乗ってる弐号機に近づいてみる……。

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