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俺は勇者じゃなくて、釣り人なんだが  作者: 夢野楽人
最終章 ヘスペリス合戦
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冬眠させたい

 やせさせるのに食事制限させすぎたか? いやなんか違う。


 …………あーそうか。


「もしかしてリーフ、冬眠するのか?」


「キュウ、キュウ」


 俺の問いかけに、リーフは首を振って応えた。


 頭が良くて言葉が分かるので、コミュニケーションはできる。


「ちょっと待ってろ。エサを持ってくる」


 俺は急いで用意する。釣った魚や作物はあるので、すぐに食わせてやれる。


 ただグルメになったので、あまり生では食いたがらず、調理せねばならなかった。

 あー、面倒くせー。


 そして数日がすぎるとリーフはエサを食わなくなり、いよいよその日になった。


 眠そうな目をしながら、鳴き声を上げる。別れの挨拶だろう。


「キューイ!」


「リーフ、春に会おう」


「おやすみー、リーフ!」


 ちなみに港には、人が一杯かけつけていた。


 アルテミス湖の名物なので、誰もが別れを惜しんでくれる。


 俺もしばらく会えなくなるので、少しさみしい。まあ、冬場はしかたないだろう。


 リーフが湖中に消えるまでの間みんなで見送り、俺も冬ごもりの準備を始める。


 とは言ってもクルーザーの掃除と後片付けくらいだ。それもすぐに終わる。


 陸地おかでの生活になったので、あまり船は使っていないのだ。


 去年のように、各村を回って映写会をする気はなかった。


 騒動を起こすと奥様達ににらまれるので、大人の上映会は止めよう。フローラ達も黙ってはいまい。

 プロジェクターは貸し出したままで、各村で順番に使われていた。


 冬の間の仕事は、ラジオのパーソナリティとしての現代知識講座だ。


 みんなが聞きたがるので、リスナーは多い。これも娯楽である。


 ちなみに俺が肉体労働をしようとすると、怪我をするのを恐れて、周りから止められてしまう。

 なので頭脳労働をするしかなかった。


 族長達とアルザス王のエリックさん、そして将軍のアンドレさん達と定期的に会議を開き、湖の防衛作戦を考える日々である。


 防衛施設の建設の方は順調に進んでいる。やはり蒸気機関(スチーム)電動機(モーター)の力は大きく、精霊さんと人力だけでは何十年もかかっただろう。


 あとは各部族の戦士の配置などだ。他にも必要な物を作ってもらっており、もうすぐ試せるだろう。


 そして冬太りをなくすのに、ある運動をすることにする……。



 ヘスペリスに雪が降り始める。ドカ雪なので積もるのは早い。


 雪おろしの大変さは知っていたので、住んでいる家々には対策をしていた。


 屋根に傾斜をつけて雪が滑りやすいように工夫し、電熱線もはわせて雪を溶かす。


 落ちた雪はみんなで片付けなければならないが、雪かきも運動なのでこれくらいは頑張る。


 レンガの家の中は暖かい。


 暖炉はあるし、そしてドワーフが作った「オイルヒーター」があった。


 これなら部屋に煙が立ちこめることはないし、何かに燃え移って火事になることもない。


 まあ、電力は精霊さん頼みですが……。


 アルテミス湖で冬を迎える前に用意はしていたのだ。兎族の人達も快適に過ごしている。


 雪の日が続いた後、晴れた日にみんなが動き出す。



 俺は秋にエリックさんと族長達に、お願いをしてた。


「冬の運動不足解消に、アルテミス湖にスキー場を作ってくれませんか?」


「あい、わかった」「問題ない」「うむ」


 誰も嫌がろうとはせず、あっさりと協力してくれることになった。拍子抜けである。


 ゲレンデ作りはかなりの重労働になるのたが、自分達も遊んでみたいという気持ちがあったからだろう。


 場所はアルテミス湖の近くの、小高い丘。急斜面はなく雪崩の心配もない。


 寒い中、千人近い作業者が集まって工事が始まる。


 チャールズさんが、ゲレンデ整備車と圧雪車を作ってくれたのは助かる。


 あとは全員がスコップを持っての人海戦術だ。雪を叩き歩いて踏み固めていく。


 もちろん精霊さんも手伝ってくれていた。


「おお! 早い早い。体重がある人がいると、作業がはかどるな――いてっ!」


 どこからか、雪玉が飛んで来た。ふりむくと雅が投げたように見えたが、気のせいだろうか?


 なにか、気に障ることでもあったのか?


 まあいいや、今はスキー場作りの方が大事。たった二日でゲレンデは出来上がった。


 テストスキーをするのはハイドラ。スキー板をはき、ストックをこいで斜面を滑りだす。


「いくわよん!」

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